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まずはギルドで登録の確認を。

 クリスマスイブですね。

 肉屋さんで仕上がったチキンを買おうか、自分で味付けしようか迷っています。

 鶏肉好きとしては昼も夜もチキンにしたい今日この頃……。

  

 


 トリアを副村長として正式な任命した上で、ホルツリッヒ村をあとにする。

 村民全員で見送ってもらった。

 トレントがあんなにいたんだなぁ……と実感させられたよ。

 そういえば、村の一角にいつの間にか大きな森ができていたっけなぁ。

 敷地面積だけならそこそこ栄えている市でも行けそうな広さになっていたので、気がつかなかったんです。

 私が迂闊なわけではないんです……たぶん。


 インセクトの近くには、ダンジョンのお蔭で栄えている町があるので、そこでギルド登録をする予定だ。

 商人ギルドもあるようなので、冒険者ギルドとともに登録しておきたい。

 基本アランバルリを通しての商売になるけど、突発的に何かしたくなったときに便利だからね。

 ダンジョンドロップも物によっては、商人ギルドの方が高値で引き取ってくれる場合もあるらしいし。

 例の詐欺師が本当に登録してくれたのか、確認もしないとだしね。

 その辺りはきちんと把握しておかないと、後々面倒が起きそうだからさ。


「うーん。それなら先に商人ギルドから登録がいいかな?」


「ええ、それでよろしいと思いますわ。愛の装備を見れば、目端の利く商人なら謀ろうとは考えませんでしょう」


 ローズの声に皆が頷く。

 当然私もだ。


 スライムたちと仲良く検討した結果、私の装備はこんな感じになった。


 ホワーンラビットの毛皮 フード付きマント。

 シルコットンの長袖シャツ。

 ポークの半袖シャツ。

 ポークの長ズボン。

 ポークの靴。

 ホワーンラビット牙のペンダント。

 ホワーンラビットのつけ爪。

 クックルー嘴の髪飾り。

 ヒノキの杖?

 シャーク皮のリュックサック。


 うん。

 どう考えても登録初めての初心者にあるまじき、高性能装備です。

 ありがとうございます!


「あ! 忘れちゃいけないのねー。普通の装備にはそこまで効果はつきにくいのねー」


 ……らしい。

 何しろ全装備に素敵効果付だからね。

 伊達に師範じゃないです。

 裁縫師も、細工師も師範なのよね、私。

 これも普通はあり得ないんだっけ。

 鑑定とかには表示されなくても、気をつけないとなぁ。

 

「商人ギルドに登録するなら、トリュフマスターを売るのがいいかもです?」


「あ、そうだね。せっかく良い仕上がりだからね」


 クール系な美人がふごふごと豚鼻をつけていたら萌えるよね。

 萌える、よね?



 ホルツリッヒ村から、スライムの高速移動を使っても十時間。

 徒歩だったら、何日かかるのかしら?

