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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第5部 月華・玉の章(if)

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第141話 月は大地の名を呼ぶ

 皆様、お久しぶりです。

 ifの連載を再開致しました。

 本編とは違う展開で竜と対峙していきます。本編完結後のティエラとソルにも関連する内容も出てきます。4月中にはif完結予定です。

 5月までには、ソルとティエラの後日談4(数話になるかな)を投稿しようと思っています。

 これからもどうぞお付き合いいただければ幸いです。




 太陽が少しだけ登った頃、窓の外から差し込む光で、ティエラは目を覚ました。明け方に、婚約者のルーナと共に部屋に戻っていた彼女だったが、少しだけ眠っていたようだ。


 寝台の上で横になっていた彼女の視界に映ったのは、端正な顔立ちをした自身の婚約者の姿だった。彼の白金色のさらりとした髪が、日光に照らされて、きらきらと輝いている。


 ティエラはルーナの髪に柔らかく触れる。すると、眠っていた彼がゆっくりと目蓋を持ち上げた。

 彼の蒼い瞳と出会ったティエラは、突然ルーナに抱き締められる。


「姫様、本当に私の元に残ってくださったのですね……夢ではない……」


 彼女が彼を抱き締め返すと、彼の腕の力がますます強くなる。


「夢じゃないわ、現実よ……」


 そう言ってティエラが微笑み返すと、ルーナもまた、彼女と同様に微笑み返した。


「あの男の分まで、これからは私が姫様を守りますから」


 彼はそうティエラに告げてきたが、おそらくこれまでも彼女のためにずっと、裏で色々と働いてきていたはずだ。


 本当はルーナ自身はやりたくなかったことだって、たくさん行って来たに違いない。


 ルーナは、ティエラの父である国王を手に掛けている。

 国王本人に頼まれたこととは言え、本来なら大罪のはずだ。


 ルーナの義兄で元宰相であるノワについても同様だ。おそらく命を吸う石をノワに渡したのはルーナだろう。


 ティエラはルーナの腕の中で、彼の罪を背負いながら生きていこうと心に誓った。


「ありがとう。これからは、私も貴方を守っていくわ」


「姫様が、ですか?」


 ルーナは蒼い瞳を丸くしながら、彼女に問いかけた。


「ええ、そうよ」


 ティエラは再度彼に微笑みかける。

 少しだけルーナの腕の力が緩んだので、ティエラはゆっくりと身体を起こした。


「ねえ、あとルーナ、その姫様呼びについてなのだけど……」


 ティエラが離れて寂しそうにしていた彼は、不思議そうにしている。

 寝台の上に座り直した彼女は、横たわるルーナの白金色の髪に触れ直す。彼はティエラの所作にまた嬉しそうにし始めた。彼女より十歳年上のルーナだが、少しだけ少年のように見える。


 そんな彼を見ながら、ティエラは自身の考えを口にした。


「もうすぐ姫ではなく女王になるし、良ければ名前で読んでほしいの」


「名前……」


 ルーナはティエラからの提案を噛み砕いて理解しようとしていた。そんなに難しい話はしていない。賢いルーナが、なぜそんなに考え込んでいるのかが、ティエラにはよく分からなかった。


「ええ。昔、外に出る時には『ティエラ様』と呼んでくれたじゃない? それに……時々だけどルーナは私のことを呼び捨ての事があるし……」


 そう言うと、ルーナが端正な顔を歪め、怪訝な顔をする。


「私が姫様を呼び捨て……?」


 ルーナは覚えていないのだろうか?


「ええと、ボヌスの都だったり、廃墟でも、城に戻ってからも何度か……」


 口づけられている際に呼ばれる事が多かったので、ティエラの聞き間違えだったのだろうか。

 ルーナは自身の手で顔を隠しながら、声を出した。


「――申し訳ございません。おそらく、無意識に呼んでいたのだと――」


 無意識。


 意外な単語に、ティエラは驚く。


(無意識だったのね……)


 彼女に顔は見せないまま、ルーナが続けた。


「あの男が、いつも姫様の事を名前で呼んでいるのが羨ましいと……思っていて……」


 彼の歯切れが悪い。


(ルーナ、恥ずかしがってる?)


「元々婚約者だから、名前で呼べば良かったのに」


 ティエラがそう言うと、ルーナが答える。


「恐れ多くて、そのようなことは――」


 やはりルーナは照れているようだった。


(恐れ多い……?)


 ルーナは、散々、口づけやそれ以上の事をティエラにしてきたはずだ。少しだけ、彼が恐れ多く感じる点がずれているなとティエラは思った。

 彼が顔を隠していた手をずらした。白金色の髪が揺れる。彼はその手で、ティエラの亜麻色の長い髪を一房とり、いつものように口づけた。


「その、姫様が良いのでしたら、呼びたく存じます」


 恐る恐る話してくるルーナに、ティエラはこくりと頷いた。

 そうして彼女は、彼の髪を撫で返しながら伝える。


「ルーナ、起きたらこれから先の事を――竜をどうするかを、一緒に考えていきましょう」


 そう告げられたルーナは、満面の笑みを浮かべる。


「はい、姫様。あ、いえ――」


 そうして彼は、少しだけ躊躇った後に続ける。


「――ティエラ」


 そう言って、彼は愛しい婚約者の名を幸せそうに呼んだのだった。




 次は明日か明後日に投稿致します。

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