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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第4部 竜の章

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第115話 祭りの夜




「私も、三人の子供たちを探しに行きます!」


 ティエラが、ソルとセリニに高らかに宣言した。


「姫様、聞いていましたか? あの騎士は、エガタを見つけたら、次は貴女とソルを捕縛に来るのではないかと……」


 セリニが戸惑いながら、ティエラに話し掛ける。

 あの騎士とは、先程出くわした、ソルの知り合いであるネロの事だ。

 ソルの『自分達を捕まえに来たのか?』という質問に、ネロは『半分当たり』と答えていた。


「ネロさん達の相手なら、ソルとセリニさんだけで大丈夫じゃないかしら? ねぇ、ソル?」


 ティエラは、先にセリニを見た後、ソルに視線を移して問いかける。


「は? ああ、まあ、ネロ達ぐらいなら大丈夫だが……」


「問題は『あれ』だ、姫様」


 そう、問題はルーナが来た場合である。

 ティエラも、それは百も承知だ。

 だからこそ、セリニに強く訴える。


「結局、ルーナに追い付かれるのも時間の問題だと思っています。……今逃げ出して、少しの時間を稼ぐよりも、子ども達を探してから街を出たいです」


 セリニは、ティエラの真っ直ぐな視線に少しだけたじろいだ。

 ソルは眉をひそめる。だが、彼はすぐにいつもの表情に戻り、ため息をついた。


「まあ、じゃあ、あんたがそう言うなら決まりな」


「……大人なら魔力をたどれば早いが……。まだエガタは小さいから、魔力の跡が途切れている。人手は多い方が良いか」


 セリニが仕方ないと言った様子で、ティエラにそう伝えた。


「私は、モニカと少しだけ話してから探しに向かうので」


 そう言って、セリニは魔術で姿を消した。

 ソルが、物影にいたグレーテルとアルクダに話し掛ける。


「お前らも、手分けして探すぞ」


 ソルがそう言うと、二人から「「はーい」」と声がした。


「ほら、行くぞ」


 ソルに促され、ティエラは二人で教会の敷地から外に出た。




※※※




 街は、暗闇に完全には覆われていない。

 ところどころ屋台が立ち並んでいる。明るいランタンなども並んでいた。人々からも、楽しげな笑い声が聞こえる。

 この間来た時には、こういったものはなかった気がする。


「小規模だけど、祭りがあってるみたいだな」


「祭り……」


 そう言って、光の方に目をやると、頭に少しだけ何かが閃いた。



『ティエラ! いいか――』



 少しだけ幼いソルが頭に浮かぶ。


「あ……」


 ティエラの様子に気付いたソルは、「どうした?」と尋ねる。


「昔、お祭りに、ソルと来たことが……」


「祭り? ああ、確かに、あんたと来たことがあったな。あれは確か――」



 何かを思い出しそうなティエラ。


 ソルは過去の記憶をたどった。






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