 馬車よりも速いしな、スライム移動。

 何だったら、寝てる状態でも衝撃なく運んでくれるスライムな乗り物だけど、休憩はおやつ付きで三時間に一回取りました。

 人目につきたくなかったので、隠蔽を使いましたよ。

 よほど美味しそうな匂いが漂っていたのか、周囲の人が鬼の形相で匂いの元を辿っていたっけなぁ。

 ちょっと怖かった。


「到着しましたわ」


 ん、そろそろなの、と教えてもらった段階では起きてたんだけどね。

 いつの間にか寝てたらしい。

 大きく伸びをしながらモルフォから降りて、門番に向かって会釈する。

 真っ赤な顔の門番二人が、人形のように揃ってお辞儀をした。


「「ドーベラッハへようこそ!」」


 ダンジョンで潤っているらしい。

 門番としては高価な装備をしている。

 全身鎧とか重そうだよね。


「初めて伺ったのですが……」


「はい、こちらの水晶玉に手を翳してください」


 言われたとおりに手を翳す。

 掌に載せるにはちょっと余るサイズの、透明だった水晶玉はやわらかな青い光を発した。


「犯罪歴がないことを確認いたしました。どうぞ、お入りくださいませ」


『青色は無問題。黄色は要警戒。赤色は犯罪者確定につき、出入りを禁ず……なのです!』


 サクラが念話で教えてくれる。

 そういえば盗賊村では、この確認もなかったわ。

 まー盗賊村だしねぇ。


「ありがとうございます」


 頭を下げて町へと足を踏み入れる。

 門番は余計な詮索をしてこなかった。

 身分が高い人のお忍び設定が利いている気がする。


「モルフォー。ドーベラッハのマップをよろしくー」


「ん。少々お待ちくださいなのっ!」


 久しぶりにモルフォによる超高性能マップを覗き込む。

 モルフォの背後に出現したマップを見ているので、周囲からは従魔と意思疎通をしているようにしか見えないはずだ。

 大きな道の邪魔にならない場所にいるが、目端の利く者の視線を感じる。

 基本中の基本とばかりに、まるっと無視をしておいた。

 今のところ、いきなり鑑定してくる失礼な者もいない。

 そこまで鑑定スキル保持者がいないだけの気もするが。


「やっぱりギルドは大通りに面しているんだね」


「う。冒険者ギルド、職人ギルド、商人ギルドの三大ギルドは大通りにあるのよ。その他のギルドはいろいろな場所に散っているのよ。王都には全種類のギルドがあるのよ」


「へぇ、そんなにあるんだギルドって」

 

「傭兵、ハンター、暗殺、魔法、スキル、闇あたりが有名ですわ」


 うん。

 全部気になる。

 安全なら足を運びたいね。

 無理な気もするけどね。


「職人ギルドには行くべきかな?」


「現時点では行っちゃ駄目なのね。アイリーンのスペックだと間違いなく囲われるのね」


「あー。なるほど」


「お金がない状態で見習いから始めるならお勧めなのです」


 きちんと育てる気はあるけど、育てた良人材を手放すつもりはないってことかな?

 三大ギルドの一つなら、当然仄暗い一面もあるだろう。

 かけたお金の分、回収したい気持ちは理解できるけど、度を超した無理強いはしてほしくないよね。


 スライム五体を引き連れて歩く姿は人目を惹くようだ。

 特に子供が、綺麗な色のスライムが欲しい! と駄々をこねている。

 この世界のスライムは、灰色の個体がほとんどらしいからね。

 カラフルな色合いは、実際華やかなのだ。


 人が寄ってこないのは、ローズが地味な威圧をかけているからかな。

 走ってくる子供が途中でころころ転がっているのも、威圧効果の賜だろう。

 知り合いなど一人もいないし、スライムのお姉ちゃん! 待って! とか叫ばれても、私はスライムじゃないし?

 足を止めずにさくさくと進み、商人ギルドへと足を踏み入れた。


 受付らしきものを探して目を細める。

 若くて可愛い及び綺麗な担当に人が集まるのは納得だ。

 だがしかし。

 私は女性との相性が滅法悪い。

 村にいる女性は、奴隷という制約で縛っているせいもあって関係は良好だが、こういった場面では男性一択。

 でもってイケメンも地雷なので、渋みのあるおじ様や枯れた老爺が好ましい。

 有り難いことに仕事ができそうなクール系おじ様がいたので、数人並んでいる背後についた。


 可愛い子も美人さんも一人として捌けてはない時間内で、クールなおじ様は手早く手続きを済ませた。

 お蔭で待った気がしない短時間で自分の番がくる。


「登録をお願いします。以前盗賊村と呼ばれていたバイヨンヌ村で一応登録したのですが、証となる物を何ももらわなかったので、違法登録かと思いまして伺いました」


「それはまた……大変な目に遇われましたねぇ。バイヨンヌ村での登録は全て無効と、商人ギルドで定めております。被害は大丈夫でございましたでしょうか?」


「ええ。あの村は滅びまして、その際にきちんと回収しておりますので」


「それは何よりでございます。ホルツリッヒ村村長、アイリーン・フォルス様」


「あら、私を知っていらっしゃる?」


「アランバルリが私に直接教えてくださいましたので、必要な情報は会得させていただきました。ドーベラッハ商人ギルド 副会頭ルーペルト・スルバランと申します」


 おぉ、副会頭。

 そしてアランバルリから直接話を聞いているなら、信用できる人だろう。

 ……疑いたくはないけれど……嘘、吐いていないよね?


