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幕間 月の声
どうしても自分のものにならないなら……。
それなら……。
もう始めから塗りつぶしてしまおう。
こんなにどす黒い想いが、この自分にあるなんて。
そんなこと、とっくに知ってはいたけど。
それでも……。
貴女には、知られたくはなかったんだ。
だから。
はじめから。
そう。
はじめから、やり直そうって。
胸の奥にうごめく、この重い何かを。
消してしまえたら、楽なのにって。
ずっと、ずっと、羨ましかった。
貴女の隣で過ごせるのが。
だから、塗りつぶすことにした。
あいつのことを。
貴女のことを。
そして――。
自分のことも。




