27話 試練の洞窟広間の攻防4 -やっと終わりましたね-
一騎打ちは萌えます。じゃなかった燃えます。
牛人と亮二が戦いを始めて5分が経過していた。一進一退の攻防が続いており、例え魔物側の数が残り3割を切ったとしても牛人が勝利すれば戦局がかなりマズイ事になるのは、誰の目にも明らかだった。亮二を除いて牛人に対抗できる人材はおらず、亮二と牛人が戦っているので巻き添えを食らうのを恐れた魔物が牛人の開けた正面から出てこない為に何とか防衛が出来ているからである。
- 結構、この牛人って魔物頑丈だな。大分とダメージを与えてるはずだけど。あちこちから出血してるし、動きも鈍くなってきてるのにな。インタフェースを起動できたら残りの体力が見れるかもしれないけど、激しい動きをしながらインタフェースは起動できないからな -
亮二が考え事をしながら牛人と戦えるのは牛人の動きが加速度的に悪くなっているのを肌で感じているからである。亮二はこの戦闘の中で色々な属性を切り替えて戦っていたが、牛人に対して一番効果があったのは他の魔物も嫌がっていた【雷】属性だった。斬られる度にその場所から痺れが襲ってくるので、牛人は亮二の持つ”ミスリルの剣”から逃げるような戦い方になっていた。このままではジリ貧になると感じた牛人は一気に勝負をかけようと、斧に【火】属性魔法を纏わせて切りかかってきた。牛人からの一撃を“ミスリルの剣”で受けると【火】と【雷】の属性同士がぶつかり合い、周りに火花をまき散らしながら幻想的な光景を映しだしていた。属性付与を行って横薙ぎの一撃から始まった牛人の攻撃を”ミスリルの剣”で受けた亮二は防戦一方になっているように見え、牛人が斧を振るう度に一歩づつ後退していく姿は焦った顔ではなかったが、自ら攻撃するタイミングが測れずに苦慮している様に見えた。
牛人優勢から始まった打ち合いは10合を過ぎた頃から牛人の表情が変わってきた。相変わらず攻撃は続けてはいるが、先ほどとは違って前に進めなくなっておりむしろ少しずつ後退を始めていた。今までの勢いをそのまま交代するかのように、少しずつ前進をしながら攻撃を続けていた亮二は今一歩決め手に欠けている事を感じ、今まで試した事のない【雷】属性の重ね掛けを行った。亮二が”ミスリルの剣”に【雷】属性の重ね掛けを始めると”ミスリルの剣”が今までより更に輝き始め、剣の周りに火花を散らす様になり、その余りの激しさに戦闘を見守っていた全員が亮二の持つ”ミスリルの剣”に釘付けになっていた。
「熱っ!なんか熱い!どうなってんのこれ?」
そう言いながら、もうこれ以上剣を持てないと言わんばかりの勢いで牛人に連続で斬りかかった。”ミスリルの剣”の一撃を斧で受ける度に牛人からは悲鳴がおこり、【火】属性を纏っていた斧も一撃を受ける事にその威力を弱め、最後は鳴りを潜めるかのように消え去っていった。
「本当に熱いんだってば!」
亮二は叫びながら上段から大きく剣を振り下ろした。牛人は斧で受け止めようとしたが【雷】属性を重ね掛けした”ミスリルの剣”は斧の柄部分を両断すると牛人の肩から腰までを抵抗感もなく切り裂いた。
「ぶもぉぉぉ」
牛人の叫びが空間に広がり、声が途絶えたと同時に力を失って倒れこんだ。亮二は牛人が死んだ事を確認すると上に乗り上がり「牛人を討ち取ったり!」と叫び声を上げた。牛人を倒した亮二が叫び声を上げたのを聞いたのか、魔物たちは今まで退却すること無く攻勢を続けていたのが嘘のように一斉に広間から逃げはじめ、駐屯軍の追撃に対しても反撃すること無く我先にと洞窟の奥に逃げ帰っていった。魔物達が広場から全て逃げ去り静まり返ったのを確認すると駐屯軍から勝鬨が響き渡るのだった。
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「やっと落ち着いたね。倒した魔物は片付けていっていいかな?」
「邪魔にもなるし血に誘われた魔物が来たり、アンデット化しても困るからアイテムボックスに入るだけ収めていってもらえるかい。溢れる分はこの場で焼いて処分しよう」
亮二の質問に部隊長はそう答えると部下に対して広間の奥への警戒、バリケードの撤去やけが人の救護の指示を行った。けが人に関してはカレナリエンの魔力が丸々残っている上に、ミスリルの腕輪に残された魔力も余裕が有るため全員が無傷の状態まで回復し、回復した兵士は続々と復旧作業に参加していった。
「それにしても、お前の実力は底無しだな。剣の実力だけならランク【B】は固いんじゃないか?」
「え?マジで!今すぐ”魔法戦士”になれる?」
「それは難しいですね。今のリョージさんのランクは【H】ですので、今回の活躍を加味しても2ランクアップとかは出来ませんよ」
マルコの褒め言葉に亮二は大喜びで返事したが、カレナリエンの冷静なツッコミにガックリと肩を落とした。
「それにしても、さっきのミノタウロスだけど」
「「みのたうろす」?牛人のことですか?」
「そう、その牛人だけど気になる点が有るんだよね」
「【火】の属性付与を斧に纏っていたことですか?」
亮二の深刻な声に、本来なら魔力を持たない牛人が【火】属性を纏わした事を気にしていると思ったカレナリエンが質問をすると「それは違う」と首を振って答えた。
「そんな事より、やっぱり牛だから断末魔は「ぶもぉぉぉ」だったのかな?」
周りに集まっていた者達は亮二が何を言っているのか一瞬理解出来ずに固まってしまったが、いち早く回復したマルコの叫びが広間に響き渡った。
「どうでもいいわ!」
駐屯軍の勝鬨より響き渡る声に亮二は「さすがマルコ、ナイス突っ込み!」と親指を立てて満面の笑みでマルコを称えるのだった。
決着がついた時の開放感は格別です。




