第101話 見知らぬ場所
光が止み、気づいたら見知らぬ場所にティエラは立っていた。
十人ぐらいは立てそうな岩の上にいる。その岩というのが、なぜか宙に浮いていた。
空を見上げると、似たような岩が他にもたくさん浮かんでいる。
岩の端に手を付き、ティエラは下を覗いてみた。地面が全く見えない。非常に高い場所にいるようだ。
彼女は身震いした。
「ここは、どこなの?」
なかなか状況が分からず、ティエラが混乱していると、後ろから声が掛かる。
その声に、下を向いていたティエラはびくりと震えた。
驚いて、岩の端に着いていた手を滑らせる。体勢が崩れた。
思わず彼女は目を瞑る。
(落ちる――!)
そう思ったが、その時は訪れなかった。
身体がふわりと浮いた。
恐る恐る目を開くと――。
「姫様、ご無事ですか?」
そこにいたのは――
――白金色の髪に、柔和な蒼い瞳を持った美青年。
自身の婚約者の顔が、ティエラの目の前にあった。
「ルーナ……」
いつも城で抱きかかえられていた時のように、ティエラはルーナに横抱きにされている。
彼女は、先程までの彼との会話の内容を思いだして、蒼白となった。彼女の身体も縮こまる。
そんなティエラの様子を見ても、ルーナは特に何も言わなかった。
彼はゆっくりと、彼女を地面におろす。
「ここは一体……?」
少しルーナから距離をとりつつ、ティエラは尋ねた。
彼のことが怖かったが、それ以上にこのよく分からない場所も気になる。
ティエラ達の世界に魔術は存在するが、岩が空に浮かんだ空間というのは聞いたことがない。
「以前も、こちらに貴女様と来たことがございます」
「以前……?」
ティエラは、ルーナの記憶だけが曖昧なままだ。そう言われても、覚えてはいなかった。
ルーナは少しだけ、哀しげに微笑んだ。
「あの男を、探しましょうか」
(あの男?)
ソルの事だろうか――?
ルーナから、意外な提案が出てきて、ティエラは目を丸くする。
視線に気づいた彼が、彼女に答えを提示する。
「剣の守護者がいないと、この場所から出られないのです」
神器が何か関係しているのだろうか?
ルーナは、ティエラの前を歩き出した。
どこに行って良いのか分からないティエラは、ひとまずルーナの後をついて行くしかなかった。




