表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

282/289

本編(炎陽・剣)後日談5-3 彼女は彼の成長を見届ける3

 もうすこし続きます。

 ついに彼女が現れます――。



 ティエラがオルビス・クラシオン王国の女王になってから、一年ほどが経つ。

 つまり、ティエラの婚約者だったルーナが姿を消してから、もう一年――。


(私とソルが恋人同士だって隠さなくなってから、もうそんなに時間が過ぎたのね――)


 今、ティエラはソルの部屋にいた。室内には他に、部屋の主であるソルと、ティエラのお世話係に戻ったグレーテルがいる。


 休日だったこともあり、ティエラは亜麻色の髪をバレッタで留めていた。けれども、女王陛下への謁見となると話が違う。

 ティエラは急いで、グレーテルに髪を結い上げてもらっていた。

 

(今からソルのお母様が、私に会いに来る――)


 臣下だと思えば、特に気にはならないのだが――。


(恋人のお母様だと思ったら、緊張しちゃう――こ、恋人……)


 『恋人』


 自分で考えた言葉に、ティエラは一人で身悶えしてしまう――。


「あんた、百面相してるけど、何を考えてるんだよ――?」


 紅い髪に碧の瞳をした青年騎士ソル・ソラーレが、恋人であるティエラに声をかけた。

 彼女は慌てて、ソルの問いに答えた。


「べ、別に私は変なことなんて……」


「変なこと……? なんだよ、変なこと考えてたのか――?」


 ティエラは墓穴を掘った――。


「へ~~、何考えてたのか気になるな」


 ソルの碧の瞳がきらめく。

 彼が口の端を上げる姿を見て、ティエラは両手をぶんぶん振って誤魔化そうとした。


「そ、そんなの、内緒に決まってるでしょ!」


「あんたが何考えてるのか、知っておきたいんだ――」


 笑みを浮かべたソルにティエラの胸がどきりと跳ねた。


「ソ――――」


「二人とも、グレーテルを空気にしないでくださいよ~~!」


 ティエラとソルのやりとりに、しびれを切らしたグレーテルが割り込んだ。


「グレーテルのこと、忘れてたわけじゃないのよ――!」


「俺は忘れてた――」


 ソルの発言を受け、グレーテルは彼をじっとりとした目でしばらく見ていた。

 だが、気を取り直したのか……。

 彼女は、黒いワンピースの上の白いエプロンを整え。そうして、嬉々として話し始めた。


「そういえば! ソル様のお母様と言えば、『氷の薔薇』の異名を持つ、かの有名なローザ・ソラーレ様ですよね~~」


(氷の薔薇? 綺麗な呼び方だわ――)


「なんだ、その呼び名――?」


 ソルがきょとんとした様子で、グレーテルに問いかけた。にやにやしながら、彼女はソルに問い返す。


「自分のお母様のことなのに、知らないんですか~~?」


「ああ」


「ローザ様は帝国から亡命されて来たんでしたよね~~もう数十年前だし、わりと極秘にされてますけど――」


「だから、なんで極秘事項なのに、グレーテルはそんなに詳しいんだよ――」


 ソルは呆れたように、ため息をついた。


「恋バナは、女子に必須とされる教養ですよ~~」


「お前に教養とか言われてもな……」


 グレーテルとソルのやりとりを見ていたティエラは、ぽつりと呟いた。


「私、知らなかったわ……」


「そりゃあ、イリョス様が恥ずかしがって口止めしてますから! だけど、姫様! ローザ様は、姫様の義理のお母様になる人です! ローザ様を攻略せねばなりません!」


(攻略……? とにかく久しぶりに会うわ、ソルのお母様……なんだか緊張して、手に汗をかいてきちゃった……)


 そんな中、ソルの部屋をノックする音が聴こえた――。

 ソルが扉の外に一言問いかける。


「なんだ――? 入れ――」


「失礼する」


 凛とした、女性にしてはやや低めの声が返ってきた――。

 ソルがはっとした表情を浮かべている。


(今の女性の声――? ソルが固まってる――? やっぱり――)


 室内に、胸元の開いた豪奢な青いドレスを来た女性がゆっくりと入ってきた。

 飴色の緩やかな巻き髪に、蒼い瞳をした女性。

 それなりに年を取っているはずなのに、

 さながら青い薔薇のような、この美しい女性は――。


「女王陛下、ご機嫌麗しゅう。即位の際に会ったきりでしょうか? 大層お会いしたくございました」


 ゆったりとした口調に、どことなく色っぽさが混ざった声。


「ローザ様……」


「おふくろ……」


 ティエラ達の前に現れたのは、剣の一族当主の妻にして、剣の守護者であるソルの母親――ローザ・ソラーレだった。

 彼女は長男を一瞥すると、こう言った。


「女王陛下の御前だ。ソル――私はお前に話す許可は出していない――」


 息子の話をぴしゃりとはね除けた。

 ティエラのそばにいたグレーテルが、ぶるぶると震えている。


「噂を聞き付けたのですが、どうやら愚息がご迷惑をお掛けしているようで――」


 ローザの言葉に、ティエラはすぐに反応した。


「そんなことはありません。むしろ、ソルのおかげで、私は助かっています……!」


 悠然と笑みながら、ローザはティエラに話しかける。


「それなら良いのですがね……さて……私が姫様と話したく思ったのは、我が息子ソル・ソラーレについてのことです」


「ソルについて――?」


(私とソルの話を聞きつけて、ローザ様が城に出向いてもおかしくはないわね――)


 ローザは続ける。


「姫様に婚約者のルーナ様がいらっしゃった頃から、息子が姫様のことを好いているのは知っていました」


 母親の発言を聞いたソルは、罰が悪そうにしている――。


(ソル――?)


 彼は恥ずかしがっているというよりも、何か後悔しているようにも見えた。


 さらにローザが話をした。

 彼女の言葉に、ティエラは驚くことになる――。


「姫様のお相手に、我が息子では不十分かと思いまして――ね。夫のイリョスが何も言いませんので、私が代わりに言いに参りました」


 ティエラとソルは、二人して息を呑んだのだった――。





 また1週間以内に続きを投稿します。


 飴色の緩やかな巻き髪に、蒼い瞳、『氷の薔薇』、帝国からの亡命――。


 ローゼは、ムーンライトに投稿済みの作品の主人公と相手役と関係が――? 必然的にその息子のソルも関係あり――?


 興味がある方は探してみてください。


 また、今週末より「癒し姫」のムーンライトへの加筆投稿もおこないます。なろうとムーンライトで違いをちょこちょこつけようと思っています。良ければ読みに来てください。


 それでは、また皆様にお会い出来ますように――。


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