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教会でのひととき。4

 コロナ罹患後に喉と鼻の調子が落ち着かないので、結局また病院へ足を運びました。

 調子悪いところの薬をがっつりもらって飲んで三日。

 かなり良くなりました。

 はぁ、良かった。


 


 老爺の姿を見たサカリアスがにこりと笑う。

 その屈託ない微笑で老爺の人となりが知れた。


「アルタミラーノ公爵家当主、バジャルド殿です」


「御紹介に与りました、バジャルド・アルタミラーノと申します。此度は秘宝使用の許可を快諾いただきまして誠にありがとうございます。感謝の印としまして、微力ではございますが当家は全力で後援させていただく所存でございます」


『貴族が冒険者を後援するのは珍しくない話なのねー。お抱えより自由度が高いから冒険者としては断らないのが一般的なのねー。勿論悪質な貴族も多いけれど、アルタミラーノ公爵家は最高な後援なので遠慮なく受けるといいのねー』


 深々と頭を下げるバジャルドの、見事な白髪に見とれているうちに、リリーがそんなアドバイスをくれた。


「頭を上げて、どうぞお座りください。アイリーン・フォルスと申します。ホルツリッヒ村の村長を務めております」


「おぉ! 貴殿があの著名な冒険者でしたか。お噂はかねがね。一族の者が食への貢献に個人で後援を申し出たいと暴れておりましたわ」


 食に対する情熱がある家系らしい。

 公爵家にかかわる者が申し出てくれる、個人の後援もそれはそれで凄そうだ。


「ふふふ。食に関してはサカリアスといろいろ話し合っている最中です。興味がございましたら、後日サカリアスに尋ねてくださいませ」


「御言葉確かに承りました。後日後援の話を詰めさせていただく所存でございます」


 にこにこと笑う度に深く刻まれた皺が動く。

 苦労は十分に知れたが、それ以上に喜びが溢れているのが、人ごとながら嬉しい。


「これでアルタミラーノ公爵家の存続も一安心ですね。どうぞ」


「これはまた……子供や孫たちが悲鳴を上げそうな造形ですのぅ……普段は覆いを被せた方がいいやもしれませぬ。姿形を隠すと効果に違いは出るのでしょうか?」


「効果に違いはないのです。しまい込んだとしても、家に設置しておけば効果はでるのです。中に入っている宝珠が見えるように開いて設置して、その上に覆いを被せるのがお勧めなのです」


「こ、これは……スライムがここまで流暢に話をできるとは……」


「凄いですよね。規格外の冒険者は、規格外のモンスターをテイムできるようですよ」


「私たちはアイリーンのためだけに生まれたユニークモンスターですのよ?」


「そうなんですか!」


 仲良く沈黙を守っていた三人のうち、スルバランが声を上げる。

 そう言えば言っていなかったかな?

 特に言う必要性を感じなかったから触れてこなかったけれど、気になるのかしらね。


『ん。ユニークモンスターがそもそも珍しいの』


『う。その上で個人のために生まれたとか、あり得ない話なのよ』


 なるほど。

 それならスルバランの驚きも納得だ。


「へぇ。お前ら、ユニークモンスターだったのか……」


 ボノの瞳に危険な色が宿る。

 脳筋あるあるの、こいつらと手合わせしてみてぇ! って感じの。

 スライムたちが了承すれば構わないけれど、完膚なきまでに叩きのめされる未来しか見えないので、やめておいた方がいいと思う。


「アイリーンに相応しい存在なのですね。仲良きことは美しきかな……さぁ、バジャルド。即時帰宅して秘宝を設置なさい。数か月後には良い報告が聞けそうですね?」


「無論ですとも! 我が公爵家史上最高のベビーラッシュになりましょうぞ。それではフォルス殿、御礼のためにお時間いただけましたときまで失礼いたします」


 私の返答を待たずに転移で消えてしまった。

 返答をさせない素早さは頭の回転の速さと同意だろう。

 特に悪い気はしなかった。

 お家存続に悩まずにすめば、のんびりと食に関する話もできるに違いない。


「子宝に恵まれず病んでしまった者が多かったので、なかなか引退できなかったバジャルド殿ですが、これで肩の荷が下りるでしょう。元々優秀な一族ですからすぐに健全な状態になるでしょうね。良かったです」


