280話 帝国への援軍準備 -まずは話し合いますね-
ロジオンが持って来た親書で話が動き始めた。
突然のマルセル王からの召喚に戸惑いながら王都の謁見の間にやって来た亮二は、並み居る貴族達の前でマルセル王からロジオンが持って来た親書を手渡された。
「私が急に呼び出されたのは、この親書の為ですか?」
「ああ、その通りだ。ウチノ領の復興が進んでいる中、申し訳ないが緊急事態だ。どうやらガムート帝国にて内乱が発生しておる。そして第1王子から援軍の要請が来ておる。わざわざ第3王子を親善大使にしてまでな。そこでサンドストレム王国としては要望に応えるために、王家を主体とする諸侯連合軍として2000名を派遣する事を決定した。総司令官はアンデルスとする」
内容を確認した亮二の顔を見ながらマルセル王は厳かに頷き、ガムート帝国に兵を派遣する事を伝えた。亮二は息を飲みながら近くに居たマルコに近付くと小さな声で問い掛けた。
「アンデルスって誰? 痛ぃ! なにすんだよ。マルコ!」
「お前の質問は相変わらずズレてるな! なんで第1王子の名前を知らないんだよ! お前は伯爵になったんだぞ! 上級貴族でエレナ姫と仲良くしてるんだから兄弟の名前くらいは覚えとけよ!」
亮二からの問い掛けにマルコはアイテムボックスから流れるような動きでミスリルのハリセンを取り出して、全力で亮二の頭に振り下ろすと謁見の間に軽やかな音が響き渡った。
「おぉ。あれがドリュグルの英雄に対する最終ツッコミ兵器担当の力か」
「誰だ! 変な二つ名を言った奴は! 俺はリョージに対するツッコミ担当じゃねえって言ってるだろ! それに最終ツッコミ兵器ってなんだよ!」
誰かが呟くように言った言葉にマルコがツッコミを入れながら叫ぶと、周囲に居た貴族達から感動のどよめきが起こった。
「やはりマルコ殿のツッコミには切れがありますね」「ドリュグルの英雄と言えど、あのツッコミには為すすべもありませんな」「ユーハン伯のそばに置かずに、新たな爵位を与えて王都に屋敷を構えてもらった方がいいのでは?」「くっ! この前に会った時はツッコミなどしてくれなかったのに!」
周囲の貴族達の反応にマルコが戸惑いながら見渡していると、マルセル王が手を打ち鳴らし静寂を求めた。
「諸君、そこまでだ。マルコも困っておろう。ツッコミについては予約制になっておるから、しばらく待つが良い。リョージ、マルコ、ユーハンについては後ほど話があるので謁見の間に残れ」
「はっ! 畏まりました」
マルセル王が騒がしくなってきた貴族達を黙らせると、マルコからツッコミを受けたければ予約が必要である事を告げ、解散を命じるのだった。
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「いやいや。俺は王都に残りませんからね。ドリュグルに帰りますよ」
「えぇ! そんな! じゃあ、儂がせっかく『諸君、そこまでだ』と厳かに告げた意味は?」
援軍の詳細は後日に会議が開かれる事となり、一旦は解散となった。だがマルコとユーハン、亮二にハーロルトや枢機卿であるラルフは、謁見の間に残ってマルコを名誉子爵にして王都に滞在する話を行っていた。
「そうだぞ! マルコ! マルセル王が名誉子爵にと言って下さっていのに、無下に断るとは何事だよ! 第一、新たな二つ名が生まれたんだから、もっと嬉しそうな顔をしろよ。ドリュグルの英雄に対する最終ツッコミ兵器担当だっ…… 痛ぃ!」
「やっぱり諸悪の根源はお前だよ! ナターシャも子供達にミニハリセンを持たせて遊ばせてるし。お前達は俺をどうしたいんだよ! それとマルセル王にはツッコミませんからね! そこ! ツッコまれてるリョージを見て嬉しそうにしない!」
満面の笑みでテンション高く説得をはじめた亮二をミスリルのハリセンで全力で叩きながら、物欲しそうにしているマルセル王にツッコミを入れ、終始黙っていたラルフ枢機卿にもツッコミを入れた。
「ですが、マルコ殿。皆が羨ましそうにするのは、マルコ殿がミスリルのハリセンを使っているのが大きいのだと思われます。ここに集まっていたのは教皇派と言われている貴族達でした。そんな彼らからすれば、イオルス神が魂を込めたと言われているミスリルを使って作られた殺傷能力が無い武器ハリセン! まさに幸福の神であるイオルス神が持つに相応しい武器! きっと彼らはミスリルのハリセンでツッコまれたら、神からの祝福だと感じているのですよ。私は常々、神の武器としてはミスリルの剣ではなく、ミスリルのハリセンこそが相応しいと……痛ぃ! な、なにをされるのですか!」
「いや、余りにもな話なんで、思わずツッコんじまったよ。ミスリルのハリセンが神剣だったら、リョージはイオルス神に頼られてる者にならないじゃないですか」
ラルフ枢機卿の長台詞に思わずミスリルのハリセンでツッコンだマルコに対して、ラルフ枢機卿は途中で止められたのを恨めしそうに、ミスリルのハリセンで叩かれた事を嬉しそうにしながら抗議をするのだった。
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「イオルス神に頼られてる者の二つ名はマルコにやるよ。俺も大量に持ってる二つ名を譲ったら少しはスッキリするからな……痛ぃ! なにすんだよ! 今ならキノコを極めし者もプレゼン ……痛ぃ! 痛ぃ! ちょっと待って! ……痛ぃ! 最後まで言わせろよ!」
「うるせえ! 最後まで言わすわけ無いだろ! そもそも、二つ名は他人に渡すもんじゃねえよ! 周りの人間が名付けたんだから、貰った本人が他人に譲るって言っても駄目なんだよ! それに自分が持ちたくないからって二つ名を俺に押し付けるのは止めろ!」
マルコの連続ツッコミに頭を押さえながら逃げ始めた亮二を見ながら、マルセル王とハーロルトにユーハンは苦笑を浮かべ、ラルフ枢機卿は指を咥えて羨ましそうに亮二を見ているのだった。
あれ? なんの話をしてたんだっけ?




