383話 戦いのちょっと前 -こんな場面もありますよね?-
マルコが焦っているようです。
「リョージ無事か!」
マルコの声が謁見の間に響く。フランソワーズから魔族の証である翼や角が現れ、亮二が近付いたタイミングで黒く光って爆発する。一面には煙が巻き上がっており、亮二達は謁見の間の中央にいたので、マルコとカレナリエン達は分断された状態になっていた。
状況の分からない中、マルコは亮二から預かっていた通信の腕輪を使って呼びかけたが反応はなく、焦燥感が募っていたが、腕輪が光ると亮二ではなくカレナリエンから通信が飛んできた。
「マルコ! リョージ様は無事よ! 姿は煙で見えないけど、生命反応はあるわ! そっちはオルランド猊下の安全は確保できてるの?」
「ああ! オルランド猊下は錫杖を使って防御魔法を展開してるから無事だ。俺もリョージにもらった防御のリボンで問題ない! なぜ、俺までリボンにしたのかをリョージに絶対聞くけどな! そっちの様子はどうだ?」
分断され、反対側の状況が掴めなくなっており、マルコからオルランドの無事を聞いたカレナリエンは、安堵のため息を吐くと自分たちの状況を伝え始める。
「こっちも大丈夫よ! 私とエレナ、他の婚約者達も防御のリボンで怪我一つ無いわ。枢機卿達はリョージ様がエリーザベトさんに渡した、ティアラの自動防御で守られているわ。私達の防御のリボンも活躍しているみたいだけどね」
「そうか! 無事だったら問題ない! 後は扉から枢機卿達を逃がしてくれ! それと、お前達もだぞ! そこにいたら、リョージが全力で戦えないだろう! 早急に、そこから撤退してくれ!」
通信を切ったマルコは、前方から意識を逸らさないようにしつつオルランドに話しかけた。
「猊下! 脱出を!」
「リョージ君にここを任せて逃げろと? 私も戦う事は出来ますよ! イオルス神をこの身に宿せば!」
「相手は魔王です。それに俺がここに居る限りは、貴方を戦わせません。主君の命で貴方を守るように言われております」
「しかし! 魔王相手に……。痛ぃ!」
「ごちゃごちゃ言ってねえで、さっさと逃げろ! お前がそこにいると邪魔なんだよ! お前は戦えても、そこにいるラッチス枢機卿や、文官達はどうするんだよ! ここは魔剣を持っているBランク冒険者で、リョージの仲間である俺に任せておけ!」
マルコから怒鳴りつけられ一瞬ビックリした顔になったオルランドだが、状況がひっ迫している事を理解すると大きく頷いた。周りにいるラッチスや側近の者に声を掛け、離脱するように伝える。そして、自らも脱出しながら小さく笑うと、マルコに話しかける。
「後はよろしくお願いします。それにしても、ミスリルのハリセンで叩かれても、痛みは無いのですね。それとも神具の使い手であるマルコ卿の扱い方が……。痛ぃ!」
「余裕だな。おい! さっさと移動しろ! 本当にリョージの友達だよお前は!」
「最高の褒め言葉ですね。ではご武運を! イオルス神のご加護を貴方に」
ミスリルのハリセンで全力で叩かれたオルランドは、嬉しそうに頭を撫でながらマルコにイオルス神の加護を与えると、ラッチスに促されながら謁見の間から出ていくのだった。
◇□◇□◇□
「ナイス! マルコ! 良くやってくれた! 俺は天井に空いた穴から飛んでいく! 後の対応は全てマルコに委譲する! じゃあ、空飛ぶデートを楽しもうか! フラン!」
「おい! リョージ! 戦うんだったら負けるんじゃねえぞ! お前がいなくなったら、ハリセンで叩くために探し続けるからな!」
マルコの声に亮二は嬉しそうに笑うと、魔力を全開にしてフランを掴みながら風属性魔法を使って上空に飛び出した。
「がぁぁぁ!」
「ちょっ! うるさいよ! しばらく大人しく付き合えって!」
暴れるフランソワーズを抱きかかえながら飛び続け、亮二は神都から離れた場所に到着するとうち捨てるように放り投げる。
「よし! ここまでくれば安心だな! 思う存分に戦おうか!」
「ガ、ガア。リョ、リョージ! ナントカチカラヲオサエル。ダ、ダカラコロシテクレナイカ。ワタシノイシキガアル……」
「断る! ここはテンプレ的に、お前の体力が無くなるまで戦うんだよ。そしたらなんとかなるんだ! それまでは意識を休めておけ!」
苦しそうに自分を殺すように告げてきたフランソワーズに、亮二は力強く拒否する。一瞬、間の抜けた表情になったフランソワーズだったが、小さく笑って頷くと目を閉じた。
「マ、マカセタ。がぁぁぁぁ!」
「そう言えば、こっちに来る時にイオルスが言ってたな。『レベルが六〇あってもソロじゃ倒せないのが魔王』だったっけ? 俺のレベルって五一くらいなんだよな。レベルの差が実力の差じゃない事を教えてやる!」
亮二はミスリルの剣をストレージから取り出して、雷属性を付与すると斬りかかった。剣先がフランソワーズの体に当たる直前に、障壁が現れ亮二の攻撃を防いだ。
「なるほどね。単純な属性付与攻撃程度では、簡単にダメージは通らない……。うぉ!」
攻撃が通じない事に、感心しながら呟いていた亮二を、フランソワーズの攻撃が襲う。上段から振り下ろされた拳は大地を震わし、余波が亮二を襲った。体勢を整えた亮二が攻撃に移ろうとしたが、その前に連続攻撃が襲ってくる。
「おぉ! 戦闘本能だけで戦ってる感じだよな。そんな攻撃で俺を倒せるわけないだろ!」
フランソワーズの連続攻撃を軽やかに躱しながら、亮二は反転攻勢に入るのだった。
魔王の強さを思い出しました。




