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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第5部 月華・玉の章(if)

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第132話 月は別の道を探す

 ソルの姉であるオルドー。

 彼女がこれまでに剣の神器から受けてきた加護について、ルーナは聞き出していた。


「――そうですわね、結婚しても特には失くならなかったのですが……。ルーナ様の仰る通りかもしれませんわね」


 オルドーはにこやかにルーナへ返した。


「あら? でもそうなると、姫様はどうなるのかしら? 建国以来、初めて女性の守護者様でしょう? 初代の方が女性だったという話もあるけれど、はっきりしないのでしたっけ?」


 彼女の問いに、ルーナは首肯した。

 神器に関して、守護者でもよく分かっていない事がある。

 ある程度、聞きたいことを尋ねることは出来た。


「オルドー様、良ければ姫様にはご内密に。彼女にははっきり分かってから伝えようと思っています」


 オルドーは「わかりましたわ」と答えた。そうして続ける。


「姫様にも国にも関わることですもの。もうすぐご結婚ですし、ルーナ様としては気になりますよね」


 ルーナは曖昧に笑って返した。

 そうして二人は会話を終え、オルドーはルーナの執務室から去った。

 

 まだ問題はいくつか残っている。


 ティエラに関しても、剣の守護者についても、自分の身体のことも――。


 国王が、あえて婚約者のルーナに伝えていなかったのには、何かしらの不都合がある可能性がある。



「あとは――」


 最低限、もう一人だけ、確認しておきたい人がいる。


 ――剣の一族に護られている老人。


 ティエラに送った贈り物が壊れた時に、修理のために城に彼を呼んだことがある。


 あの時、ルーナは彼の正体について、なんとなく気づいてしまい、国王に問いかけたことがあった。

 現在その事を知っているのは、守護者であるルーナ、前守護者であるイリョス・ソラーレだけだ。


「姫様に生きていてもらえるのなら……」


 彼女の未来に繋がるのなら……。

 ティエラが十七の誕生日を迎える前に、全ての可能性を試しておきたい。


 だが、彼女はどう思うだろうか?


 せっかく彼女が、貴方の幸せに協力したいと言ってくれたのに――。


「いや、だからこそ」


 月の化身の先祖返りとされる自分。

 その類いまれなる美貌と力を持って生まれたせいで、子どもの頃から翻弄されてきた。


 だけど、そんな自分にも利用価値はあった――。


 血の近い竜との親和性が高いこと。

 そのおかげで、自分ごと竜を偽の神器で封じる計画を進める事が出来た。


 でも、もし彼女が自分と共に生きる未来を欲してくれているのなら。


 仮に自分が死んだとしても、彼女と共に――。



「早ければ今夜にでも……」



 そこまで考えて、ルーナは鍛冶師である老人の元に向かった。




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