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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
後日談

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本編(炎陽・剣の章)後日談5-4 彼女は彼の成長を見届ける4




「姫様のお相手に、我が息子では不十分かと思いまして――ね。夫のイリョスが何も言いませんので、私が代わりに言いに参りました」


 飴色のゆるやかな長い髪に、蒼い瞳を持った美しい女性――ソルの母親であるローザ・ソラーレは、女王となったティエラに向かってそう告げた。


 ティエラとソルの二人は息を呑む。


「あ、あの、ローザ様……」


「ちょうど、女王陛下にはセレーネ家のセリニ様との婚姻の話が出ていると伺いました。セリニ様の方が、陛下との婚姻相手としては良いのではないでしょうか? 彼は優秀な人物です。まあ、私としてはソルとセリニ様では、立場がそこまで変わらないと思っていますが――」


 ちょうどティエラとソルの間でも話題に上がっているセリニの話だった。


(ソルとセリニさんだと、立場が変わらない――?)


 ティエラはどきりとする。


(――どうしてローザ様はそんなことを言うのかしら?)


 もう跡継ぎ問題に関しては気にしなくて良くなったはずだ。それならば、ソラーレ家にとっては、オルビス・クラシオン王家と婚姻関係を結んだ方が得だと考えるのではないのだろうか?


 ティエラとローザは目が合う。


(蒼い瞳……)


 彼女の瞳の色は、かつてのティエラの婚約者であるルーナ・セレーネのことを思い出させた。とはいえ、ルーナは深い海のような蒼で、ローザは空色に近い。

 ティエラの心臓の音がどんどんうるさくなっていく――。

 ローザはちらりとソルを見た。


「ソルにはヘリオスのような覚悟もないと、誰か言ってはくれなかったのか? お前の心が折れているせいで、誰も声をかけることが出来なかったのか――? ソルは、ルーナ様に比べて覚悟のようなものが全くないくせに、運良く城から姫様を連れ回したに過ぎない――それに――」


 ローザの口からルーナの名が出て、ティエラは戸惑う。

 そうして、ローザはティエラに視線を移した。


「私は参列しておりませんでしたが……女王陛下も、竜の出現がなければ、あのままルーナ様と結婚なさっていたのでは?」


「――――っ……!」


 ローザの発言に、ティエラはそれ以上何も言えなくなった。


 ティエラの両肩を支えて、ソルがローザに向かって声を上げた。


「おふくろ! 女王に対して不敬じゃないか――?」


 ローザの声が低さを増して返答する。


「ソル……お前も分かっているのだろう? 陛下は、別にそばにいてくれるなら、お前じゃなくても良かったのだよ。お前だって、女王に対して不敬だということは出来ても、否定はできなかっただろう?」


 ティエラは、ソルを見上げた――。

 彼の碧色の瞳が揺れる。


「それでどうだ――? 女王陛下と一緒にいることで、お前の悪夢とやらは落ち着いたのか? 最近、ひどくなってはいないか――?」


 ソルは、一度開きかけた口をきゅっと結んだ。

 ティエラも知っている。

 ソルの悪夢は止むどころか、最近また増えてきていることを――。




「所詮……現状は、ルーナ様がお膳立てした状況での、ままごとに過ぎない」




 ティエラは意を決して口を開いた。


「ローザ様は、私とソルの結婚を反対している立場だということでしょうか――?」


 女王であるティエラ以上に泰然とした態度で、ローザは答えた。


「私は、賛成も反対もしておりません。ところで、姫様もソルも、御身の体質についてはご存じか――?」


「体質、ですか――?」


 ティエラは霊魂にとりつかれやすい体質だ。そばに、剣の一族の男性であるソルがいないと、とりつかれた後の回復が遅いというところはある。

 しかし、ローザが言いたいのは、それだけではなさそうだった。


「やはり知らぬか……まだ陛下もソルも若い――。真実を知り、それでも私を説得することが出来たら――貴族たちを黙らせる手伝いをいたしましょう。それでは――」


 ローザはそう言い残すと、謁見の間を後にした。

 残されたティエラとソルの間に沈黙が流れる。


(体質――? 真実――? それを分かった上で、ローザ様を説得できれば、私たちの結婚に賛成してくれるということ……)



「姫様! ソル様!」



 それまで静観していたメイドのグレーテルが声を上げた。


 ソルとティエラの二人も、彼女の声にはっとなる。


「どうしたの? グレーテル」

「どうした?」


 二人は、同時にグレーテルにたずねた。


「相変わらず、お二人は息ぴったりですね~~! せっかくの休日ですし、皆で調べちゃいましょう!!! 二人の体質とやらを!!」




 そうして――。


 ティエラもソルも気づいていない、自分たちの体質について調べることにしたのだった――。


 


 


 1週間以内に投稿予定が、1日過ぎてしまいまして、大変申し訳ございませんでした。

 後日談の次話は、また1週間前後で投稿したいと思います。

 ムーンライトのサイトで、ティエラとソルの後日談4部作だけをまとめなおして加筆している「竜の贄姫は毎夜~~」という作品を投稿しております。一応R18なので、二人のイメージが崩れないよ大丈夫という方は、ぜひ探して見に来てください。ひたすらいちゃいちゃが加筆されているだけ……。裏名義は「あきたこまち」です。

 これからもお付き合いいただけましたら幸いです。

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