 子供に関する話題がデリケートなのは、何処の世界でも共通なのだろう。

 自分が柵の多い地位でなくて良かったとしみじみ思う。

 あちらの世界ではいろいろと言われていたので、こちらの世界ではそっち系の話とは縁遠い存在でありたい。

 子供を産むのが義務だというのならば、孤児院の援助や養子の方向で考えるつもりだ。


「血が濃くなってしまったせいで、跡継ぎ問題で悩んでいる方々は多いですからね。秘宝には頑張ってほしいものです」


「この国の王族はその点は心配ないの?」


「ええ。兄には運良く子孫繁栄の称号がついていますから。兄が存命の内はその手の問題は起きない……あぁ、逆に子供が多くて後継者争いが少々目につきますかね」


 すっとサカリアスの瞳に闇が宿る。

 子供が多くて少なくても問題が生じるとは。

 全く人間の業の深さには毎度毎度辟易してしまう。


「現時点での後継者は優秀ですし、子孫繁栄の称号こそありませんが、家内安全の称号持ちですからね、そのまま王になってほしいものです」


 子孫繁栄と家内安全。

 自分的には家内安全が欲しいところ。

 しかし家内とは何処までを指すのだろう。

 今の自分だとスライムたちどまりの気がする。

 やりたいことがたくさんあるので、恋人や伴侶、子供などに関してはまだ考える余力はなさそうだ。


「……フォルス嬢は、伴侶とか、子供とか、考えねぇの?」


 ボノがここでも残念さを発揮する。

 今まで触れてこなかったのだ。

 興味がない、もしくは触れたくない話題だとすぐに勘付けるだろうに。


「そういう貴男はどうなの? 私より年齢も重ねているし。地位も盤石じゃない。優秀な遺伝子を残す義務を女にだけ求めないでほしいわ」


 声が一段低くなってしまった。

 やはり踏み入ってほしくない話題なのだ。

 サカリアスでも腹立たしい。

 素直に話を振られて答えるのはスライムたちぐらいだろう。

 それほどにこの手の話題は地雷なのだ。


「そこまで怒らんでも……」


「怒っていないわよ。不愉快なだけ。ああ、そうやって考えなしに触れてほしくない話題を振るから女性に疎まれるのかしらね?」


 思い当たるところがあったのだろうか。

 ボノが唇を噛み、拳を握り込んだ。


「……そうですねぇ。恋人としては続いても結婚となると皆逃げていきますよね、貴男が選んだ相手は」


「お前だって彼女いねぇだろ!」


「はははは。婚約者がいますけど、何か?」


「えぇ! 俺、知らねぇぞ!」


 知らないのかよ! と思わず突っ込みを入れたくなってしまった。


「幼い頃に親同士で決めた相手ですから、聞かれなければ答えませんね。先方の事情もあって結婚の話はでていないだけです。自分、身ぎれいな行動を取っていたと思いますけど?」


 スルバランの嫌みったらしい口調にボノはしばし思案する。


「そう言われてみればそうだな。お前、娼館とかも行かねぇもんな」


「フォルス嬢の前で娼館の話題など!」


「話題に出すものではありませんよ、ボノ。貴男は少し、黙っていなさい」


 呆れるスルバランに対して、サカリアスは怒りの色を乗せている。

 奔放な周囲に飽き飽きしているのかもね。

 冷ややかなサカリアスの言葉にしょぼんとしたボノは大きく肩を落とした。

 慰める者はいない。

 アランバルリですら伸ばしかけた手を引っ込めていた。


「そういえば秘宝って、どれくらいの期間設置しておけばいいのかしら?」


「……そういった説明は残されておりませんね」


「年単位の独占は難しいかと思われますが……」


 欲しい貴族は多そうだしね。

 秘宝の存在を隠し通すのも難しいだろう。


「……ジーが大量発生する頃がやめどきなのです」


「ひぃ!」


「アイリーンは落ち着くのです。最長で一年間。最低で三か月。状況によって変化するのです。大量発生しても秘宝を移動すれば、すぐにジーはいなくなるのです」 


「で、でも大量発生とか見たくないよね?」


「そこは我慢するのです。仕方ないのです」


 一生悪夢を見そうだけどね。

 大量発生した日には。


「ではその忠告も早速しておきますね」


 混乱する私と正反対でサカリアスは冷静だ。

 また鏡を使って早速設置をすませたバジャルドに、サクラの言葉をそのまま伝えている。


「大量発生したジーは、おめでとうダンスを踊るらしいから、そこまで嫌悪感は抱かないと思うのです」


「え?」


「見たくないのです?」


 一糸乱れぬ祝いのダンスは見たい。

 でもそれがジーによるものなら却下だ。

 意思の疎通ができれば多少嫌悪感が薄れるかもしれないが、それでもあちらで経験したジーに関する忌まわしい記憶は消えないだろう。


「アイリーンのジー嫌いは筋金入りですわね」


「同意してくれる人は少なくないと思います、ええ」


『ん。こちらでも嫌われ者だけれど、他にも嫌われ者モンスターは多いから、アイリーンほどの忌避感を抱く者は少ないの』


『う。ジーは結構役に立つモンスターだから、重宝する人も多いのよ』


「……頭ではわかっているんだけど、生理的に駄目なものは駄目なのですよ……」


 ホワイトジーとか、ブラックジーよりはましだったけど。

 やっぱりできる限り避けて通りたいですとも。


「しかし秘宝の獲得には感謝しかありません。幾つあってもいいものですが、そうそう出るものではありませんからね」


「依頼で取ってこいと言われても困りますね」


「大貴族の専属で秘宝を求めてダンジョン踏破する者もおりますので、彼らへの期待が強くなる可能性は高いですが……無理強いする者はいないと思われます。と言うか、教会の名においてさせませんので御安心を。アイリーンは好きに冒険してくださいね」


 それが一番教会や王家のためになると信じて疑わない表情だ。

 無論その通りだと思うのでわざとらしい笑顔を作って答える。


「冒険するフォルス嬢の恩恵もすばらしいのですが、ホルツリッヒ村からの恩恵もまたすばらしいので……王都に拠点は作られないのですか?」


「紹介できる土地や家屋はいろいろとございますよ?」


 サカリアスの紹介できる物件とか恐ろしい。

 どれも豪華か呪われていそうな気がするのは、あながち間違った見解ではないだろう。


「家付きの家事妖精がいるから、土地だけ相談に乗ってもらうかも……」


「は、拝見させていただけませんか! 憧れなんです、家事妖精!」


 目をキラキラさせたサカリアスに頼まれてしまう。

 意外だったが勢いに任せて了承した。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 ジーのせいで若干意気消沈気味 new!!


 料理人 LV 4


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     口止魔法 LV10


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)   

 最近ショート動画を見ていたら、グミを食べたくなって定期的に買ってしまいます。

 食感が好きなんだと改めて思った次第です。

 今はドバイチョコが食べたいところなのですが、入手が難しいですよね……。


 次回は、 教会でのひととき。5(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。 

 

 

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