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229 原因究明

投稿が遅れて申し訳ありませんでした。

 村を元通りに再生したルシファーは……


 襲撃された村を元に戻したものの、ミカエルの力をもってしても助けられなかった死者が出たのも事実。誇り高き魔族がこのような体たらくな様を見せるとは、大魔王として忸怩たる思いが募ってまいる。


 村人の死者は丁寧に弔い、賊共はひとまとめにしてヘルファイアーで灰に変えて、ひとまずは村全体が落ち着きを取り戻すと、我らは馬車に乗り込んで出発する。


 このような辺境の村さえも賊に襲われるような荒廃した秩序なき状態であるのは、そもそも川の水に毒が混ざって作物がまともに育たないことが、最も大きな原因。


 ならば、我がその原因を取り除くのみ!


 こうして我らが乗る馬車は、川を遡るようにして整備もされてない荒れた道を進んでいくのであった。





 ルシファーを引っ込めた美鈴は……


 馬車の車内から川沿いに見える景色を眺めているけど、通りかかるどこの村々も疲弊した様子が窺えて来るわね。人族だろうが魔族だろうが、食べていけなくなると人々の心まで荒廃してくるのは、当たり前の話よね。


 地球でも第1次世界大戦後のドイツで、戦後賠償や生産設備の喪失によってかつて経験しなかったハイパーインフレと不況に見舞われたわ。その結果として、ナチスの台頭を招いたのが、誰でも知っている歴史よね。


 でも、実はドイツだけの話ではないのよ。日本でも第1次大戦後、10年以上に渡る長期の不況が続いて、その結果対米開戦につながる道を歩んでいった不幸な歴史があるわ。


 だからこそ為政者は、民の平穏な生活のために最低限の空腹を満たす食料を用意しなければならないのよ。それはかつて私が異世界の魔族の王として、最も心を砕いた点ね。何はなくとも、食べ物だけは確保しないと、国は荒れる一方だから。


 とはいえ、アデンや村長の話では、この国の魔王は数年前に没して、いまだに後継者が決まっていないと聞いているわ。国難にあたって陣頭指揮を執らなければならない国家の大黒柱が不在とは…… 弱り目に祟り目とは、まさにこのような事態を指すのでしょうね。


 私がなにを差し置いてもしなくてはならないのは、川を汚染する毒の原因を取り除くことよ。他の出来事を放置してでも、まずは川を遡って毒が流れ込んでいる箇所を確認することね。


 道はますます細くなって、馬車が通るのは困難になってくるわね。仕方がないから、馬を外して馬車はさくらちゃんがアイテムボックスにしまうわ。



「アデン君は、道案内だからね! 後ろに乗っていいよ!」


「馬に乗るなんて、初めてだよ」


 騎乗するさくらちゃんの手を借りて、アデンは馬に乗っているわね。馬の背中は想像よりも高い位置にあるからから、怖がってさくらちゃんにしがみ付いているみたいよ。私たちに出会った時は気丈に振る舞っていたけど、年齢相応の子供の部分を残しているのね。



「さくらちゃん! 私も乗りたいです!」


「明日香ちゃんは、体重を減らすために歩いていくんだよ!」


 楽をしたい明日香ちゃんが甘えようとしても、さくらちゃんは許可しないわね。明日香ちゃん! 諦めて自分の足で歩くのよ。それに、明日香ちゃんまで背中に乗せる馬が気の毒ですからね。ほら、明日香ちゃんが乗らないでホッとした馬が、嬉しそうに嘶いているじゃないの。





 徒歩で進むようになって、私たちのスピードはグッと落ちてしまったわ。それでも、道なのかどうか怪しい登り坂を、自分の足で進むしかないわね。


 そうそう、言い忘れていたけど、船で大陸の南に向かう途中で、いつの間にか赤道を越えていたのよ。いま私たちがいるのは、この大陸の南半球ね。太陽が北の空に輝いているわ。


 さらに説明を加えておくと、ヘブロン王国には大きな5つの川があって、そのうちの3つは西の海岸から海に流れ込んで、残りの2つは東の海岸に流れていくそうよ。


 私たちが辿っているのは、そのうちの1つの川の主流よ。この国を流れる川は、国土の北側に帯状に連なっている高山帯から流れ出す雪解け水を源流としているの。そのうちの、西側に流れる3つの河川が毒に汚染されており、東側の2つの河川は無事らしいの。

 

 全ての川が汚染されていないという事実は、不幸中の幸いね。収穫量は大幅に減ってはいるけど、主食の小麦や野菜等はそちらの地域では生産されているらしくて……


 でも地球とは違って大量輸送手段がないこの国では、国内のすべての地域に流通させることは難しいでしょうね。保存が利く食料を1週間掛けて馬車で隣街まで運ぶのが精々よ。


 降水量が少ない乾燥したこの国では、川に沿って街や村が出来上がっているの。つまり、川こそがこの国の人々の生命線となっているわ。河口の辺りでは川に舟を浮かべて、流通手段に用いている場合もあるそうだけど、それはごく数少ないケースでしょうね。




