134話 ダンジョンに潜る前の下準備 -準備を始めますね-
エリーザベトさんはいつの間にか教室に戻ってました。
「大丈夫?エリーザベトさん?」
「うるさいですわ!放っといて下さい!どうせ『注意力が足りないエリーザベトさん』って思ってるんでしょ!」
無事に買い物が終わった亮二達が教室に戻って来ると、どこかに走って行ったはずのエリーザベトが机に突っ伏していた。亮二が恐る恐る声を掛けたがエリーザベトからは完全に拗ねた声しか返ってこず、途方に暮れた亮二はオルランドを見ると「何とかして!」とフォローを頼む視線を向けた。オルランドは苦笑いしながらエリーザベトに近付くとゆっくりと話しかけた。
「エリーザベトさん。なんでそんなに落ち込んでるの?君は一つ一つ吟味しながら最高の物を探したけど、リョージ君は特売品を買っただけじゃないか。それに君が『勝負をする事でお互いに確認し合い、足りないものが有れば勉強になるではないですか!』と言ったんだよ。これで君には注意力が無い事が分かったのは大きな収穫じゃないの?」
「オルランドさん、思いっきり言い募ってくれましたね。でも仰りたい事は分かりました、私から言い出したんですものね。リョージさん、先ほどは失礼しました」
オルランドの言葉に突っ伏していたエリーザベトは頬を膨らましながら顔を上げた。その状態からオルランドを一瞬だけ軽く睨みつけた後に、軽く微笑みながら溜息を吐くと、亮二と視線を合わせて「申し訳ありませんでした」と頭を下げるのだった。
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「それにしてもオルランドは凄いよね。あのエリーザベトさんに意見を言って立ち直らせたんだから」
「『何とかして!』って確かに俺も言ったけど、まさか本当に何とかしてくれるとは思わなかったよ」
授業が終わった一同は屋台街を訪れており、串焼きを頬張りながらマイシカは今日の授業の事を思い出し感心していた。亮二もパンの様なカステラのようなお菓子を口にしながら相槌を打つと今日の出来事を思い出していた。
ダンジョンに潜る準備として用意した道具たちは必要最低限の物であり、当日はシャルロッタが言っていた”時間玉”の限界ギリギリの6時間も潜っていられないだろう事が想像出来た。どう考えても様子見として2時間程度のアタックになりそうである。亮二としては当日でクリアを目指したいところだが、ルシア、マテオ、マイシカ、ロサの5人となると、どこまで行けるかが未知数であり、全員の実力を確認したいところであった。
「ねえ、明日の授業って何だったけ?」
「明日は"属性魔法の種類について"だったはずだよ。リョージ君は全属性が使えるから見本を見せる事になるんじゃないかな?でも何で授業の事を急に聞いてきたの?」
亮二の質問にマイシカが答えたが、さっきまで屋台街で買った食べ物の話をしていたのに急に授業の話をしだした事を不思議に思い聞き返してきた。
「近々ダンジョンに潜るだろ?いくら"初級探索者ダンジョン"とはいえ、魔物は間違いなく出るからね。皆の動きを知っとくのはリーダーとして必要だと思ったんだ。だから学院が終わったら皆の実力を知るのと連携の仕方を覚えてもらおうと思うんだけどどうかな?ロサは冒険者をしてたから俺の言ってる意味は分かるよね?」
「そうだね。私は冒険者をしてたからリョージ君の言っている大事さはよく分かるわ。ランクの低い魔物だと油断して死んでしまった高ランク冒険者の話はギルドでよく聞かされたものよ。でも皆の実力を調べたり連携を練習するってどこでするの?」
マイシカから逆に質問された亮二はダンジョンに探索者として初めて挑戦する3人に対しての技量に不安がある事を告げるとロサも同意した。そのロサから「どこで練習するのか?」と聞かれた亮二は嬉しそうな顔をすると「いい所があるんだ」と告げるのだった。
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「ここが昨日言っていた"いい所"なの?ちょっと前に来た場所じゃない!」
ルシアが到着して最初に叫んだのは当然だと言わんばかりにマテオも力強く頷いていた。一同が到着したのは馬車に乗って40分程の郊外であり、先日亮二が屋敷を購入する際に見て回った物件の1つだった。亮二は嬉しそうに一同を屋敷に案内すると中には入れずに裏手に回りながら説明を始めた。
「そうなんだよ、ルシア。ここはあの時に1時間半も歩いてやって来て説明を受けた物件なんだけど結局購入したんだよ。実は面倒を見る約束をした人達が居てさ、その人達が共同で利用する予定なんだ。部屋数も10個有るし丁度いいんだよね。一緒に裏手の廃屋も購入してるんだけど、ここに俺が欲しい物を作ってもらう為に廃屋を潰してある程度大きい小屋、大きい小屋ってのも変だけど、建てる必要があるんだよ。だから潰す作業が必要だから魔法を使って潰しても問題ないし、むしろ壊すのを手伝ってくれたら報酬を支払うけど、どうかな?」
「報酬!どのくらいくれるの?あっ!でも私とマテオとマイシカは魔法使えないけど?」
亮二の説明を聞いた後の提案に「報酬?」と一瞬顔を輝かせたルシアだが、まだ魔法が使えない事を思い出して眉を寄せたルシアに亮二は自信たっぷりに「俺に任せれば大丈夫!」と胸を叩くのだった。
魔力と属性が有るなら魔法を使うなんてすぐだよ!




