第89話 洞窟にある部屋
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投稿がいつもより、スローペースになってしまいまして申し訳ありませんでした。
久しぶりにたくさん読んできました~♪
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気を失った後、ティエラは夢を見ていた。
「姫様、最近いつも憂いていらっしゃいますね」
ティエラが振り返った先。
周囲から、月の化身と評される婚約者の姿があった。
「え……そうかしら?」
「ソルが気になりますか?」
そうルーナが言うと、ティエラの頬にさっと朱がさした。
彼女は婚約者から視線をそらす。
「……いつもソルとは一緒にいたから……怪我したりしてないかなって……」
逆光でルーナの顔は見えない。
「彼は、剣の神器を継承しております。無事だと思いますよ」
ソルからもらったペンダント。
ティエラは気づいたら、それを握りしめていた。
「そうだと良いけれど……」
ペンダントを持つ手に力が入る。
ティエラの頭元に影が差す。
ルーナがティエラに近づいてきていた。
彼は、彼女の亜麻色の髪をいつものように一房手にとる。それに、彼の唇が触れる。
そうして、ルーナが口を開いた――。
※※※
ティエラは、はっと眼を覚ました。
記憶が戻るようになって、時々ルーナの夢を見ることがある。
だが、いつも何かしら肝心なところで終わってしまうのだ。
いつも、ルーナの表情がわからない。
ティエラの背中は汗でぐっしょりと濡れていた。
彼女はゆっくりと息を吐く。
(薄暗い……ここはいったい……)
少し離れたところに、ぼんやりと灯りがあった。
横になったまま、彼女が手を伸ばすと、ごつごつとした石に触れる。
(そうだ。私は、セリニさんについてきて……)
ティエラの意識がはっきりしてきた。
「起きたか?」
石が触れた方とは反対側を見ると、そこにはソルがいた。彼は、ベッドの近くに椅子を置いて腰かけている。
「ソル……私は……」
「怪我人に魔術を使いすぎたんだろ。あんたは、話の途中で倒れたんだ。早めに休ませるべきだった。悪かった」
ソルに謝られてしまう。
近くに彼の大きな手があった。ティエラは、彼の指にそっと触れる。
「大丈夫よ、ありがとう……」
いつもの癖で、ソルがため息をついた。
「せっかくだから、朝まで寝ろよ」
「うん。ただ、ちょっと服が汗で濡れちゃって。交換してから、また寝ようかな」
「ああ、アルクダが荷物持ってきてたな。ちょっと待ってろ」
そう言うと、ソルが荷物をとってきてくれた。
彼には一旦部屋の外に出てもらい、待ってもらうことにする。
部屋は石で出来ているからか、ひんやりしていた。
濡れた下着を脱ぐと、肌寒い。
新しい衣類に取り替えようと、彼女が衣類に手を伸ばした時――。
ティエラしかいないはずの部屋の奥から、視線のようなものを感じた。
彼女が振り返ると、ぼんやりとした光の下、人の目のようなものが見える。
「きゃあっ!」
ティエラは思わず叫ぶ。
ソルが部屋の中に、勢いよく入ってきた。
「どうした?!」
「目、目が…」
狼狽えながら、ティエラがソルに言う。
「目――?」
二人で奥を確認すると――。
「絵だな」
――それは人ではなく、人物画だった。
ティエラが人の目だと錯覚したのは、そこに描かれた人間のものだったようだ。
「驚かせんなよな」
ソルが、今日何度目かのため息をつく。
「ごめんなさい」
ティエラが言うと、ばさりと頭に何かが掛かる。ソルが自分の上衣を脱いで、彼女に掛けてきた。
「寒いから、早く服を着ろ」
そう言われて、ティエラは、はたと気づいた。
何も身に付けていないのだった。
彼女は、その場にうずくまる。
「前も言ったが、あんたの身体は見慣れてる。気にするな」
そう言われて、ティエラはますます顔を上げれなくなった。
――ティエラの後方。
彼女が驚いた人物画には、銀色の髪をした三人の少年らが描かれていた。




