21:志水詩央里は強がりなので
「志水さん?」
緑色の女性の隣に寄り添う彼女を見て、わたくしは首を傾げる他ありませんでしたわ。
探していたところでしたから、無事を確認できたのは何よりなのですが……どうして正体不明ないかにも怪しい人物の傍にいらっしゃるのでしょう。
「やっと来たのね。あんたたち遅いのよ。特にあんた。あんた、リーダーならとっとと来なさいよね! ほんっとボンクラすぎて見てらんないわ!」
しかも、再会した途端にこのような言葉を投げかけられては、どう答えていいものかわかりかねますわ。
しばらく黙っておりますと、志水さんは不満げに鼻を鳴らし、
「あんたたちが遅いからちょっと手こずってたの。そこへ、この人たちが手を貸してくれたってわけ。あんたの百倍、いや千倍は頼りになったわ」
「して、その女性は?」
志水さんは色々と説明不足すぎますわ。いちいち質問させないでくださいまし。
代わりに答えたのは緑ビキニの女性の方でした。
「ボクはグリーン。ちょっと理由があって怪物と戦っていてね。キミたちと同類だよ」
……つまり、彼女も戦隊ということ?
状況をまとめると、志水さんが勝手に、わたくしたちを呼びつけることもなく無謀にも一人で敵を倒そうとし失敗して、他の戦隊に助けられたということで間違いなさそうですわね。
また厄介なことが始まりそうですわ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「グリーンさん初めまして! 私、乙女戦隊【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】のピンクだよ」
「こんにちは。ワタシ、ブルーっていいます。他にもヒーローの方がいたなんて、すっごーい!」
困惑するわたくしとは違い、二人はすぐにグリーンさんと打ち解けてしまいました。
少しも警戒しないなんて不用心にもほどがありますわ。もしも敵が仕掛けて来た刺客だったら一体どうするつもりなのでしょう。
わたくしは警戒を怠らないようにしておきましょう。
「志水さん……いいえイエロー、無事で何よりでしたわ。無事に怪物を倒したのであればわたくしたちは引き上げましょう。そろそろ野次馬が押し寄せる頃ですわ」
そう言って、わたくしがイエローの手を取ろうとした時のことです。
彼女がわたくしの手をパァンと叩いたのは。
「あんたなんかの指示には従ってあげないんだから! あたし、今日から【パンチング・ヒロインズ】の仲間になるの!」
ぷいと背を背けるイエロー。
わたくしは何を言われ、何をされたかを理解したのち、思わず笑ってしまいました。
以前から扱いづらいとは思っておりましたが、まさか仲間割れを堂々とやらかすとは考えてもいませんでしたわ。しかも、自分も選ばれし乙女の一人なのだと名乗る、出会ったばかりの相手の前で。
「な、何よ!」
「妙な強がりはおやめなさいな。あなた、自分が役立たずと思われていることが気に入らないのでしょう? わたくしを出し抜きたかったのに逆に失敗して、もう戻りたくない……そんなところではなくて? ふふっ。面白い人」
「偉そうに! 何なのよ一体!?」
露骨に激昂したイエローを前にしても、わたくしは笑いが止まりません。
実はわたくし、先ほどアマンダさんから聞いておりましたの。「シオリってプライド高い系ですから、さっき野次馬を押しつけられたこと怒ってますよ〜」と。本当にその通りでしたわね。
とうとう泣き出してしまいそうになる彼女を、ブルーが宥めにかかります。
グリーンとピンクはその様子を楽しげに見ていらっしゃいますわ。
ふふふ、志水さんったら強がりの子供みたいで可愛らしいですわねぇ。




