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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第4部 竜の章

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第104話 月と太陽の共闘


「じゃあ、行くとするか」


「ああ」



 ソルに対して、ルーナが応える。


 ティエラは、これまで二人が罵りあっている姿ばかり見ていたからか、少しだけ戸惑いを感じる。

 ただ、言い様のない安堵も、胸に去来していた。


「宝玉の力じゃ効かないんだろ?」


「残念ながら」


 ソルが、片手に持っていた神剣を両手で持ち直す。


「剣の神器じゃないといけないってことは、あれが封印されていた……」


「珍しく察したな」


 ソルは、再生途中にある男の前へと走る。


「一応あいつのためにいるんだろう、俺達は!」


 男は焼け焦げた指先から、燃える火の玉を、幾つもソルにぶつける。全て剣で凪ぎ払ったソルが、男に近付いて、そのまま剣で挑む。炎に拒まれる。


 ルーナの詠唱が終わる。

 以前、セリニが使っていた火を鳥のように形作る魔法だ。鳥が飛翔し、彼の頭上から消える。

 直後、ティエラは冷気を感じると思えば、中空に伝承されている竜が氷により形成されていった。


 王の姿を取り戻そうとする男を、鳥が嘴で刺すように襲いかかる。

 隙が出来た瞬間に、ソルの神剣の刃が閃いた。


 男の胸に傷が入る。

 それまで、ある程度の速さで傷が回復していた。

 だが、ソルの切り口は再生し始める様子がない。


 いつもいがみ合っていたのは嘘のように、二人は連携が取れている。

 どちらも神器の守護者なのだから、本来こういった姿が正しいのだろう。


「紛い物が!!」


 焼けた男は、ルーナの頭上で凍える気を放つ竜に向かって叫んだ。


「この男の声……」


 それを聞いたソルの手が、一瞬止まる。

 その間に、男の胸ではなく、顔の再生が進んだ。

 彼の顔を間近に見て、ソルの剣の切れが鈍る。



「陛下?!」



 氷の竜が、国王を目掛けて喰いかかった。

 ルーナがソルに叫ぶ。


「斬れ!」


 だが、ソルは男を切りつけることに躊躇する。

 それを見計らったかのように、男はソルから離れた。


「何をやっている?! それは身体を借りているだけだ!! もう陛下ではない!」


 ルーナが叫ぶ。

 襲いかかる王の攻撃を、ソルはかわす。

 これまでとは違い、防戦一方になってしまっている。

 

 ティエラはソルの様子をみた。

 先程まで、明らかに彼らの勝利は目前だったのに。

 ソルと一緒に、父の姿をした生き物も視界に入る。ティエラは言い知れない思いを抱いた。思わず、ペンダントを握りしめる。


「早くしろ!」


 ルーナが叫ぶ。


 だが、ソルは、相手の攻撃を防ぎながら、呻くようにルーナに返した。



「駄目だ……。俺には、いくら中身が別でも……。陛下を殺せない……!」



「この、馬鹿が……!」



 焦げて腐敗臭を放つ男の身体は、じわじわと元の姿を取り戻しつつあった。



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