332話 新たなバタバタの始まり4 -マトモな謁見ってないですよね-
結局、イオルス神からもらったポーションが活躍しました
一時中断した謁見は、マルセル王がポーションを飲む事で復活し滞りなく進んでいた。マルセルから下された命令は、帝国と友好を築くために亮二はマデリーネと婚約する事。アンデルスは引き続き帝国に留まり、戦後の補償や人員についての話し合いをする事。ユーハンは治安維持を帝国の治安が安定するまで当面代行する事。その間の領地経営についてはマルコが行う事が決まった。
「ちなみにリョージ伯爵については大公に昇爵させる」
「へっ? 大公ってなに?」
マルセルからの宣言に理解が追いついていない亮二が問い掛けると、周りから驚愕した表情が返ってきた。マルセルは苦笑しながら近くにいた文官に向いて軽く頷くと、指名された文官が一歩前に出て説明を始める。
「まず大公についてですが、公爵より上の位となります。我が王国と帝国の姫を迎えて頂くには伯爵の地位では低すぎます。ですのでリョージ様には王国初の大公になって頂く事で、これらの問題を回避する事が決まりました」
「ああ。それと領地についてだが、帝国からも下賜される予定になっている。領地が飛び地になってしまうが気にする事はない。帝国側には代官が派遣されるから安心するが良い。ただ、リョージには少なくともエレナ様とマデリーネ姫との間には最低でも子供を一人作ってもらう必要がある」
「ちょっ! なに言ってるんですか!」
文官の説明を静かに聞いてたリョージだったがハーロルトから、ニヤニヤとした笑顔で補足されると真っ赤な顔になって叫ぶのだった。
◇□◇□◇□
「各国に帝国への援軍の話と、古龍を従えたドラゴンスレイヤーが生まれたことを通達。サンドストレム王国は今回の英雄に対し、最大限の褒賞をもって報いるとも付け足せ! そして王国全土に一ヶ月後にドラゴンスレイヤー誕生祭を行うことを布告せよ! この誕生祭は毎年行うものとする」
「はっ! 畏まりました。ちなみに教皇への連絡はいかがされますか?」
「当然連絡せよ! イオルス神からの祝福も貰うように通達せよ!」
威厳を取り戻したマルセルは王座から立ち上がると、列席していた全員に聞こえるように大声で宣言した。王の宣言を聞いた貴族達は頭を垂れ、文官達は王の命を実行するために慌ただしく各所に散って行こうとした。
「え、ええと。なにがどうなってるの?」
「リョージ様がそれだけ歴史的偉業を成されたとの事ですよ。それと大公への昇爵おめでとうございます。王の宣言通りに最低でも子供は一人は必要ですので頑張りましょうね。私的には五人は必要だと思っているんですが」
呆然と呟いていた亮二にエレナが満面の笑みで近付くと、腕を組みながら耳元で呟いた。亮二はさらに真っ赤な顔になりながら慌てて腕を振り払おうとしたが、全力を出しても抜け出せない事に驚愕しながらも諦め顔でエレナにだけ聞こえるように話した。
「お手柔らかにお願いするよ」
「はい。任せて下さい。愛しの旦那様」
亮二とエレナの仲睦まじくしている様子に、マルセル王を始めとする一同は安堵の表情を浮かべるのだった。
「では、これで謁見を終了とする! 後、リョージ伯爵は話があるので残るように。そうそうマルコも残ってくれ」
王座から一番遠くで控えていたマルコに声が掛かった。マルコは領主代行を命じられた事に衝撃を受けており「俺は貴族になりたくないから門番をしていたのに」と呟いていた。
眉に皺を寄せながら怨嗟の声を紡ぎ出しているマルコに、亮二が苦笑しながら近付くと肩に手を置いて含み笑いをしながら語りかける。
「よう。辺境伯代行。貴族になるために準備期間を与えられるなんて羨ましいよ。俺なんていきなり貴族だったから大変……痛ぃ! なんだよ! 先輩として助言を……痛ぃ!」
「助言なんて必要ねえよ! ユーハンに辺境伯は譲ったが、教育だけは同じようにされているんだよ! なんで非常識を全身に巡らせているお前さんに助言なんてされないといけないんだよ!」
笑いを含んだ顔で近付いてきた亮二にアイテムボックスからミスリルのハリセンを取り出して叩きつけると、周りの貴族達が羨ましそうにしている事に気付かずにマルコは叫んだ。
叩かれた亮二は頭を軽く押さえながらエレナに抱きつくと、泣きそうなフリをしながらマルコに叫び返した。
「ひどい! せっかく俺がミスリルのハリセンを作って、貴族達から信頼を得られる様にして、魔剣を作ってドラゴン討伐してドラゴンスレイヤーになって実績が出来て貴族になれるのに……痛ぃ! ちょっ……痛ぃ! いや、最後まで言わせ……痛ぃ! 痛いってば!」
「やっぱり最初から最後までお前のせいじゃねえか! 俺は貴族になりたくないんだよ! 門番として家族でユックリとしたかったんだよ!」
エレナを盾にしながら含み笑いをニヤリとした笑いに変えた事に気付いたマルコは、亮二にだけ当たるように手首で調整しながらハリセンを縦横無尽に振り抜きながら再び叫んだ。
「おぉ。あれが神から与えられたツッコミ技術か」「なぜ私にはツッコミがされないのですか?」「ツッコまれる順番とは何だったのか?」「マルコ! こっち! こっちにも来てくれないか!」
亮二とマルコの掛け合い漫才を羨ましそうに見ている貴族達と、手を止めて亮二を羨望の眼差しで見ている文官達に気付いたマルコは、半分キレながらミスリルのハリセンを振りかざして叫んだ。
「よし! お前等、いい根性をしているな! 順番に並べ! 全員にツッコミを入れてやる!」
マルコの宣言に謁見の間には歓声が響き渡り、マルセル王を始めとするツッコまれ順位を決めるための争奪戦が始まるのだった。
おぉ! マルコがついに開き直った!




