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記憶喪失の癒し姫と白金の教育係と紅髪の護衛騎士  作者: おうぎまちこ
第3部 大地の章

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第86話 神剣と偽の宝玉

いつも皆様にはお世話になっております♪

ブクマ等、いつも助かっております♪

今日もどうぞよろしくお願いいたします♪




「なんであのバカが、ここにいんだよ」


 宰相ノワ・セレーネの姿を確認し、紅い髪の騎士ソルが毒づいた。

 肩に抱えていたティエラを、ソルはゆっくりと地面に降ろす。


「あれ~~? ノワ様、魔術使ってませんか~~? ねえ、ソル様?」


 黒髪ツインテールのメイド・グレーテルが、ソルに問いかける。


「例の石だな」


 そう言うや否や――。


「グレーテル! ティエラは任せた!」


 ――ソルがノワの方へ駆け出した。


 門の前。


 ノワが手当たり次第に、人々に対して魔術を放っている。

 術は、塔の上でルーナが使っていた雷の魔術に似ていた。


 ソルが離れた後、ティエラは近くで倒れている人達の元へ向かうと、癒しの魔術を行使しはじめる。


 遠くで閃光が走る。


 ティエラの身体がぶるりと震えた。


(雷が怖い……でも、今はそんなことを言っている場合じゃない)


 自身を奮い立たせながら、ティエラは負傷者に手をかざす。

 まだ簡単な術しか取り戻せていないが、ほんの少しでも誰かの役に立てればと思い、彼女は術を発動し続けた。

 怪我人達は、少しだけ痛みが和らいだのか笑顔になっていく。

 癒しの魔術は、本人の回復力を促進するだけだ。促した後は、本人の体力に任せるしかない。


(よし、この人はもう大丈夫――! 次――!)


 すぐに次の怪我人の元へと、ティエラは駆け出した。




※※※




 一方、ソルはノワに対峙していた。


 鈍い銀の髪を持つ青年ノワは、ソルを見つけて高らかに笑う。


「ちょうど良いところに来たな、赤毛! ティエラ姫も一緒みたいだな!」


 ソルはノワを睨んだ。


 ノワ放った光の魔術をソルは神剣ではじく。

 光は地面に消える。

 

 帯剣していたレイピアを、ノワはすらりと抜いた。


「ノワ! お前は一応、この国の宰相だろうが!? 民を守らずに、何をやっている!?」


「僕の国の民だからこそさ! 今まで僕を馬鹿にしてきたから、その報いを受けてもらうんだ!」


 ソルが駆け、ノワに剣を振りかぶる。


「効かないな、赤毛……!」


 光が弾ける。

 ノワが魔術を連続で発動した。

 ソルの剣は、なかなかノワ本人には届かずに、光を弾き続けた。


「神剣と言ってもそんなものか!?」


 街の上では雷鳴が轟き、雨がざあざあと降り始める。

 雨粒はソルとノワを濡らしていった。


 斬激の音は、雨の音に消えて行く。


「悪いことは言わない! ノワ! その石だけは使うな!」


「はぁっ!? やっとで魔術が使えるようになったのに! やめるわけないだろぉっ!?」


 ソルの忠告に、ノワは耳を貸さなかった。

 魔術を繰り出しながら、ノワがソルに剣を打ち付ける。


「お前は! 自分が神器に選ばれたからって! 偉そうにするなぁぁっ!」


 ソルが、ノワの剣を受ける。

 ノワの攻撃の中で一番重い。

 ソルの神剣を持つ手が痺れた。



「ちっ――!」



 ソルが、剣の柄を握りなおした、その時――。




「――――やめよ!!!」




 若い男の怒鳴り声が聞こえる。

 

 同時に――。


 轟音と共に地面が割けた。


 ソルは体勢を整え、地割れを避ける。

 

 一方ノワは、そのまま亀裂に飲み込まれてしまったのだった――。




※※※




 ティエラはソル達の様子を確認しながら、傷病者の手当てをしていた。


 突然聞こえた男の声と、地面の割れる音。


 それらに驚き、彼女は声の主の方へと振り向いた。


 そこには、先程すれ違った古書屋の男が立っていた。


 男の髪色は、ルーナと同じ白金色。


 夜闇の中――。


 月に照らされた男の髪は、銀に輝いていた。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  とても面白かったです!  読みやすくてサクサクページ進みました♪  最初からルーナなんか怪しいなって思ってましたが、だんだんと明らかになってきましたね。  お互いを想い合うティエラとソ…
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