337話 亮二の思いつき3 -改良は加速しますね-
テンプレ的にも宿屋の話は進みそうですね。
「よし! ここが片付いたら、お前の宿屋に行こう。俺がバッチリ解決してやるぜ!」
「いえ。大公であるリョージ様にそのような事をして頂くには……」
あまりにも自分の家族構成や抱えている問題を的中させた亮二にマッティアが恐れながら遠慮するのを遮ると、亮二はテンプレとしての持論を述べ始めた。
「だいたい、宿屋の経営方針の違いで揉めたんだろ。そして『俺の考えで出来るって事を証明してやる!』って感じで家出して、別の街で宿屋を開業したけど、実は借金した相手が悪くて利息が高くて返済が出来なくなってる。そんなところだろ? そして高利貸しは親の宿屋まで押し掛けてるんだよな?」
「その通りですが、リョージ様はどこかで私の家族を見ていたんですか? それとも身元調査が行われていたとか?」
亮二が一気に問題点を伝えると完全にその通りであり、自分の身元調査が行われたのかと身震いしながら尋ねると満面の笑みで亮二が返事をした。
「そんな訳ないじゃん! 俺の国ではよくある設定……じゃなかった、よくある話なんだよ。後は俺に任せておけ。宿屋の人材も手に入るし、近くの森の見回り隊も欲しかったんだよね」
亮二がすでに宿屋の人員や、周辺の治安維持部隊にめどを付けた事にマッティアは戦慄するのだった。
◇□◇□◇□
「まあ、取り敢えずは洞窟を完成させてからだな。マッティアが提案してくれた内容はすぐにでも対応しないとな」
「えっ? す、すぐに? 部屋に非常口を作るって事ですか? ……はっ?」
亮二が何気な動作で壁に手を当てると土属性魔法で壁を掘り始め、マッティアが我に返った時にはすべての作業が完了していた。
「取り敢えず、指摘を受けた非常脱出口は作ったぞ。火事の場合は熱で感知して、盗賊等に襲われた時は宿屋の判断で扉を開けるようにしたから、これで非常出口対応は大丈夫だろ」
口をパクパクとさせているマッティアを尻目に亮二は洞窟の改築を進めていくのだった。
◇□◇□◇□
亮二の改築作業は一時間ほどで終了し、小物以外の設置も終わっていた。
「これで、いつでも開業できるな」
爽やかに言い切った亮二とは対照的に、マッティアは常識が壊されたような悟りきった表情でブツブツと呟いていた。
「非常識って最初は唖然とするけど、慣れてくると乾いた笑いしか出てこないんだな」
「おい。独り言をいつまで言ってるんだよ。早く外も見てくれよ」
亮二に促されたマッティアが外に出ると、景色が一変している状態に理解が追いつけないまま固まってしまった。
「どう? 結構、いい感じに仕上がってるだろ?」
「そうですね。そうだと思いますよ。そうに決まってます。そうなんでしょうけど! そ、そ、そ、そ……」
「おいおい。さっきから『そう』を連呼してるぞ」
亮二が作り上げた洞窟前の状況をドヤ顔で聞いていた。マッティアは徐々に大きな声になりながら感想を伝えていたが、最後は上手く言葉が出てこないようだった。自分のそんな様子を楽しそうに見ている亮二にマッティアの中で何かが弾けた。
「そんな非常識をドヤ顔で言わないで下さい!」
「あぁ……。三〇点」
「なにが!?」
自分の叫んだ内容に点数を付けられたマッティアが端的に問い質すと、亮二から残念そうな顔で総評が返ってくる。
「取り敢えず、ツッコみを入れた事は評価するけど甘いよな。マルコだったら、ハリセン一閃の後に『なにをしてくれてるんだよ! こんな一気にするんじゃねえ!』くらいは言ってくれるぞ」
「マルコ様と一緒にしないで下さいよ。あの方は王にさえ諌言出来るもの凄い方ですよ。王侯貴族でさえ、マルコ様から言葉をもらうために行列が出来ると聞いています。近々、帝国からも貴族達がやって来ると噂になってますよ」
亮二からの評価を聞いたマッティアが両手をブンブンと振りながら、マルコの噂を熱心に語ってきた。亮二は首を傾げながらマッティアの言葉を反芻していたが、納得した表情で「結局はツッコミの話だな」と呟いて話を終わらすと、目の前の風景について説明を始める。
「まずは洞窟宿屋を中心にして道を整えたんだ。街道からも分かりやすいように標識を作ったし、道も整備してある。街道整備しているリカルドから人を借りて帝国側と王国側の街道も整備する予定だ」
「あ、あの……」
「それだけじゃないぞ! こっちには道具屋に食堂だろ。ギルドの出張所も造ったし、膨らみ草の加工場もここに作る予定だ」
「え、えっと……」
マッティアが言葉を挟もうとする度に、亮二が被せるように次々と説明を始めるので最後まで黙って一〇分ほど聞き続けるのだった。
◇□◇□◇□
「で、どうなんだよ。さっきから黙ったままで。感想は?」
「えっ? もう喋っていいですか? これほど大きな「街」を作って人はどうされるのですか?」
亮二が黙ったままのマッティアに問い掛けると、やっと喋れると安堵のため息を吐いて質問してきた。亮二は誰も居ない街を眺めてしばらく黙っていたが、ポンと手を打つと爽やかな笑みを浮かべてマッティアの肩を叩いた。
「マッティア君。汝を洞窟の街ホコラを取りまとめる長官に任命する!」
「えぇぇぇぇ!」
いきなりの丸投げされた事に仰天したマッティアの表情を見ながら、亮二は宿屋や各店舗の扉に魔法で鍵を掛けていくのだった。
街の面倒を見てくれる人がいて良かった。




