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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第4部 竜の章

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太陽の追憶5




 走りきって、男の上にソルは飛び乗った。

 屋根の上から人が飛び降りてきたので、辺りは騒然となる。ソルと組み敷かれた男の周りに人垣ができる。

 ざわめきの中、ソルは、うつ伏せに倒れている男の腕を締め上げながら話した。


「拾った物を、質屋に入れに行くのは、なしな」


「なぜ質屋の話を……。い、いや、ちゃんと騎士の元に届けに……」


「最近、耳も良くなって来ててな。あとお前、案内係とは、反対方向に歩いてただろ?」


 説得力ないな、と話を続けた。

 男を締め上げる力を増す。


「大人しく返してくれたら、悪いようにはしない」


 ソルのその発言を聞くと、男は震えながら首肯した。

 それを見て、ソルは力を緩めた。

 男から、ガラスで出来た薔薇のコサージュを受けとる。


「ありがとさん」


 これでティエラが喜ぶ。

 ソルがそう思って、元の場所に戻ろうとする。

 けれどもよく見ると、台座の部分が失くなっている。


「おい、おっさん、台座の部分はどこやった?」


 そうソルが問いかけた瞬間、ティエラの小さな悲鳴が耳に届く。

 男の事は無視して、元の場所へと駆け出す。人だかりを器用に避けて走った。

 声の元にたどり着いた時、なぜかティエラ達は外に居た。ネロと二人して、浅黒い肌をした異国の民の脚にしがみついているところだった。

 先程の自分と男よろしく、人垣が出来てざわめいている。

 状況を理解するには情報が足りない。

 ひとまず、ソルはティエラに近付き、彼女を男の脚から剥ぐ。


「あんた、何やってんだ?!」


「ソル! この人が私のコサージュの……!」


 ネロを振り切った男が走り出す。

 雑踏の中に消える。


「こうなったら、行くぞ!」


 ソルはティエラを肩に担いで、走り出した。


「待てよ、ソル!」


 その後ろをネロも急いで追いかけた。





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