第7話 記憶の在処を求めて
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現在、ティエラが城の中で過ごしている部屋は、元々彼女の部屋だったそうだ。
(まずは、部屋の中に何か手がかりはないか探してみなきゃ)
ティエラが部屋の中の机などをのぞいていると――。
「日記――?」
日記の表紙は、灰色がかった厚い紙で出来ており、四面を縁取るようキラキラとした細かい宝石が散りばめられていた。
中を覗いたところ、数ページほど故意に破かれた痕がある。
(何? 何でこんなに破れたりしているの?)
自分がやったのだろうか?
破れたりしている日記を見ていると、薄気味悪さを感じる。
(黒いインクで塗りつぶされた箇所も多いわね――)
しかも――。
(肝心のソルに関する内容が見当たらない……)
ティエラはがっかりする。
それでも、ところどころ読める箇所があったため、後で目を通してみることにした。
(日記は、寝台の枕元に置いておきましょう)
他にも何か手がかりがないか、彼女は調べてみた。
だが、部屋の中にある書物のほとんどが、国の統治の方法論や歴史書といった類いのものだ。
そのため、記憶の手がかりになりそうなものを探し当てることは出来なかった。
ティエラは途方に暮れる。
(どうして、こんなに手がかりがないのかしら?)
彼女が考え事をしていたら、部屋の扉を叩く音が聴こえる。
「ヘンゼルにございます。姫様の朝の身支度に参りました」
ヘンゼルが部屋の中へと入ってきた。
ティエラはヘンゼルに対して、ソルのことを尋ねてみることにした。
「ヘンゼルはソルのことを御存知ですか?」
「……申し訳ございません。ソル様のことはあまり存じておりません」
(気のせい……? ソルのことを聞いたら、彼女、イライラしているような……それにしても、ヘンゼルから何か手がかりが得られるかもしれないって、勝手に期待しちゃっていたわ……)
ティエラは残念な気持ちになってしまった。
彼女の準備が整うと、いつものようにヘンゼルは部屋を出ていった。
部屋に残されたティエラは、全身鏡の前に立ってみた。
鏡は、細かい木彫りが施された縁に囲まれている。
彼女は、鏡に映る自身の姿を眺めた――。
淡いピンクのドレスは、デコルテが大きく開いていた。スカート部分にはレースやチュールが幾重にも重ねられている。裾がふんわりと広がる、とても可愛らしいデザインだった。
(準備してあるドレスは全て、ルーナが選んだものだって、ヘンゼルから聞いているわ……こういう可愛らしいドレスを着た女性が、ルーナの好みなのかしら?)
婚約者であるルーナが選んだドレスを着ているのだと思うと、ティエラはなぜだか気恥ずかしさを感じてしまう。
(いけない、ついついルーナの事を考えてしまっていたわ……)
ティエラは頭を振る。気を取り直し、他の誰かにソルについて尋ねようと考えた。
部屋から出ようとした矢先に、扉を叩く音が聞こえる。
返事を返すと、入室してきたのはルーナだった。




