太陽の追憶5
走りきって、男の上にソルは飛び乗った。
屋根の上から人が飛び降りてきたので、辺りは騒然となる。ソルと組み敷かれた男の周りに人垣ができる。
ざわめきの中、ソルは、うつ伏せに倒れている男の腕を締め上げながら話した。
「拾った物を、質屋に入れに行くのは、なしな」
「なぜ質屋の話を……。い、いや、ちゃんと騎士の元に届けに……」
「最近、耳も良くなって来ててな。あとお前、案内係とは、反対方向に歩いてただろ?」
説得力ないな、と話を続けた。
男を締め上げる力を増す。
「大人しく返してくれたら、悪いようにはしない」
ソルのその発言を聞くと、男は震えながら首肯した。
それを見て、ソルは力を緩めた。
男から、ガラスで出来た薔薇のコサージュを受けとる。
「ありがとさん」
これでティエラが喜ぶ。
ソルがそう思って、元の場所に戻ろうとする。
けれどもよく見ると、台座の部分が失くなっている。
「おい、おっさん、台座の部分はどこやった?」
そうソルが問いかけた瞬間、ティエラの小さな悲鳴が耳に届く。
男の事は無視して、元の場所へと駆け出す。人だかりを器用に避けて走った。
声の元にたどり着いた時、なぜかティエラ達は外に居た。ネロと二人して、浅黒い肌をした異国の民の脚にしがみついているところだった。
先程の自分と男よろしく、人垣が出来てざわめいている。
状況を理解するには情報が足りない。
ひとまず、ソルはティエラに近付き、彼女を男の脚から剥ぐ。
「あんた、何やってんだ?!」
「ソル! この人が私のコサージュの……!」
ネロを振り切った男が走り出す。
雑踏の中に消える。
「こうなったら、行くぞ!」
ソルはティエラを肩に担いで、走り出した。
「待てよ、ソル!」
その後ろをネロも急いで追いかけた。




