本編(炎陽・剣)後日談1 彼女は彼に身を委ねる ※R15
突然の後日談。
最終話で1年経っていますが、その間にあった話になります。
ソル(22)とティエラ(17)の話です。
微エロです。本編のイメージが崩れそうな方は、この話は読まなくても大丈夫です。
ご了承いただければ、幸いです。
「ソル。ねぇ、ソル、大丈夫?」
また悪夢にうなされるソルの背をさすりながら、ティエラは名を呼び続けた。
何時ものように、夜、彼の部屋を尋ねた。そうしたところ、ソルの様子がおかしいことに気付いた。彼女は寝台に駆け寄り、彼のそばについた。
そうして今に至る。
しばらくすると、彼の呼吸が落ち着いてきたので、ティエラはほっとする。
ソルが彼女を見上げながら問いかける。
「ティエラ、なんで俺の部屋に……?」
「ちょっと用事があって」
ティエラがそう言うと、ソルがはっとした。
「あんた、どうやってここに来た? 神器が沈黙してるんだから、夜は気を付けろと、俺があれほど――」
身体を起こしながら、ソルが捲し立てるように言った。
「大丈夫。私もそこまで軽率じゃないわよ。貴方がなかなか来ないから、部屋の前にいる騎士に送ってもらったの」
ティエラはそう答える。
ソルの部屋まで、見張りの騎士に連れてきてもらった。帰りはソルに送ってもらうから大丈夫だと告げると、騎士は帰って行った。
「部屋着じゃないな……。あんた、だいぶ成長したな」
ソルがほっとしたように話す。
ティエラは、まだ普段着ている紺のドレスを着用していた。明るい色の服を着ていると、ソルがやたらと口出ししてくる。そのため、暗い色の洋服ばかり着ている。
ティエラは不満げに返した。
「もう成人したもの」
「ああ、悪ぃ。そうだったな」
ソルが悪戯っぽく笑う。
ティエラも、彼が落ち着いたようで安心して、微笑み返した。
「そんなに心配なら、やっぱり部屋を一緒にしましょうよ」
ティエラの発言を聞いて、ソルがため息をついた。
呆れたように彼が言った。
「まだ駄目だ。親父にも、ちゃんと婚姻関係を結んでからだって言われただろ?」
ソルの父親のイリョス・ソラーレは、ティエラ達の国の騎士団長だ。現在のオルビス・クラシオン王国の首脳陣に年若い者が多いため、ティエラはイリョスを頼る場面が多い。彼は規則等にとてもうるさい人物でもある。
ティエラとソルは、まだ事情があって夫婦になっていない。そもそも彼女は、彼にまだ『あの時』の返事をしていなかった。
「でも結局、部屋の行き来はしてたりするから、一緒じゃないのかしら?」
「それでも一応、外聞みたいなのがあるんだろ」
ソルがやれやれと言った調子で答えた後、寝台に腰掛けていたティエラを抱き寄せた。
「だけど、こんな風に堂々と、城の中であんたと夜に過ごせる日が来るなんて、一年前までは思ってなかったな」
それもそうだ。
ソルはティエラの護衛騎士だったので、毎日一緒に過ごしてはいた。だけど、周囲からはそれ以上の関係だとは気付かれないように振る舞っていた。近しい人達には気付かれていたようだし、城下街に二人で出掛けているのもバレていたようではあるが……。
神器一族の後継者問題などもあり、ティエラとソルが、夫婦として結ばれる未来はやってこないと思っていた。
本当なら、今頃、お互い別の人と一緒になっていたはずだった。
「正直、幸せすぎて不安なんだ。あいつが帰ってきたら、あんたを持っていかれそうで……」
彼はそう言って目をすがめた。
『あいつ』とは、ティエラの婚約者だったルーナ・セレーネの事だ。ティエラは、ルーナとは婚礼の儀まで済ませたものの、竜との戦いにより、結婚自体が有耶無耶になってしまった。そして彼は、戦いの後に姿を消してしまった。
ルーナの事を思い出すと、ティエラの胸は痛む。
「いなくなっても、ずっと、あんたの心の半分はルーナにある気がする」
ソルの寂しげな表情を見て、ティエラはどきりとした。
彼に心配させてしまっていたようだ。
確かにルーナの事も好きだった頃がある。だけどもうずっと長い間、彼女が恋しているのは――。
「どうしたら、私がソルの事がずっと好きだったって……分かってもらえるの?」
ティエラはソルの腕の中で話しかける。
「これ以上、貴方に何をあげれば良いのかが、私には分からなくて――」
そこまでティエラが話すと、ソルが指で彼女の顎を持ち上げた。
彼の碧の瞳と目が合う。
ティエラの鼓動が速くなる。
口付けもそれ以上の事も、彼とは幾度となくおこなってきたのに、それでもいつも緊張してしまう。
「俺も分からないんだ。どうしたら、あんたのことで、自分が安心できるのかなんて」
眉根を寄せる彼の表情を見ると、さらにティエラの胸が苦しくなる。
彼からそっと一度、触れるだけの口付けが落ちてくる。
唇が離れた後、彼は話を続けた。
「だから、これからも、俺を受け入れてほしい」
そう言うと、ソルはまたティエラと唇を重ね合った。今度は深くまで入り込んでくる。
彼の長い指が、彼女の胸元に伸びた。
しばらく二人の舌同士が絡んだ後、また離れる。
いつの間にか、ドレスにあった釦ははずされていた。気付いて、ティエラの頬に朱が差す。
潤んだ瞳で、彼女はソルに話しかけた。
「……貴方を、受け入れるだけで良いの? ソルの方こそ、私に飽きたり――」
話の途中、首筋から全身にかけて、ぞくりとして感覚に襲われた。彼から白い肌を吸われ、赤い花びらのような痕が何個も散らされていく。
彼の唇がその動作を繰り返す度に、彼女の髪が揺れる。口を覆うように手を伸ばしたが、結局、声も漏れてしまった。
「……明日、部屋に帰ったら、首まで覆うドレスにしとけ」
そうソルに言われ、ティエラはなんとか頷いた。彼がそのまま、彼女の胸に顔を埋めかけたが、一旦止まって、ティエラの顔を見上げる格好になる。彼が口を開いた。
「それと……」
自身の胸元に、ソルの顔があり、ティエラは恥ずかしさが増した。白い肌に吐息が当たって、身体が反応してしまう。
「俺があんたに、飽きる日なんて一生来ないよ」
彼がもう一度だけ、彼女の口を塞いだ。
彼の願いなら、何でも叶えてあげたい。
そうして彼女は、今宵もまた彼に身体を委ねたのだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
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私生活が忙しく、一旦中2~3日程休ませていただければと思います。そのため、過去編(戦前)が一旦終わったので、完結済みにしておきます。
遅くとも3/20(金)には、過去編連載再開致します。
やっとで、ルーナのifに入れそうで良かった……。
また引き続き、よろしくお願い出来れば幸いです。




