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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第4部 竜の章

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第118話 迷子を探しに




「子どもらを見つけるにしよ、そうでないにしろ、ルーナは必ず来るわ」


 ティエラの成人の日は近い。

 このままティエラが大人になれば、竜に喰われる。そうなれば、国は崩壊する。

 だが、国が滅びるのがルーナの希望なら、わざわざ人々の命を奪うような真似はしなかったはずだ。

 そうではない何かがあるから、ルーナは今急ごしらえで偽の神器を作り、人の命を奪っている可能性がある。


 だからこそルーナは、ティエラを竜には喰われないようにするか、もしくはティエラの成人前に全て片をつけるつもりなのだと思う。


 この旅をしていても、他国に逃げようという話にはならない。

 国を護る義務や責任感を、ティエラもソルも生まれた時から教え込まれている。ルーナの言う通り、自分達二人は神器に縛られているのかもしれなかった。


(鏡の一族に生まれなかったら、こんなこと考えもしなかったのかしら)


 今ルーナは、ティエラの預かり知らぬところで、他国との戦の準備までしている。

 戦を始めるにしろ止めるにしろ、捕縛されるにしろ、二人は決断しないといけない。



 少しだけ、ソルの表情に陰りが見える。



「ソル、また戦争にはならないようにするわ。私が、ルーナの思惑通りにはさせない」



 ティエラの金の瞳には強い光が宿っている。

 ソルの碧の瞳が揺れた。



「子ども達を探しに行きましょう」




※※※




 ネロの後をつけながら、ソルとティエラはひそひそと話をした。

 ソルには一応、先程、昔の記憶が戻ってきた事を伝えた。


「ネロさんって、初めて会った時からすると、あまり変わらない気もするけど、だいぶ変わった気もする」


「そうか? 年も取ったしな」


 ネロは、見た目は大人びたと思う。ただ、初めから軽い喋り口で、それは変わっていない。


「あんた、戦後の記憶はどうなんだ?」


「実は、戦後はまだあまり……」


 ソルに尋ねられ、ティエラは俯いた。

 金の瞳に睫毛がかかり、陰が出来る。


「戦ってる間に、ネロも何か思う事があったんだろ。一緒に行ったアリスもな……。帰ってから、騎士を辞めて、文官目指す奴等もたくさんいた」


 彼はそう言って、瞼を閉じた。苦悩が滲んでいるのが見てとれた。

 戦場にティエラは行ったことがない。

 彼女は彼に、何て声を掛けて良いか分からなかった。




※※※




 しばらく歩いただろうか。

 平地だったので、そこまで疲れなかったが、わりと開けた場所が多かった。ネロ達に見つからないか、かなり気を遣った。


 外れた場所に廃墟が数件見えた。こんなところに人が住んでいたのだろうか? 疑う位、誰かが立ち寄りそうな場所ではない。


 ティエラとソルは、ネロにばれないように慎重に追い掛ける。

 ゆっくり歩を進めていた時――。


「おい」


 二人は背後から呼び止められた。





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