表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第5部 月華・玉の章(if)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/289

第133話 思い出せない月との約束



 今日からまた、オルドーがティエラのお世話係になった。


「オルドー、久しぶりね」


 ティエラは幼少期、いつも彼女に世話をしてもらっていた。そのため、ティエラとしては彼女を姉のように慕っていたことを覚えている。

 しばらくこれまでの話に花を咲かせた後、やはりと言って良いか、彼女の弟であるソルの話題が出てきた。

 ティエラがソルを心配していたからか、オルドーからは励ましの言葉を得る。


「姫様に心配していただけて、弟も喜んでいると思いますわ」


 オルドーの微笑みに、つられてティエラも笑みを浮かべた。


(ソルならきっと大丈夫だって信じている)


 ソルは剣の守護者だ。必要に刈られて戦争に出た結果、心に傷を負ってしまった。

 ティエラの献身的な世話や、友人達や大人達からの励ましにより、次第に彼は元の元気な彼へと戻っていった。

 もっとも、悪夢にうなされたり、発作が起こったりするのは今も続いてはいる。

 だけど、彼は周囲の人々に慕われ、そして恵まれていると思う。


(きっと私がいなくても、皆がソルを支えてくれるはず――)


 ティエラは自分にそう言い聞かせる。

 オルドーが続けた。


「姫様も、ルーナ様とのお約束がついに叶われる時が来ましたものね」


「私とルーナとの約束……?」


 にこやかにティエラに話しかけてきたオルドーだったが、何の話なのかがよく分からなかった。

 二日前に城に帰ってきた時に、ルーナとティエラが交わした約束ではないはずだ。


(何だろう……?)


 頭に靄がかかったようで思い出すことが出来ない。


「以前、私が城にいた頃に姫様が話されていたのです。姫様がうなされていた時がございまして……。私と弟も、姫様から約束の件を聞いていたのですが……」


「私が寝込んで……?」


 そこまで話をした後に、オルドーが「いけない!」と声を上げた。


「ちょっと別件を頼まれていたのでした。少し席を外しますね!」


 そう言って、オルドーは忙しなく部屋を退室していった。

 自分の世話以外の別件とは何だろうかと気になりつつも、ティエラは彼女の背を見送った。


 やはり、ルーナに関して思い出さなければならないことはありそうだ。


 彼の所持する宝玉に触れさえすれば、記憶は戻るのだろうが、今どこにあるかも分からないし、部屋から出ることが出来ない。


「約束」


 自分は、大事な何かを忘れてしまっている気がする。


 ティエラの心の内を、何か言い様のない切ない気持ちが支配した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