284話 帝国への援軍準備5 -そろそろ出発ですね-
やっと全軍が揃いました。
全軍が揃うまで作戦会議は続けられ、補給部隊の護衛については亮二ではなくユーハン伯爵とマルコが担当する事となった。亮二に対して嘲るような態度を取った貴族は、翌日に青い顔をしながら土下座をする勢いの謝罪をしてきた。
「ほ、本当に申し訳ありませんでした! ドリュグルの英雄のリョージ伯爵に対して、なにも分かっていないにもかかわらず、生意気な口を利いてしまいました。本来なら許されるべきではないとは思いますが、謝罪を受け取って頂いて今回の遠征で汚名を返上させるチャンスを頂ければ幸いです。それに補給の重要さについても理解できましたので、これからは疎かにする事もありませんので、ご安心ください」
「は、はい。大丈夫ですよ。それよりも、どうされたのですか? 昨日と態度が全然違うのですが?」
戸惑いながらも謝罪を受け入れた亮二だったが、貴族の態度があまりにも変わっている事を不思議に思いながら周りを見渡すと、目の合ったアンデルス王子を筆頭に貴族達が頷いていた。
「ひょっとして、なにかされました?」
「いや。なにもしていないよ。彼が自主的に補給の重要さを学びたいと申し込んできたので、リョージ伯爵を除いた貴族達と私が教師として勉強会を開催しただけだよ。そうだよね?」
「も、もちろんでございます! アンデルス王子自ら講師をして頂く名誉を賜り、恐悦至極に思っております。もちろん、他の方々にも熱い指導をして頂いた事に感謝の気持ちしか出てまいりません!」
亮二が少しジト目を入れて軽い感じでアンデルス王子に確認すると、涼しい顔で貴族達と勉強会をした事を伝えてきた。王子の視線を感じた貴族は、土下座をする勢いでの謝罪状態から完全な土下座体勢となって感謝の言葉を述べ始めた。
「ちょっと! なんでそんな完璧な土下座状態になってるの? アンデルス王子と皆さんは本当に彼に対してなにをしたんですか!」
亮二の叫びに一同は穏やかな笑みを浮かべながら、亮二に対して気にする必要は無いと伝えるのだった。
◇□◇□◇□
「諸君! この戦いはガムート帝国皇帝の不予に乗じた卑怯な第2王子に正義の鉄拳を下すものである! 我々には大義があり、そしてドリュグルの英雄であるリョージ伯爵が居る! 恐れるものはなにもない! 征くぞ! 正義の旗のもとに! 全軍出発! 」
「「「おぉ!」」」
アンデルス王子の掛け声を聞いた2000名以上の兵士達は大地が震えるような鬨の声を上げると、作戦会議で決まった順番に出発を始めた。先頭はアンデルス王子が務めており、最後尾はハーロルト公爵に使える騎士団長であった。
ちなみに、彼の顔には歴戦の勇士であることを証明するかのように大きな傷が付いており、それを見た亮二がテンション高く「頬に傷ってなんだよ! もう! テンプレ過ぎて!」と叫んで騎士団長にまとわりついていた為に、マルコにハリセンで叩かれていた。
「おい! アマンドゥス騎士団長にまとわりつくんじゃねぇ! 彼は歴戦の勇士なんだぞ! ハーロルト公爵領の治安を50年に渡って守り続けた武人に対する態度じゃないぞ!」
「はっはっはっ。構いませんぞ、マルコ殿。ドリュグルの英雄と呼ばれるリョージ伯爵に気に入って頂けるとは光栄ですな。それほど、この傷が気に入ったのならユックリと見てくだされ」
マルコにミスリルのハリセンで叩かれて呻いている亮二を見ながら、アマンドゥスは豪快に笑いながら亮二に近付くと子供を抱きかかえるようにしながら話し始めた。
「ちょっ! 子供扱いするなよ! それにしてもアマンドゥス騎士団長はデカイな。その持っている大剣も業物なんでしょ?」
「はっはっはっ! この大剣は業物ではありませんぞ。ですが、20年近く一緒にいる戦友ですからな。愛着も一入ですかな」
アマンドゥスは亮二を下ろして、背中に括りつけられている大剣を抜くと亮二に手渡した。歴戦の勇士と共に20年も歩んでいる大剣は年季を感じさせる風格を醸しだしていたが、亮二が鑑定で確認すると耐久力がかなり落ちているのが分かった。
「ねえ。アマンドゥス騎士団長の大剣だけど、耐久力がなくなりつつあって折れそうだけど大丈夫なの? 代わりの剣は準備してる?」
「なんですと! 相棒が折れようとしているとは。長らく付き合っていたので愛着が湧いていたんですがな。しかし、手持ちの大剣で使い勝手が良いのはこれだけでしたからな。代わりの剣は持って来ておりますが、しばらく慣れるまでは苦労しそうですな」
亮二から大剣の耐久性が落ちていると告げられたアマンドゥスは、返却された剣を見ながら嘆息を漏らしていた。その様子を眺めていた亮二はストレージから様々な鉱石を取り出すと、大剣を見ながらアマンドゥスに話し掛けた。
「最後尾の俺達が出発するのは1時間後だから、それまでアマンドゥス騎士団長の大剣を直していい?」
「ああ。構いませんぞ。たとえ折れても、それが大剣の寿命でしょうから思いっきりやってくだされ。それにドリュグルの英雄に直してもらったとなれば箔が付きますからな」
孫のワガママを聞いている祖父の様な態度で、亮二の提案を聞いたアマンドゥスは笑いながら大剣を預けると、隊列を確認するために街道に向かって歩いて行くのだった。
空き時間は有効に使わないとね。




