第22話 新月の前夜1
6/18文章の見直しをしました。
新月が差し迫っていた――。
小城の裏庭にある、塔に向かうための小道をティエラは確認に来ていた。
(少し遅くなってしまったかしら?)
辺りは夕暮れになっていた。
(部屋を守る騎士が心配しているかもしれないわね……)
彼女は帰路を急いだ。
(いけない、こんなに遅くなるつもりはなかったのに――)
ティエラが部屋の前にたどり着くと、騎士だけではなくルーナも立っているのが分かった。
(まだ、完全には日が暮れていない。ルーナはいつもより早い時間に仕事が終わったのね……)
少しだけ、ティエラに緊張感が走る。
ルーナは彼女を見つけるや否や――。
「姫様、お部屋にいないので、心配致しました……!」
彼はティエラを、腕の中に抱き締める。その力はとても強い。
(ルーナ、私のこと、本当に心配してくれていたのね――)
ティエラはルーナにしばらく抱き締められていた。
「あ……」
部屋の前にいる騎士が二人に視線を向けていることに気付き、ティエラは気恥ずかしくなる。
ルーナは腕の力を解いたかと思うと、ティエラを横向きに抱きかかえた――。
「そこの騎士、扉を開けろ」
(――命令口調のルーナは珍しいわね……)
ルーナの騎士への態度を見て、ティエラは少しだけ不安を感じる。
騎士が扉を開けた後――。
ティエラはルーナに抱きかかえられたまま、部屋の中へと運ばれた。
騎士によって部屋が閉められる。
それと同時に、ティエラはルーナにやや乱暴にベッドに放り投げられてしまった――。
「きゃっ……!」
白いシーツの上に倒れこんだティエラの上に、ルーナは覆い被さる。
(ルーナが上にいて、身動きがとれない――)
ルーナの指がティエラの唇に触れる。無理矢理口を開かされた。かと思いきや、ルーナの舌が、ティエラの口の中に侵入してきた。
しばらく口内を好きにされてしまう。
ティエラの口中がひとしきり弄ばれた後、ルーナが離れた。
「――どちらにいらっしゃいましたか?」
ティエラに問いかけるルーナの声は低い。
(ルーナ、怒って……)
ルーナの蒼い瞳には陰りが見える。
(怖い……この前のルーナみたい……)
ティエラの身体が、勝手にかたかたと震え出す。
「……さ、散歩に……」
彼女の声が上ずる。
絞り出すようにして伝えると――。
「本当ですか――?」
(塔へとつながる小道を見ていたなんて……言えない――)
ティエラは声が出せずに、こくこくと頷いた。
震えが止まらない彼女を見て、ルーナがはっとする――。
彼の瞳はみるみる内に曇っていった。
ルーナは弱々しく言葉を紡いだ。
「姫様……申し訳ございません……」
彼は謝りながら、ティエラの頭を何度も優しく撫でてくる。
(……ルーナ、元に戻ったのかしら……)
ティエラは少しだけ安堵した。
また消え入るような声で、ルーナが告げてくる。
「貴女を大事にしたいのに……私にはそれが出来ない……」
彼の瞳から涙が溢れ、ティエラの頬を伝ってきた。
(ルーナ、苦しそうだわ……)
ティエラはルーナの頬を撫でる。
「姫様、お願いですから……どこにもいかないでください」
ルーナは切実に訴え続けた――。
「ここから、いなくならないで下さい……」
(ルーナ……)
ティエラの胸が。ずきりと痛んだ。
涙を流すルーナは、まるで絵画のように神々しい――。
(ルーナが泣いているから、何か言わなきゃいけないのに――)
彼女の頭の中に、紅い髪をした青年の顔が浮かぶ――。
(なんで、ソルの顔を思い出してしまったの――?)
彼に名前を呼ばれたような気がした――。
ティエラの胸にはどうしてだか、罪悪感が沸く。
彼女は、ルーナへ返事をすることが出来なかった――。