 野営しながら歩くこと3週間、少しずつ標高が高くなって、徐々に気温が下がったきたわ。平地の気候は初夏のような暑さだったけど、ひんやりした高原のような気温ね。あまり寒くなってくるようだと、しっかりと防寒対策をしないと、風邪を引きそうね。


 さらに3日間歩き通しで川を遡ると、私たちの目の前に大きな湖が現れたわ。アリシアが空から偵察した話によると、この湖から3つの川が流れだしているそうなの。つまりこの湖自体がすでに毒で汚染されているということね。これだけの量の水を全部除染するのは、相当な困難を伴いそうよ。


 この湖に流れ込む川は1つだけなので、船を出して湖を突っ切ってさらにその川を遡れるだけ船で進んでいくわ。やがて、岩がゴツゴツと突き出して、これ以上は無理な箇所まで船で進んでから、河原に乗り上げて、再び歩きだす。



「また歩くんですかぁ!」


「明日香ちゃんは、放っておくとすぐに怠けるから、このくらい歩くのがちょうどいいんだよ!」


 不満タラタラの様子の明日香ちゃんが、さくらちゃんから喝を入れられているわね。明日香ちゃん! この一歩一歩があなたのダイエットに繋がるんですから、しっかり自分の足で歩くのよ!


 さらに1週間、川を遡っていくわ、この辺から川の流れが急流となって、ようやく源流に近付いてきた実感が湧いてくるわね。それとともに、妙な異変を感じてくるわ。



「少しづつ魔力が濃くなっていないかしら?」


「俺は何もしていないぞ!」


 聡史君が何かしたわけじゃないのよ! 周辺の魔力が徐々に濃度を増している気がするのよ。私だけじゃなくて、アリシアやさくらちゃんも異変を感じ取っているわ。さくらちゃんのお父さんなんか、息苦しそうにしているわね。



「兄ちゃん! この雰囲気は見覚えがあるんだよ! ほら、ドワーフと一緒に鉱石を取りに行った時と似ているんだよ!」


「ああ、そういえばそんなこともあったな。あの時は、地面に魔力を噴き出す穴が穿たれていて、周辺を濃厚な魔力が包んでいたんだっけ」


 さくらちゃんが主張しているのは、かつての異世界であったお話ね。私はその場にいなかったんだけど、兄妹二人だけで行動していた時の冒険譚よ。確か、その魔力が噴き出す穴を巡って、山の主であったベヒモスとヒュドラが争っている所に出くわしたのよね。


 もちろんベヒモスとヒュドラは、兄妹にオイシく討伐されたそうよ。お気の毒様よね。よりによって聡史君とさくらちゃんのコンビに出会ってしまって…… 特にさくらちゃんなんか、大喜びで討伐に乗り出しそうよね。そんな大物を、見逃すはずないもの!



「あの時は、周辺の魔物が変異して強力になっていたからね! これは面白いことになってきたんだよ!」


 さくらちゃんが腕捲りして張り切っているわね。それよりも先に、注意すべきことがあるでしょうに。



「警戒を厳重にしてくれ! さくらは馬から降りて、先頭を進むんだ! 馬の手綱は、親父が牽いてもらいたい」


「聡史、父さんにも戦わせてくれよ!」


「おミソは黙っているんだよぉぉ! さくらちゃんが全部仕留めるから、経験値だけもらっていればいいんだよ!」


 お父さんの主張は、さくらちゃんに一蹴されているわね。冒険者登録して以来、事有るごとに魔物の討伐を希望しても、手強い相手には手出しを禁止されているのよねぇ。聡史君とさくらちゃんの態度は過保護のようにも感じるけど、お父さんの安全を考えれば止むを得ないわね。


 こうして、さくらちゃんを先頭にして、その後にアリシアが続き、私が右でカレンが左を固めて、中心には馬2頭と手綱を引くお父さん。馬の背中にはアデンと明日香ちゃんが乗って、最後尾を聡史君が固める体制で進んでいくわ。



「歩かないで楽だと思ったら、お尻は痛くなってくるし、太ももはパンパンだし、全然楽じゃないです!」


「ずっと馬に乗りたがっていたんだから、文句を言うんじゃないんだよ! 乗馬ダイエットだと思って、乗り続けるんだよ!」


 進み出した直後に、明日香ちゃんが泣きごとを零しているけど、さくらちゃんは全く取り合うつもりはないみたいね。それにしても、『乗馬ダイエット』って…… 明日香ちゃん頑張って!


