第24話 太陽を思い出す
6/18文章の見直しをしました。
翌朝、ティエラが目覚めると、部屋の中にルーナの姿は見当たらなかった。
(私が寝ていたから……私のことを起こさないようにして、ルーナは出掛けたのかしら――? 彼に会えなくて寂しいわね……)
ティエラは身体を起こした。
枕元に隠してあった日記帳に、たまたま手が触れた。
(そう言えば、日記帳の背表紙がやけに厚いのよね。この間、調べようとしたら、ちょうどヘンゼルが来たから、そのまま放置していたのよね……)
ティエラは日記帳を手に取り、その背表紙に目を向ける。
「あら――?」
今までは何も起こらなかったのに、ティエラが触れた途端、背表紙がはずれた。
日記帳の中から何かが床に落ちて、しゃらりと音を立てる。
「何かしら――?」
床から落ちたものを拾い、手に取った。
「金のペンダント――?」
(まさか、こんなものが日記帳の中に隠されていたなんて――)
ティエラが触れると開いたが、何か魔術の類いだったのだろうか――?
(記憶が戻っていないから、実感がわかないけれど……私も『鏡の守護者』としての力を持っていたらしいし……。記憶を失う前の私が、他の人に気付かれないように仕掛けを施していてもおかしくはないわね……)
ティエラはペンダントを眺める。
精緻な細工を土台に、小指の爪ぐらいの大きさの銀の宝石が埋め込まれていた。
宝石を太陽にかざすと、きらきらとした光を放つ――。
「これ……」
ティエラの眼前に、在りし日の記憶が甦った。
※※※
『心配しなさんな、必ず帰ってくるよ』
燃えるような紅い髪の青年。
『ああ、あんたの誕生日、祝えなさそうなのは悪かったな』
王女の護衛なのに、ぞんざいな態度をとる。
『ルーナはお前のそばに残るんだし、そんなに不安がるなよ』
やれやれと言った調子で、青年は首にかけていたペンダントを外し、片手でそれを手渡してきた。
『ほら、これ渡しとくから。だから泣き止めよ』
ティエラは静かに頷く。
一度だけ彼に寄り添った後、離れた。
『離れていても、心はいつもあんたと共にある。俺は、絶対にあんたのところに帰ってくる。約束だ』
※※※
(なぜ、こんなに大事なことを今まで忘れていたの――?)
断片的にだが、ティエラに記憶が戻ってきた。
(紅い髪の青年は、ソルで間違いない――)
ティエラは、きらきらと光るペンダントを握りしめる。
しばしの間、彼女はその場から動くことが出来なかった。
ティエラの黄金の瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちる――。
ペンダントの宝石を、太陽の光がゆらゆらと照らしていた。




