間話1:SR学園の『悪役令嬢』
更新再開します! しばらくは一日一話になりますがご了承を。
毎日テレビや新聞を賑わせている『謎の戦隊』の一人という顔を持ち、記者やら警官から引っ張りだこ――ちっとも嬉しくありませんが――なわたくしですけれど。
SR学園に通い、一人の生徒として生きる本来のわたくし、つまり財前梓はあまり人気がございません。むしろ、嫌われておりますの。
長期休暇が終わり教室に入ると、いつもの如く悪口が飛んで来ましたわ。
「うっわー、今日も香水きっつ」
「あの目つき見て見て。人殺しそうだよねぇ」
「悪役令嬢のお出ましだぁ」
ひそひそ声で、それでいてわたくしに聞こえるように言っているのですから性質が悪いですわ。
優秀な少女しか入学できないこの学園ですが、そんな場であっても人間とはどこまでも醜いものです。下品な者ばかりで呆れますわ。
わたくしは後ろ指を差してくる彼女らをまるでいないかのように無視し、静かに自分の席へ着きました。
そうしてまた授業が始まり、陰口を叩かれつつ学校生活が続いていく。
新学期であろうと変わらないそんな毎日をわたくしは受け入れますし、気にしないつもりでしたの。しかしそれを良しとしない人物が現れたのですわ――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「絶対おかしいです! なんでアズサが嫌われてるんですか? アズサ、何も悪いことしてないのに」
昼食中、突然アマンダさんがわたくしの前に駆け込んで来ました。危うく食事がひっくり返るところでしたわ。
頬を膨らませ、明らかに不満げなアマンダさん。わたくしは少々驚きつつも尋ねました。
「もしかしてアマンダさんはわたくしの悪い噂でも聞きつけたのかしら?」
「そうですっ。『あの子とは付き合わない方がいいよ』って、たくさんの女の子たちに囲まれました。もちろんワタシは笑顔でスルーしましたけど、アズサを悪女って呼ぶだなんて許せないです!」
唾を飛ばしそうな勢いで騒ぐ金髪美少女を見て、わたくしは頭を抱えたくなりました。
そうなのです。わたくしと少し仲良くなろうとすれば別の女生徒――それも大人数に詰め寄られ縁を切ることを迫られ、泣いて逃げ出す方がほとんど。そういうわけで今まで友人がゼロなのですわ。
「わたくしとアマンダさんたちが合宿をしたのは、小桜さんあたりから早速皆に知れ渡ってしまっているでしょうから、面倒な輩がそうやってくだらないことを始めたのでしょう。気にすることはありませんわ」
そう言ってわたくしはアマンダさんを宥めようとしたのですが……。
「どうしてアズサが悪い子って言われてるのか教えてください! そしたらワタシが、アズサをこの学園で大人気のスターにしてあげます!」
などと張り切っておっしゃいましたの。
なんだか、また厄介事が始まりそうな予感がぷんぷんしますが気のせいでしょうか? そんな風に思いながら思わずはぁとため息を漏らしたのでありました。




