第115話 祭りの夜
「私も、三人の子供たちを探しに行きます!」
ティエラが、ソルとセリニに高らかに宣言した。
「姫様、聞いていましたか? あの騎士は、エガタを見つけたら、次は貴女とソルを捕縛に来るのではないかと……」
セリニが戸惑いながら、ティエラに話し掛ける。
あの騎士とは、先程出くわした、ソルの知り合いであるネロの事だ。
ソルの『自分達を捕まえに来たのか?』という質問に、ネロは『半分当たり』と答えていた。
「ネロさん達の相手なら、ソルとセリニさんだけで大丈夫じゃないかしら? ねぇ、ソル?」
ティエラは、先にセリニを見た後、ソルに視線を移して問いかける。
「は? ああ、まあ、ネロ達ぐらいなら大丈夫だが……」
「問題は『あれ』だ、姫様」
そう、問題はルーナが来た場合である。
ティエラも、それは百も承知だ。
だからこそ、セリニに強く訴える。
「結局、ルーナに追い付かれるのも時間の問題だと思っています。……今逃げ出して、少しの時間を稼ぐよりも、子ども達を探してから街を出たいです」
セリニは、ティエラの真っ直ぐな視線に少しだけたじろいだ。
ソルは眉をひそめる。だが、彼はすぐにいつもの表情に戻り、ため息をついた。
「まあ、じゃあ、あんたがそう言うなら決まりな」
「……大人なら魔力をたどれば早いが……。まだエガタは小さいから、魔力の跡が途切れている。人手は多い方が良いか」
セリニが仕方ないと言った様子で、ティエラにそう伝えた。
「私は、モニカと少しだけ話してから探しに向かうので」
そう言って、セリニは魔術で姿を消した。
ソルが、物影にいたグレーテルとアルクダに話し掛ける。
「お前らも、手分けして探すぞ」
ソルがそう言うと、二人から「「はーい」」と声がした。
「ほら、行くぞ」
ソルに促され、ティエラは二人で教会の敷地から外に出た。
※※※
街は、暗闇に完全には覆われていない。
ところどころ屋台が立ち並んでいる。明るいランタンなども並んでいた。人々からも、楽しげな笑い声が聞こえる。
この間来た時には、こういったものはなかった気がする。
「小規模だけど、祭りがあってるみたいだな」
「祭り……」
そう言って、光の方に目をやると、頭に少しだけ何かが閃いた。
『ティエラ! いいか――』
少しだけ幼いソルが頭に浮かぶ。
「あ……」
ティエラの様子に気付いたソルは、「どうした?」と尋ねる。
「昔、お祭りに、ソルと来たことが……」
「祭り? ああ、確かに、あんたと来たことがあったな。あれは確か――」
何かを思い出しそうなティエラ。
ソルは過去の記憶をたどった。