『悪意は感じ取れませんわね。鑑定とかも仕掛けてきませんし。ある程度信頼をしてもよろしいでしょう』


『了解!』


 ローズの許可が下りたので、安心だ。 


「それでは早速、登録をいたしましょう。お時間がよろしければ、個室でお願いできますでしょうか」


「ええ、そうしてもらえると有り難いわ」


 スルバランは代わりの人を呼んで、私たちを個室へと案内してくれる。

 通された個室は、たぶん一番良い部屋なんだろうなぁと思う、品の良い家具が設置された大きめの部屋だった。


「登録には100ブロンほどかかります。物品での支払いも可能でございます。いかがいたしましょう」


「その情報は正しかったみたいですね。現金で大丈夫ですよ」


 サイが収納から一枚の赤石貨を取り出した。

 赤石貨のぴかぴか具合と、サイの収納に驚いたのだろう。

 スルバランが大きく目を見開く。

 片眼鏡がくいっと動いた。


「……では、これで100ブロンまでのお取り引きが可能になった説明は?」


「あ、それも聞いてます。証を出さない以外は、正しい情報だったのかしら?」


「証はこちらになりますね。特殊な調合比率で作られた商人ギルドカードです。取り引きの度に必要となります。紛失しても戻ってくる機能を追加搭載できますが、いかがでございましょう?」


 銀色のカードがテーブルに置かれる。

 プラチナ一色の、文字装飾がないクレジットカードといった形状だ。


「その説明はありませんでした。是非お願いいたします」


「ふふふ。こちらの説明は基本、貢献いただいた方へのサービスのようなものでございます。本来は別途1000ブロンちょうだいいたしますが、フォルス様には無料進呈を考えておりますが、よろしゅうございましょうか?」


「まだ貢献もしていないのに、情報がいただける上に、無料でいいのかしら?」


「初登録時に、すばらしい商品の御提供をいただけると信じておりましたが、見当違いでございましたでしょうか?」


 にっこりと微笑まれる。

 信用できてしまうのが不思議なほどの、なかなかにうさんくさい笑みだ。


「……100ブロンの取り引きをオーバーしてしまっても、いいのならば」


「副会頭権限で、お願い申し上げます」


 テーブルの上に頭がつくほど深く下げられた。

 期待には応えたい。

 私はテーブルの上にトリュフマスターを一つ、取り出しておいた。


「どうぞ鑑定なさってください」


 トリュフマスター

 ポークの鼻で作られた、高級食材トリュフを取るための道具。

 師範の手によるので、可愛くデフォルメされている。

 臭いがせずに、繰り返し使える画期的な造り。

 本来は結構グロテスクな形状で、装着していないときは腐臭がする。

 こちらは無臭。

 トリュフ取得の効率は抜群なので、オーダー注文で作成→使い捨てが一般的。


「では、遠慮なく……す、すばらしい! 想像以上でございました! これ一つで1000ブロンの価値がございます!」


 高評価で何よりだ。

 サクラ情報によると、現時点でのトリュフマスターはグロテスク形状で悪臭付きにもかかわらず、オーダーメイドのために一個100ブロンもするらしい。

 高級食材のため需要は高いが供給は少ないので、この商品は特に喜ばれるだろうと、スルバランは太鼓判を押してくれた。


「……何個、納品いただけましょうか?」


『百個はいけるけど、小出しでいくのねー。まずは十個なのねー』


「十個でしたら、すぐにでも」


「! 何と有り難い。こちらの商品は、評判の良い冒険者を選び抜いてお売りしますね」


 その中に可愛い冒険者がいればいいなぁ、とこっそり願っておく。


「定期的な納品は可能でございましょうか?」


「ダンジョン踏破するまでは、こちらに滞在するので。定期的ではなく、大量納品なら可能です。百個ぐらいは大丈夫かと……」


「それだけあれば、トリュフを町の名物にもできそうです。感謝いたします!」


 トリュフがよく取れる森でもあるのかしら?

 何にせよ、貢献度が上がったなら良かった。


「ダンジョン踏破ということは……こちらからの依頼も引き受けていただけましょうか?」


「冒険者ギルドより、条件が良いものであれば、こちらからお願いしたいわ」


 大きく頷いたスルバランは立ち上がると、扉を開ける。

 外にいた人から、何やら書類を受け取っていた。

 何時の間に手配したのやら。


 依頼の他にもダンジョンについての説明などもしてもらって、結構な時間を過ごした私たちだったが、部屋を出るときはスルバランとともに満面の笑みを浮かべていた。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  

 

 普段はあまり見かけないターキーも今日はスーパーに並んでいるのが幸せです。

 ターキーは鶏肉より肉がみっちりしている印象です。

 レッグだから余計そう感じるのかしら?

 

 次回は、山盛りの依頼を受けたが後悔はない!(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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