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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第4部 竜の章

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第98話 大地の決意




 ティエラは、少しの間だけ、気を失っていたようだった。

 目を覚ますと、ソルが心配そうにこちらを覗いていた。


「再会してから何回目だよ……」


 ため息をついた後に、毒づかれた。

 寝台に横たわっていたティエラは、身体を起こした。同じ寝台に腰かけていたソルと目が合う。

 彼と再会してからは、意識を失うことが多い気もする。

 城にいた頃はそうでもなかったような。


(城……?)


 そこまで考えて、はたと気付いた。

 記憶を失ってから外に出るまでの記憶が、少しだけ薄らいでいるような気がしている。


「変なとこは、ないか?」


 そうソルが、ティエラに尋ねてきた。自身の抱く違和感について、彼女は彼に慌てて説明した。


「なんでわざわざ、あんたの最近の記憶を失くそうとしてるんだ、あの男は」


「分からないけど……」


 ティエラは目を伏せる。

 元々ルーナに関する記憶ばかりが戻っていないのに、このままだと完全に彼を忘れてしまいそうだ。

 ティエラの胸がざわつく。

 城にいる間に、これと言って重要な何かを聞いた覚えもない。

 ルーナの考えが分からないことが怖かった。



 ティエラが顔を上げると、ソルの碧の瞳と出逢う。

 先程のルーナとの一件を思い出す。また、顔を下に向けてしまう。

 今しがた、ルーナの事を忘れてしまいそうで不安になったのとは別に、胸に違和感を抱いた。


(見られてたわよね……)


 ルーナとの出来事だ。

 これまでにも他の人々にソルとの口付けを目撃されてはいた。その際は気恥ずかしさが強かった。

 だけど。

 今回は、ソルに、ティエラとルーナとの口付けを見られてしまった。彼女の意思に反したものではあった。だけど、どうしても自分に隙があったのではないかと、自己嫌悪感がわいてくる。


「さっきは、遅くなってすまなかった」


 ソルに謝られて、ティエラは咄嗟に否定した。


「だ、大丈夫! それに、ソルに悪いところなんて、ない……」


 ティエラは彼に、曖昧に笑い返した後、また俯いてしまう。

 顔を上げられないままでいた。

 ソルの手が、ティエラの胸元にあるペンダントにゆっくり伸びてくる。

 そのまま鎖骨を撫ぜられ、ティエラは少しだけくすぐったく思う。

 すると、彼から口づけが降りてきた。目を瞑る。いつもと違い、柔らかくて優しい。

 しばらく、唇を重ね合っていたら、ティエラの気持ちが落ち着いてくる。


 二人の唇が離れた後――。


「すまない、扉は叩いたのだが」


 部屋の中に、突然声が響いた。

 目を向けると、セリニが扉の前に立っていた。

 ティエラが、声にならない悲鳴をあげる。


「……『あれ』も報われんな……」


 セリニがそう言った後、淡々と話を続けた。


「『あれ』とちょうど城で会ったのだが。お前達のところにも来たのだろう?」


 真剣な話に代わり、ティエラに緊張感が戻る。

 彼女は、セリニの質問に頷いた。

 彼が『あれ』と呼ぶのは、ルーナの事だ。

 ティエラは顔を引き締め、セリニに尋ねた。


「セリニさん、ルーナは城にいるのでしょうか?」


「ああ。一応、明後日までは城にいるようだ」


 セリニの答えに、ティエラはしばらく考え込む。


 そして決意し、彼女は彼に、こう告げた。




「明日、城にいるルーナに会いに行こうと思います」



 それを聞いて、セリニが目を丸くした。

 ティエラの近くにいたソルは、大きくため息をついたのだった。




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