表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第4部 竜の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/289

太陽の追憶3




 きらびやかな灯りが、そこかしらに見える。

 たくさんの人達の喧騒や嬌声が、あちこちで飛び交う。

 人の行き来が激しかった。

 ソルは、ティエラの手を握る自分の手に力を入れた。離れたら、彼女が人々の波に飲まれてしまいそうで心配だ。


「うわ~~綺麗ね、ソル」


 そんなソルの気苦労を知ってか知らずか、ティエラは嬉しそうにしていた。

 時々、色とりどりの魔術が煌めいて、会場内をさらに賑わせている。


(まあ、喜んでるなら良いか)


 昔は、飛び出すティエラを追いかけることが多かった。彼女の無茶に付き合っては、大人達によく叱られたものだ。

 しかしながら、ティエラの父親である国王は、かなり柔軟である。無断で城から出られるのを嫌うだけで、ちゃんと理由を説明すると外出を許可してくれることが多かった。


(今日は床に臥せっていらしたが、大丈夫だろうか?)


 最近の国王様は、また具合が悪いそうだ。

 先程、祭りに行っても良いかどうか尋ねに向かったら、彼はなんとかといった様子で身体を起こしていた。


『短時間ならね。今日は街のあちこちに監視がいるから、行ってくると良いよ。何かあれば監視の彼らに言ってね。ただし、妙な輩が増えてもいるから気をつけて』


 そう国王から許可をもらい、二人はあまり夜闇が暗くない内に祭りを見学することになった。

 歩く中には、他国の者の姿も紛れている。

 最近、西からの移民も増えてきていた。あちら側にある国スフェラ公国は最近治安がよくないという。


「あ!」


 突然、ティエラが叫んだ。


「どうした?」


 ソルは人に当てられて、集中を欠いていたように思う。こういう所をよく父親イリョスには叱られてもいた。

 隣にいるティエラは、自身の身体中をぺたぺたと触っている。立ち止まってしまったので、歩行する人々とぶつかってしまった。彼女の身体がよろめいたので、ソルは彼女を全身で受け止める。


「ないの……」


 ソルの腕の中で、ティエラは泣きそうな顔を浮かべている。


(おいおい、まさか……)


 そうこうしているうちに、どんどん人は流れてくる。

 ソルは荷物よろしくティエラを肩に担ぐと、人が少ない場所がないか探した。




※※※




「だから失くすって言っただろうが……」


 ソルは大げさにため息をついた。

 二人は、あまり人が多くない路地裏まで来ていた。

 目の前の少女はしゅんとしている。


「だって……ルーナに貰ったの、すごく嬉しかったんだもん……」


 そう言う彼女の金色の瞳には涙が浮かんでいた。

 ティエラは、部屋の中で、手にとって眺めていたガラスで出来た薔薇のコサージュを持ち出していた。そして、早速失くしてしまったらしい。話にならない。


『姫様が、将来婚礼の義でお召しになるドレスにも合うものを、買って参りました』


 あのいけすかない男ルーナがティエラに手渡していたのを思い出した。

 まだ給金をもらっていないソルには出来ない芸当だ。といっても騎士学校に入学したので、少しばかりはお金をもらってる。


 だから、本当は自分も――。


 ソルは、むしゃくしゃした気持ちまで蘇ってきた。


「……ごめんなさい」


 しょんぼりするティエラに目をやる。

 彼女が、あの贈り物をとても大事にしていたのも分かっている。

 またソルはため息をついてから、ティエラを真っ直ぐに見つめた。


「あんたのあれが、見つかるかは分からないが……今から一緒に探すぞ」


「ソル、いいの?」


 ティエラが、ソルを潤んだ目で見上げる。


「ああ。ただし、この人混みだ。見付からなかったら諦めろ」


 そうソルが伝えると、彼女の顔がぱっと明るくなった。

 なんで自分が、ルーナがティエラに渡した贈り物を探さないといけない。そう思わなくもなかったが――彼女が泣くのにソルは非常に弱いのだった。



 さっそく探しに行こうとすると――。


「そこの二人」


 突然、二人は、物影から呼び止められた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