353話 小さなイベント発生 -細々とありますね-
いい人材を発見!
鍛冶をしている男性に作業が終わったら連絡するように伝え、シーヴの元に戻ってきた亮二が二人に声を掛けようとすると、手元の魔道具から音が鳴った。
「ん? なにかあったのか、現地に到着したかのどっちかだな。馬車から連絡があったから戻るぞ」
「分かった。じゃあ、今度は領都で会おうね。お父さん。あと、お母さんの機嫌を直しといてよ! 物凄く怒ってたからね」
亮二から声を掛けられたシーヴは、帰る支度をしつつコージモに対して苦笑を浮かべながら話しかける。
「わ、分かってるよ。まさか、あんなに怒るなんて思わなかったよ。リョージ様。助けて下さ……」
「止めといた方がいいよ。リョージ君。お母さんが怒ったら本気で怖いから。早く馬車に戻った方がいいかも。さっき『あらあら。リョージ様から聞いたの? じゃあ、お父さんとお話をした後に、リョージ様と話をしないとね』って台所に向かって行ったから」
「なんで! なんで台所? 本気で怖いよ!」
コージモから縋るような視線で懇願されたが、シーヴが話の途中で遮ってきた。冗談半分で話を聞き流していた亮二だったが、コージモが顔面蒼白になっていく様子を見ると冗談ではないと感じ取り慌てて立ち上がった。
「じゃ、じゃあ。コージモさん。これ渡しておくよ! またね!」
「金貨? えっ? 一〇〇枚近く入ってる?」
慌ただしくストレージから金貨袋を取り出してコージモに手渡した亮二はシーヴの手を取って、逃げるように転移魔法で馬車に戻るのだった。
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「どうした? なにかあったのか?」
「いえ。野営の時間になりましたので、夕食の準備をお願いしたいと思いまして」
馬車から出てきた亮二に護衛の兵士が申し訳なさそうに話しかけてきた。思ったよりも時間が経っている事に軽く驚きながら、食事の準備を始めるために移動しながら護衛の兵士に留守の状況を確認する。
「俺達が居ない間になにかあったか?」
「いえ。魔物の襲撃が二回ほどありましたが、特に問題なく撃退しております」
元気よく答えた護衛の兵士に亮二は首を傾げつつ確認する。
「魔物の襲撃が二回って少ないのか?」
「当然です! 今までは教皇領に行く場合は大金を出して護衛を雇うか、魔物に会わないように神に祈りながら命がけで行くかのどちらかでした」
思った以上に教皇領への道のりが今までは険しかった事に亮二が戸惑っていると、シーヴが横から護衛の兵士との会話に参加してきた。
「そうですよ! リョージ様が行った教皇領への街道整備は貧民対策だけでなく、教徒にとっても救いになっているのです!」
「今は乗り合い馬車もあって、護衛もギルドから格安で斡旋してくれてるから……くれてますからね。リョージ様がサンドストレム王国に来てくれた幸運をイオルス神に感謝しています」
「へ、へぇ。そうなんだ。みんなが喜んでくれてるんなら良かったよ。じゃあ、俺は食事の準備でもしてこようかな」
護衛の兵士とシーヴから絶賛された亮二は、若干頬を赤らめながら食事の準備を始めるのだった。
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「今日の食事は豪勢ですね。野営中に食べる料理じゃないですね」
転移魔法陣で夕食を食べるためにやってきたカレナリエンが、呆れたように料理を見て呟いていた。視線の先には土属性魔法で作られたテーブルの上に所狭しと料理が並べられており、見た事のない料理も大量に置かれていた。
「リョージ様? これは? なにかのパーティーが始まるのですか?」
「ん! ちょっと張り切り過ぎた! 後悔はしていないし、特に意味もない!」
不思議そうな顔で問い掛けたカレナリエンに亮二は胸を張って答えた。他の婚約者達と護衛の兵士達は二人の問答を聞きながらも料理の近くで目を輝かせており、亮二の挨拶を待ちきれない表情で見ていた。
「おぉ。みんな準備万端だな。じゃあ、教皇領への旅の無事を願って! 乾杯!」
「「「乾杯」」」
亮二が張り切って用意した料理は、和食が中心ながらも洋食や中華も並んでおり、見た事のない料理に一同は感動しながら満喫していた。
「料理のレパートリーも増えたから料理本でも出そうかな?」
「いいんじゃないですか? 各国の料理人か貴族や王族達が間違いなく買ってくれますよ」
一同の食いつきっぷりに亮二が感心しながら呟いていると、均等に料理を盛りつけた皿を持ったエレナが近付いてきた。
「そう? 本当に売れると思う?」
「当然ですね。世界中の料理を食べたと思っていた私でさえ、見た事も聞いた事もない料理をリョージ様はご存じなんですよ! 間違いなく売れますよ。早速、料理本を作りましょう! まずはぷりんから!」
エレナの勢いに若干引きながらも料理本を作ることを了承するのだった。実際に本が発売されるのは三年後で出版直後から品切れが続く大ベストセラーとなり、セーフィリア全体の料理が多彩になっていくのだった。
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「じゃあ、次はライラだよね」
「そ、そうだよ。つ、次は僕の、ば、番だよね! かかってこい!」
「なにと戦おうとしてるんだよ。それにもの凄くドモってないか?」
「そ、そ、そんな事ないよ? だ、大丈夫だって! 元気だから! 早く馬車に乗るよ!」
亮二の問い掛けに上の空になりながら真っ赤な表情で、ぎこちない動きをしつつ馬車に乗り込んでいくライラだった。
ライラが緊張しすぎている。なんで?




