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間話7:元悪役令嬢、一躍人気者に!?

「へえ、そんなことがあったんだ」


 そう言って小桜さんが笑っていらっしゃいます。

 彼女のお家にお見舞いへやって来たわたくしたちは、小桜さんが階段から転落してからの出来事を全てお話ししましたの。よほどそれが面白かったのかして、先ほどから彼女、ずっと吹き出しまくりですわ。


「楽しんでいただけたようで何よりですわ。……それより小桜さん、捻挫の具合はどうですの? かなりひどいとお聞きしましたが」


「いや、別に大したことないよ。ちょっと足をゴキッとやっただけ。一週間もすれば治るから心配ないよ」


 そう言われて、わたくしもアマンダさんもホッと胸を撫で下ろしましたわ。

 志水さんは「希歩が減ったらその間、あたしたちだけで戦うの?」と少しばかり不安げでしたが、戦隊のことならわたくしたち三人でもおそらくは問題ないと思いますわ。とりあえず小桜さんには安静にしていただかないといけませんもの。

 ともかく、


「今回はわたくしのために起きてしまった出来事。お詫びはきちんといたしますわ。ざっと百万円くらいでいかがでしょう?」


 きちんとお詫びはしませんと。そう思い、賠償金のことを口にしたのですけれど、なぜか小桜さんにはむしろ戸惑った様子をされてしまいました。


「……えっ!? いいよ。私、大丈夫だから! 全然平気だし」


「でも、何もお詫びをしないということになったら困りますわ。だってわたくしは――」


 わたくしの言葉を制したのは意外にも志水さんでしたわ。


「そもそもあんたのせいじゃないし、別にそこまで気負う必要もないと思うわ。……っ、べ、別に、あんたを見直したからとかじゃないんだからね! ただ希歩があんたの好意を押し付けられたら困るだろうと思っただけだし!」


「そうですよ、悪いのはあの女子たちなんですから〜」


 まあ、皆さんがそうおっしゃるなら、別によろしいのですけれど。なんだか非常に申し訳ないですわ……。

 そんなこんなでわたくしたちは、小桜さんの早期回復を祈りつつ、彼女の家を後にしたのでしたわ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そしてその翌日のこと。


 いつものようにSR学園の教室へ足を踏み入れたわたくしは、とんでもない光景を目にしましたの。


「「「「「梓様、今まで申し訳ありませんでした!!」」」」」


 そこにはなんと何人もの生徒が起立して並び、わたくしへと頭を下げていたのです。

 一体これはどういうことでしょう? さっぱりわけがわからないわたくしでしたが、すぐに、どうやら今までの嫌がらせ――もといいじめについての謝罪会であることが判明いたしました。


「今までひどいことしてすみませんでした!」

「侮ってました!」

「弟子入りさせてください!」

「私も!」「アタシも」「わたしもお願いします!」


 たくさんの女子生徒に囲まれてしまったわたくしは困惑する他ありません。

 昨日のあの決闘を見ていた生徒は実はかなりの数だったらしく、わたくしのあまりの強さに圧倒され、こうして降伏を示したようですわ。むしろ今までと逆で尊敬の眼差しを向けられてしまっている気がするのですけれど……長い物には巻かれろ的思想かしら?


 どう反応していいかわからないわたくしをよそに、その後も次々謝罪してくる生徒が現れ、ついにはいじめを見て見ぬ振りしていた教師までもが頭を下げてくる始末。

 金と財力だけでなく実力があることを示したせいで、こんなにも反応が変わるとは。驚きすぎて声も出ませんわ……。


 SR学園の『悪役令嬢』だったわたくしは、たった一日で一躍人気者になってしまったようでした。

 それはきっと喜ばしいことなのでしょうけれど、たくさんの人に囲まれてしまって困りっぱなしです。小桜さんはよくこんな重圧に耐えられますわねぇ、と改めて尊敬してしまいますわ。

 早速取り巻きのような方々もできてしまいました。さて、これからどうやって学園生活を送っていけばいいのやら、ですわ。


「良かったじゃないですか、アズサ〜。キホが帰って来たら自慢しなきゃですね!」


 呑気に笑うアマンダさんを横目にため息を吐きつつ、わたくしは、一刻でも早く小桜さんがこの学園へ戻ってくることを祈るばかりでした。

 これで間話は終わり。次から最終章の第三章となります!

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― 新着の感想 ―
[一言] コイツぁいちいち変身する時撒くのが大変だぞ(^▽^;)
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