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第51話 精霊の協力


ひとまずギルドで出来ることを確認すると、やはり依頼として貼り出したり冒険者の人達への声掛けは出来るけれど、ギルドとして出来るのはそこまでのようだった。


依頼として情報を集めて貰ったりする事も出来るが、それも引き受けてくれる冒険者が現れなかったら意味がない…


「この場合、依頼書とはどんな感じで貼り出されるのですか?」


「通常の依頼と一緒です。依頼内容と推奨ランク、後は達成時の料金などですが…」


…いや、通常の依頼と同じ書き方では、あまり緊急性などが伝わらない気がする。


依頼内容部分に“探し人”と書かれていたとしても沢山ある他の依頼書に紛れてしまうし、たとえ目に入っても探しているのがどんな人物かを書いていないのでは、たとえ目撃していたとしてもその情報と合致する事は難しそうだ。


「一緒に似顔絵や特徴などを書いて貼り出したりはしないのですか…?」


「…似顔絵、ですか?」


あちらの世界では行方不明の人が出ると年齢、名前、身長、髪型、体型から行方不明時の場所や服装などまで出来る限りの情報は広く提示される。


同じように似顔絵と共に色々な情報を書き込むのが良いのではないかと思う。


そうすれば少しでも多くの情報が集まるのではないだろうか。


少し手間はかかるかも知れないけどそれくらいの手間や金額ならお婆さんにも支払えると思うし…


「…依頼書とは違う目立つ形のポスター…えっと、貼り紙で、そこにわかりやい似顔絵や特徴、行方不明になった日時や服装などの必要な情報を書き込むとか…

そうすればそれを見た人は心当たりのある人が居れば教えてくれるかもしれないし、見た人は依頼を受けるかは別で、なんとなく心当たりを考えてくれたりしますよね…。

…あとは、その貼り紙を出来ればギルドだけでなく少しでも多くの人に見てもらえるように色々な場所に貼らせて貰って…情報提供先をギルドにお願いして、真偽を確かめて貰うのと…あとは…」


「「…」」


思い付くままに出来ることを話していたら、いつの間にか辺りが静かなことに気がつく。


「…あんた、…いや、お嬢ちゃん…」


何やらさっきまで泣きそうな顔をしていたマールお婆さんもポカーンとした顔をしていたけれど、内容が浸透するに連れて絶望感を浮かべた表情に少しだけ希望のような物が混ざったように見えた。


「…マールお婆さん、お孫さんの最後に通ったと思う通りのお店の人たちにも聞いてみましょう…その時は思い付かなくても後で思い出すこともあると思います」


「…あ、ああ、そうだね!…わたしゃ一体何をやっていたのか…」


「…おい、婆さん。俺は大して役に立たないかも知れないが、知り合いに絵が得意な奴がいる。良かったら紹介してやるよ」


「お、俺、紙屋と印刷屋知ってるから…」


「ワタシも良ければその似顔絵とやらを馴染みの店に貼ってくれるように頼む事くらいなら手伝うよ」


周りに居た人達もお婆さんの事を同情した気持ちで見ていたのだろう。


自分達でも簡単に手伝えそうな事があると感じて声を掛ける人が現れ始めた。


「…では、コチラでは似顔絵の入った貼り紙作成の依頼をお受け致します」


ギルド員も何処かホッとした様子でお婆さんからの依頼の手続きを進め始める。


「…ありがとう、お嬢ちゃん。…あんたのお陰でうだうだと泣きついてる場合じゃないって気が付いたよ。

…ワタシにだって出来る事はあるからね。皆さんもすまないね…助けて貰えると本当にありがたいよ」


まだ、涙が浮かぶ眼差しで私と周りに頭を下げるお婆さんの姿は私にも周りの人達も少しだけ希望が湧き上がる。


「じゃ、俺はちょっくら知り合いに声でも掛けに行ってやるよ」


そう言って絵の上手い知り合いが居ると言った男はギルドから急足で去っていく。


「私も何か手掛かりがないか探してみますね」


私もお婆さんへとそう声をかけてギルドから外へと出た。




『主様、どうしたのですか?』


ギルドから出た私が俯きかげんでトボトボと歩いていることに気が付き、ベルが声をかけてくる。


「…お婆さんは少し元気になったけど、お孫さんが行方不明のままなことに変わりはないんだよね…」


もし、何かあったのなら一刻も早く見つけなければいけない状況なのは変わっていない。


出来るだけ早めに沢山の情報を集めることが出来たら良いのだろうけど…


私には知り合いもあまりいないし…


…知り合い…


……いや、精霊なら…いる。


ふとベル達へと視線を上げる。



「ねぇ、ベル。精霊達に協力を頼んでも良いかな……」


『…!!』


こんな都合のいい時だけ頼って申し訳ないと思いつつ、ついベルへ問いを投げかける。


私からの質問に驚いた様子を見せるベルに言葉を続けた。


「お婆さんの孫探しを…精霊達に一緒に手伝って貰ったりとか…できるかな…?」


少し躊躇いながら問いかけた私は対し、ベルは何故か嬉しそうな様子でふわふわと舞い上がる。


『…お、お任せください、主様!!!』


嬉しそうに返事をするとそのまま空までふわふわと舞い上がったベルは大きく声を掛け始めた。


『主様が協力をお望みでーす!!みんな集まれー!!』


『ヌシサマ、ヨンデル』


『…ヨバレタ』


『…ヌシサマ』


『…ヨンデル』


ベルの呼びかけと共にピカピカピカピカといつも周りを飛んでいた子達も一斉に空へと飛び上がった。


「……え」



空へと上がった小さい精霊達も光を更に強くして信号のようにピカピカと点滅を繰り返し始めている。



『主様のために働けるよー!!集まれー!!』


ベルの呼びかけに何処から光達が集まり始めた。


建物の影や木の影、花の影…まるで蛍のように光が浮かび上がると空へと上がる。


それはこの場所からどんどんと外へ外へと広がっていくように見えた。


そして、どんどんと光が空へと集まり出している。


集まり出している…


集まり…




「…え、あれ何」


「なんか、空が光ってない…?」


「ままーあれ、なにー?」


ざわざわと人々の騒めきが広がり始める。


舞い上がったベルにポツンと残された私は騒めく人々の隙間から空を見上げて顔色を失っていた。



あ、あの、ベルさん、空が光の大群で埋まっているんですけど……


しかも、空の光が一般の方々にも見えているようなんですけど…


ちょっと…やり過ぎではないでしょうか……?





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― 新着の感想 ―
いつの間にか更新再開してた。再開感謝です。
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