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異世界は幸せ(テンプレ)に満ち溢れている  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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338話 宿屋の定番トラブル -色々とありますよね-

マッティアがブツブツ言っている

「宿屋の店長くらいには任命されると思ったけど、まさか街の長に任命されるとは。どうする? 街の人数はどれくらい必要だ? 一〇人? それは宿屋の従業員の数だよな。大体、街の規模って何人必要なんだよ?」


「なにをブツブツ言ってるんだよ。取り敢えずホコラの街は置いといて、マッティアの実家に行こうぜ!」


マッティアが突然の大役に混乱しながらも街の経営について考えていると、亮二が首根っこを掴んでリアカーに乗せると帝国領にあるマッティアの実家に向かって進もうとした。


「ちょ! リョージ様! 私の実家は帝国領ですが問題ないのですか?」


「はっはっは。俺に対して今更な質問だな。俺はマデリーネ姫と婚約もしているから、帝国に入るのも特に問題ないぞ。第一王子のクヌート殿下から特別許可証をもらっているからな」


勢い良く帝国に向かおうとする亮二を慌てて止めて質問したマッティアだったが、軽い感じで返事をもらうと全てを悟りきった顔でリアカーにしがみついた。ここまでの悪路を思い出したマッティアが、イオルス神に祈りを捧げながら旅路の無事を祈った後に亮二に自分の街までの距離感を伝える。

「私の街は、ここからなら馬車で三日ほどになると思います。リョージ様。お願いですから、お手柔らかにお願いします!」


「任せとけ! マッティアの実家につく頃には改良されて乗り心地が抜群になってるからな!」


街までの距離を聞いた亮二は満面の笑みを浮かべると爽やかに言い放った。そんな安全宣言にマッティアは安堵のため息を吐きながら、快適な旅になる事を喜ぶのだった。


◇□◇□◇□


「うぅ……。ま、まさか到着する直前で改善されるとは」


「はっはっは! まだまだ甘いなマッティアは」


リアカーに身を乗り出しながら吐き気と戦っているのを見ながら、亮二はリアカーをストレージに収納するためにマッティアを座席から放り投げた。


「うっ。きゅ、急に動かさないでください。吐き気が……」


「最後は問題なかったろ? 取り敢えず、これ飲んどけ」


休憩ごとに支給される飲み物を眺めながら不思議そうな表情でマッティアが質問してきた。


「毎回、休憩ごとに飲まされてるコレってなんですか? 飲んだら気持ち悪いのがスッキリとするんですが?」


「ああ。それは今回のリアカーで車酔いしたマッティアを見てて思い付いた酔い覚ましだ。スッキリ出来るのは検証できたから、量産体制について考えないとな。そして、今度は酔い止めを作ろうと思う」


自分の体で実験をされた事に苦情を述べようとしたが、亮二から「じゃあ、帰りは薬無しな」と言われると沈黙するしかないのだった。


◇□◇□◇□


「おぉ! マッティアじゃないか! 王国に割譲された領地で文官になったと聞いたが、子守が仕事になったのか?」


「久しぶりです。ジャンさん。今日は仕事でこっちに来たんじゃないんですよ」


門に入る前に亮二から正体を明かさずに、今回の件については対応するように言われていたマッティアは、亮二の存在がバレるのではないかと思いながら、背中に大量の汗を流しつつ門番のジャンと会話をしていた。


「やっぱり、実家の宿屋の件か? あれは確かにやりすぎだからな」


「私も手紙でもらっただけなので詳細は把握してないんですが、そんなに酷いんですか?」


マッティアの問い掛けに、門番は苦い顔をしながら頷いた。一〇日前ほどから宿屋には、ガラの悪い男達がたむろしており営業の邪魔をしているとの事。物を壊したりはしないが、宿屋の前で道行く人を睨みつけたり、併設されている食堂でも毎日宴会をして周囲の者に絡んでいるとの事だった。


「衛兵はどうしてるんですか?」


「そりゃ、何度も注意をしてるが、その度に謝るだけだよ。そして衛兵が帰ったら、また同じ事を繰り返す。実際に物を壊したりはしてないから、衛兵側も文句が言えないんだよな」


マッティアと衛兵の話を聞いているだけだった亮二だが、これ以上の情報はないと判断すると中に入る為に門番に話しかけた。


「ねぇ。そろそろ中に入りたいんだけど?」


「ああ。すまないな坊主。ただ、俺の質問には答えてくれるか? この街に来た目的は?」


「観光と美味しい物の調査。それと雑用の処理だよ」


話しかけられた門番が謝罪をしながら亮二に向き合うと軽い口調で質問してきた。気楽な感じでの質問だが、目は笑っていない事に気付いた亮二は、少しだけ気を引き締めて訪問理由を告げるのだった。


◇□◇□◇□


「なるほどね。観光と美味しい物を食べにか。それだったら風薫る子羊亭に行くといい。あそこなら美味い飯が食べられるぞ。マッティアの実家でもあるしな」


「いやいや。揉めてるんだよね? 子供をそんな怖いところに案内しないでよ」


ジャンからマッティアの実家を薦められた事に亮二が口を尖らせながら抗議すると、笑いながらジャンは謝罪と共に話し始める。


「すまん。すまん。つい癖でな。本当に良い宿屋なんだよ。だから早く解決して欲しいと思ってるんだよ。本当にお願いします。俺達ではなにも出来ないので」


「ああ。任せとけ。ありがとう! 門番さん! わぁ楽しみだな!」


一瞬真顔になって口調も変わったジャンを見て亮二は一瞬驚いた顔をしたが、同じように真剣な顔になると軽く頷いた。二人の表情になにか言おうとしたマッティアだったが、それよりも早く気さくな門番と、街の観光を楽しみにしている子供の表情に戻っているだった。

さあ、定番トラブルの対応だ

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