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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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半月は想う

セリニの回想になります。

こちらはとばしていただいても、本編には差し支えはないかと思います♪




「じゃあ、あの絵って?」


 ティエラ姫に問われ、銀の魔術師セリニは答えた。


「玉の一族である私、ノワ、それにルーナだ。従兄弟が揃った時に描いてもらった作品だ」


 セリニは過去を思い出していた。




※※※




 ノワ・セレーネ。


 ルーナ・セレーネ。


 どちらも、セリニ・セレーネの従兄弟だ。


 生まれた順は、セリニ、ノワ、ルーナの順だった。


 玉の一族は、宝玉を守護する一族である。

 玉の一族であるセレーネ家には、本家以外に、分家が二つ存在する。

 本家にはノワが、分家にはそれぞれセリニとルーナが一人ずつ生まれた。


「セリニ兄さん、僕はどれだけ勉強しても魔術が使えないんだ」


 ノワは、本家に生まれ、玉の守護者になる使命があった。

 だが、ノワには魔力がほとんどなく、魔術の才能がなかった。

 セリニ自身は、宝玉の加護を受け、非常に高い魔力を持っている。

 魔術というのは、そもそも生まれもった魔力の高さが影響してくる。その後、理論を学ぶことで行使ができる。

 ノワは、魔術理論をいつも学習していたが、魔力がないから意味がなかった。それでも、もしかしたらある日、神器の加護があるかもしれない。そうやって日々、愚直に頑張っていた。


「ノワ、お前に魔力はないが、諦めずに取り組めるところが才能だ」


 セリニが、ノワにそう伝えたことがある。

 ノワは顔をくしゃくしゃに歪めた。そして寂しげに「そうでしょうか」と呟いていた。




※※※




 一方、もう一人の従兄弟ルーナ・セレーネ。

 彼は、魔力に満ち溢れ、さらに魔術理論もなんなく理解できる才能を持って産まれた。

 月の化身と言われている、初代・玉の守護者の生まれ変わりとも評された。

 実際は生まれ変わりではない。いわゆる先祖返りだろうと、セリニが師事する大公プラティエス様が仰っていた。

 ルーナは才能には恵まれたが、愛情には恵まれることがなかった。

 大人達にいつも利用されていた。

 セリニはルーナと時折会話を交わすことがあったが、いつも見えない壁があるように感じていた。

 セリニ自身も、ルーナが哀れで、かける言葉を見つけることが出来はしなかった。



※※※




 次第に、ノワはルーナと比較されるようになっていった。セリニが比較されなかったのは、年長者だったのもあるかもしれない。

 あまりにも、年下であるルーナの才能が秀ですぎていたのだ。

 ノワは、頑張っても、頑張っても認められなかった。

 彼の母親までも、ルーナに傾倒していた。


 セリニはノワを心配し、声をかけた事がある。


「ノワ、大丈夫か?」


「セリニ兄さん、僕は大丈夫だよ」


 今思えば、ノワは全く大丈夫ではなかった。彼なりに自分を守っていたのだ。




※※※




 最後に会った時、セリニはノワからこう言われた。


「セリニ兄さんには、僕の気持ちなんか分からない」


 ノワは、セリニを次第に避けるようになっていった。

 セリニは、ルーナには劣るが、宝玉の加護を受け、高い魔力と才能を持って産まれている。一応、国ではルーナの次に強い魔術師とされる。世間にもそれなりに有名だった。

 長じるに連れ、そんなセリニと一緒にいるのも、ノワにとっては苦痛だったのかもしれない。

 セリニは、ノワに対し、それ以上介入出来なくなった。

 時折、ノワが女と酒に溺れている話を耳にするようになっていった。

 セリニは、誰よりも努力が出来るノワの才能が枯れていくのが悲しかった。




※※※




「この中では、私が一番年長者でな……」



 お飾り宰相として有名になってしまったノワ。


 理由が分からないが、国王暗殺に手を染めてしまったルーナ。


 年長者だったが、セリニは二人に何もしてやれなかった事を悔いている。


 今からでも遅くないだろうかーー?


 二人から逃げてきた自分に――ただ傍観していた自分に――。

 セリニはそう問いかけたのだった。





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