本編(炎陽・剣)後日談5-5 彼女は彼の成長を見届ける5
お久しぶりです。後日談最新話です。まだもう少し続きます。
「せっかくの休日ですし、皆で調べちゃいましょう!!! 二人の体質とやらを!!」
女王付きのメイドであるグレーテルに促され、ティエラとソルの二人は、自分たちの体質について調べることにしたのだった――。
三人は、城の中庭にある魔術研究所へと脚を運ぶことにした。
研究所の中には、国中の書物を集めた書庫が存在している。そこで調べものをしたが、書物が多すぎて、どれを目にして良いか分からない。
(全然見つからないわね――)
ティエラが眉をひそめていると、ソルが声をかける。
「セリニが魔術師長室にいるんだったら、話を聞いてみないか?」
「そうね、そうしましょうか」
白金色の髪に紅い瞳を持つ、年齢不詳の青年セリニは、ティエラが統治するオルビス・クラシオン王国の宰相を勤めている。現在、人材不足も相まって、セリニは魔術師長も兼任しているのだった。
ちなみに彼は、ソルの直接の魔術の師である。そして、ティエラにとって彼は、魔術の師匠のさらに師匠に当たる。
グレーテルが他の本を探している間に、ティエラとソルの二人は、魔術研究所の最上階にある魔術師長室に向かうことにした。
「ほら。裾を踏んで、転んだら大変だろ」
階段に差し掛かった時、ソルがティエラに手を差し出した。
「ありがとう」
彼の大きい手に、彼女の小さな手が重なる。
(ソルのこういう細やかな優しさが、私はすごく嬉しい……)
ティエラは改めて、ソルにドキドキしてしまう。
(何年一緒にいても、こんなに嬉しいなんて……)
彼に手をひかれながら、彼女が階上に登っていると――。
「ティエラ」
ティエラは、ソルに声をかけられる。
「なあに?」
「俺は、どんな真実があったとしても、あんたの手を離すつもりはない。これから先もずっと――」
「ソル――」
ティエラの胸がじわじわ熱くなってくる。
彼女は手を引くソルに向かって、声を張り上げた。
「私も、貴方から絶対に離れない」
数段上に立つソルが、ティエラの方へと視線を移す。
彼の碧の瞳を、彼女の黄金の瞳が真っ直ぐに見据えた。
「もう二度と貴方のことを忘れたりしないわ――」
「ティエラ――」
彼の手が、彼女の手をぎゅっと強く握る。
階下にいるティエラに向かって、ソルが階段を数段降りてくる。
彼女に近づいたソルに、彼女の手を少しだけ強くひかれる。
「ソル――」
いつの間にか、彼女は彼の腕の中に閉じ込められてしまった。
いつも以上に、彼に抱き締められる力が強くて、ティエラの胸はドキドキし続ける。
真剣な眼差しのソルが、彼女に向かって口を開いた。
「昔、あんたと結ばれてからも、ずっと言ってこなかったことがある」
「え――?」
彼は、彼女の亜麻色の髪を払う。
彼女の頬に、彼の長い指が触れる。
(な、なに……? なんだか、ソルがいつもより真面目だから、すごくドキドキしちゃう……)
ティエラはソルの次の言葉を待つ――。
「俺はずっと、あんたのことが――」
「お前たち、階段の踊り場で見つめ合うでない」
階下から、突然二人に声がかかる。
ティエラの身体がびくりと震えた。
彼女の前に立つソルが嘆息する。
「はぁ、ったく、またあんたかよ――」
ティエラは階下を振り向く。
そこに立っていたのは――。
「セリニ」
「セリニさん」
ティエラとソルの魔術の師であり、宰相であるセリニ・セリーニだった。
彼はゆっくりと階段を登り、二人に近づいてくる。
「相変わらず、空気読めないのな……」
「やかましい――。休日とは言え、魔術師達の出入りはある。場はわきまえよ」
セリニはソルに呆れたような視線を送った後、ティエラの方を見た。
「女王陛下、グレーテルから話は聞いております」
「グレーテルが?」
「左様です」
ティエラは真実に近付いてきている気がして、ソルの前にいる時とは違う胸の高鳴りを感じる。
「私のこれまでの研究、そしてイリョス様からうかがった話。それからから導き出された、我々一族の体質の推論を述べましょう」
いつもお読みくださってありがとうございます♪
次はまた二週間内にお届けしたいと思います。
ムーンライトの、ソルとティエラがイチャイチャしてるだけの話「贄姫、炎陽」もだいぶ読者様が増えました。
こちらから来てくださっている方々には、大変感謝しております。
実は2人の過去編で朝チュンになった場面があるのですが、その場面をラブコメちっく(半分ギャグ)に書いたR18短編「ぜんぶ、はじめてだったのに」を、昨日投稿しています♪(あきたこまち名義、日間短編ランキングで探したら早いかな)
18歳以上で夢が崩れないかたはぜひご覧くだされば幸いです♪
(ルーナファンは見ない方が無難)




