後日談5-7 彼女は彼の成長を見守る7
ぎりぎりになってごめんなさい。プロポーズやり直しは次です♪
ティエラの自室のベッドの上――。
ソルの胸の中で、ひとしきり泣いたティエラは、少しずつ落ち着きを取り戻していった。
「なんか、昔を思い出すな」
ティエラのさらさらとした亜麻色の髪をぽんぽんと叩きながら、ソルが口にした。
彼女が顔を上げると、彼の紅い髪と碧色の瞳が目にはいる。
「昔……?」
「あんたは、よく先のことばかりに気をとられがちだったな。今に集中すれば良いのに……」
ソルの発言に、ティエラは口を尖らせた。
「ソルはあまりにも先を気にしなさすぎなのよ」
彼は破顔する。
「違いないな――まあ、ただ――」
ソルはティエラの瞳を見つめながら続けた。
「あんたと結ばれないのはキツいなって、先の問題から目をそらしてたとも言えるが」
少しだけ、彼は寂しそうに口にする。
(ソル……)
ティエラの胸もぎゅっと苦しくなった。
(今、ソルと恋人同士だと、周囲に隠さずにいれるだけでも幸せなんだと思う……)
そうだとしても、彼との子どもを抱く夢が、どうしてもティエラの胸の内にはある。
「ティエラ……」
彼に名を呼ばれて振り向くと、彼女の唇に彼のそれが軽く触れる。
「俺はお前を離す気はない。お前はどうだ?」
「私は――」
ティエラの黄金の瞳に涙が浮かぶ。
そうして、彼女はソルに抱きついた。
「私も、もうソルから二度と離れないわ」
嗚咽をもらしながら、ティエラは想いを訴える。
「じゃあ、決まりだな――」
「きゃっ――」
突然、ティエラの体が宙に浮いた。
いつの間にか横向きにされ、ソルの鍛えられた腕で抱きかかえられている。
「ソル――」
名を呼ばれた彼は、ティエラに優しく微笑みかける。
「じゃあ、善は急げだな。今からお袋のところに向かうぞ――」
彼女はこくりと頷く。
ティエラはソルにお姫様抱っこをされたまま、彼の母親ローザのいる客室へと向かうことになったのだった。
※※※
「それで、女王陛下にソル――自身の身体について知ることは出来たのですか?」
飴色のゆるやかな髪に蒼い瞳を持つ女性は、ティエラとソルに向かって言い放った。
恋人の母親に向かって、ティエラは勇気を出して口を開く。
「ローザ様、例え子どもに恵まれなかったとしても、私はソルに一生そばにいてもらいたいと思っています」
ローザはゆるりとまぶたを閉じる。
そうして、彼女はゆっくりと話す。
「姫様の決意はわかった。ではソル、お前はどうだ――?」
ソルは母親に向かって、真剣に告げる。
「俺もティエラと同じ気持ちだ。子どもが出来ても出来なくても、こいつと一生添い遂げたいと思ってる」
「そうか――」
息子の言葉を聞いて、母はゆっくりとまぶたを持ち上げた。
「ためすような真似をしてすまなかった……」
ローザは二人に向かってそう口にすると、ふっと笑顔になる。
「それじゃあ……」
ティエラがローザを見つめた。
「ソル――」
ローザは息子に伝える。
「お前はまだ女王陛下に言っていない言葉があるのではないか? 言葉にしなくとも伝わってはいるかもしれないが、言葉にした方が良い時もある。母親というよりも、女性としての意見だ」
ソルは少しだけ考えている様子だったが――。
「わかった」
一言そう返事をした。
(何かしら――?)
ティエラは彼らのやりとりに対する疑問の答えを、数日後に知ることになるのだった――。




