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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第2部 太陽の章

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第43話 旅の行く末

※次の章に書く予定の文が始めに混ざってしまってたので改稿致しました。

読者の皆様には大変失礼致しました。

※ソルがうっかりティエラを「お前」呼びしていたので、「あんた」に変えています。




 林檎を食べ終わってしばらく後――ソルの機嫌は、何事もなかったかのように戻った。


「少し村の中をまわるか」


 ティエラはソルに促され、宿の前の椅子から立ち上がる。


 村の中で、ソルが昨日回れなかったという、教会や畑などに向かった。

 二人が滞在しているニンブス村は、王都グランディスから離れた位置にある。遠い王都からの情報には乏しかった。

 そのため、モル川の様子や、川向こうにあるウルブの都について話をうかがうことにしたのだった。


 ちょうど畑を耕している恰幅の良い婦人が、ティエラとソルの二人に声をかけてきた。


「そこのご夫婦、休憩がてらにちょうど良いねぇ」


 彼女は作業の手を休め、二人に色々と話をしてくれた。


「川向こうのウルブの都には、亡くなられた大公様の奥様がいるじゃないかい? 最近、その奥様に玉の一族のご当主が頻繁に訪ねてらっしゃるそうだよ」


「玉の一族の……?」


 ソルは眉をひそめる。


「そうなんだよ。奥様は美人だって評判だからねぇ。玉のご当主が、未亡人になった奥様に言い寄ってるんじゃないかって、もっぱらの噂なんだよ。奥様はお子様に恵まれなかったからね~~男の子が生まれてたら、国も跡継ぎ問題で、もめなかったんじゃないかね……」


 お喋りな婦人は残念そうに話した。

 国の跡継ぎ問題と言われ、ティエラはどきりとする。


「あと、玉のご当主様、ウルブの都に行くための拠点にしてるのかなんなのか、よく南にあるエスパシオの街にも顔をだしてるらしいよ」


 婦人はひとしきり喋ってくれた後――。


「あんた達、まさか心中じゃないだろうね? モル川は自殺の名所としても有名だから、おばちゃん心配だよ~~この前も男の霊が出たって言うし」


「それはない」


「あんた良い男だし、あんた達お似合いだよ!」


 婦人は掌でソルの身体をバシバシと叩いた後に、農作業に戻っていった。


(なんだか、とっても強烈な婦人だった……)


 色々と知らない情報が多かった。


(玉の一族のご当主が未亡人に言い寄っている……? 玉の一族のご当主は、玉の守護者であるルーナのことなのかしら……?)


 悶々としていたティエラに、ソルが声をかけた。


「心配すんな。玉の一族の当主ってのは、ルーナの義理の兄貴のノワ・セレーネのことだ」


 ティエラはソルを振り向いた。


「そうなんですか? 私、てっきり……守護者が一族の当主になるという話を聞いていたものだから……」


 ティエラは少しほっとした。


「玉の守護者がルーナだから、よくあいつが玉の一族の当主だと勘違いされてる……まあ、実権もルーナが握ってるしな」


 ソルが説明する。


「前の守護者の長男であるノワが、本来なら守護者としても跡継ぎだったんだが……あいつには才能がなかったんだ」


「ノワと言う人と、ソルはお知り合いなんですか?」


「……まあ、一応俺も剣の一族の次期当主だからな。ノワのことは一応知ってる」


 ソルは、げんなりとした表情でそう言った。


(ルーナといい、ノワさんといい、ソルには苦手な人が多いようね)


「お飾り当主だが、見つかると面倒なことになるのは間違いない……」


 ソルがひとりごちる。

 彼は悩んでいるようだった。


「あんたがルーナに聞かされているような、俺に国王暗殺の嫌疑がかけられている話が、どこまでに伝わってるのかも分からない……どのみち、ウルブを通らないと王都には近付けないか」


 ぶつぶつ言っているソルに、ティエラは尋ねた。


「ソルは、ルーナに見つかったら、捕まりますよね……」


「まあ、そうだろうな……あんたも……」


「私も……?」




※※※



 ソルは、きょとんとしているティエラを見た。


 記憶のない彼女は気付いていないようだが、おそらく城に戻れば、それこそお飾りの女王に祭り上げられる。

 それに、ルーナが外に出るのを決して許さず、今度こそティエラは幽閉され、外に出してもらえなくなるだろう。


「まあ、シルワ姫の話も聞いてからだな……一旦宿に帰るか」


 ソルはティエラに言い、二人一緒に畑を後にした。




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