 さくらちゃんの予想通り魔力の濃度が濃くなるにつれて、次々に魔物が姿を現すようになってくるわね。それも大量の魔力を体に取り込んだ変異種が大半で、並大抵の冒険者では対処が困難な相手ばかりよ。


 おそらくヘブロン王国の政府も、川が毒に汚染される原因を探ろうと調査を実施したとは思うんだけど、出現する魔物に手を焼いて先に進めなかったんでしょうね。


 そんな魔物に対して、さくらちゃんといえば……



「しばらく活躍の機会がなかったから、思いっきりぶっ飛ばすんだよぉぉ!」


 ワイルドウルフだろうが、オーガだろうが、片っ端から拳で殴り飛ばしていくわ。直後にいるアリシアでさえ、まったく出番がないわね。



「う、うちの娘が…… 狂暴すぎる!」


 嬉々として魔物を屠っていく姿に、お父さんがドン引きしているじゃないの! でも、久しぶりに思いっきり暴れて、さくらちゃんの表情が生き生きしているわ。



「さくらの動きが速すぎて、私に順番が回ってこない!」


 アリシアはアリシアで、手を出すと逆にさくらちゃんの邪魔をしてしまうから、その暴れっぷりを見ているしかないようね。時折、別方向から現れる魔物を槍の一突きで片付けているだけよ。


 さらに言えば、その後方でいつでも魔法の準備を整えている私になんか一切出番は来ないわ。反対側にいるカレンも、鎧姿で待ち構えているのに私同様手持無沙汰ね。


 

「ずいぶん魔力が濃くなってきたねぇ! そろそろ大物が登場する頃合いだよ!」


 さくらちゃんの勘が働いているようね。そのまま魔力の濃度が濃くなっていく方向を辿っていくと……



「これは、さすがのさくらちゃんも、お手上げなんだよ!」


 さくらちゃんすら白旗を掲げる存在なんて、本当に世の中にはあるものなのね。確かに、これを見ればさくらちゃんにも無理よね。


 私たちの目の前には、谷間を埋め尽くして無秩序に広がっている濃い紫色のゼリーのようなブヨブヨした物体が蠢いているのよ。



「こ、これはスライムなのか?」


 アリシアが目を見開いて指さしているわね。確かにその表面だけを見れば、スライムと言えるような気がしてくるわ。ただねぇ…… 規模がちょっとどうかと思うのよ。


 普通のスライムは大きくても50センチ程度で、地面を這って食料となる物を探しながら物陰を移動して回る、魔物かどうかも判然としない物体なの。それが、谷間を埋め尽くしてどこまで広がっているかもわからないとは……


 しかも種別としては、紫色をしている点からいってポイズンスライムよね。こんな物が谷間を埋め尽くしていたら、それだけでも毒が川に流れ込んでしまうでしょう。


 さて、どうしましょうか? ひとまずは魔法の効果があるか、試してみるのが先決ね。


 

「ヘルファイアー!」


 ひとまずお試しの魔法を放ってみるけど、確かに炎が着弾した部分だけは消え去ったわ。でもねぇ、おそらく10キロ四方以上に広がっている体の一部が焼けても、大した効果にはなっていないのよねぇ。


 明日香ちゃんに魔力を消してもらうのも、ちょっと難しいわね。相手は体内に毒をもっているから、明日香ちゃんが毒に触れないといけないのよ。さすがに危険だし、お勧めできないわ。


 あとは、私の〔暴蝕無葬惨〕で分解するか…… 分解? ちょっと待ってね! それならば、もっと確実な手段があったわね。



「聡史君! あなたの出番じゃないのかしら? 暴走魔力で分解できるでしょう」


「まあ、何とかなるだろう。美鈴たちは、もっと下がって結界に籠ってくれ」


「わかったわ」


 こうして私たちは、聡史君一人を残して後方に下がっていくわ。






 一人でその場に残った聡史は……


 やれやれ、大変な役割を美鈴から与えられてしまったな。俺がいる場所から谷間を埋めているスライムまでは、約1キロか。美鈴たちは、ここから3キロ以上後方に下がっているな。


 どれ、そろそろ始めようか。



「リミッター解除!」


 俺の背後に、膨大な魔力で形作られたスタンドが浮かび上がる。


 だが、ちょっと待てよ!


 スライムは、その魔力に惹かれるようにして、じわじわと俺がいる場所へと向かってきやがるじゃないか! あんなものに取り込まれるのは、勘弁してもらいたいな。


 

「魔力暴走開始!」


 スタンドの両腕に魔力を集中すると、魔力暴走開始の合図の真っ白な光が出現する。



「喰らってみやがれぇぇぇ!」


 スタンドを操って、その両腕をこちらに進んで来ようとするスライムに叩き付ける。



「・・・・・・」


 スライムは、声にならない声を上げて大きく体をのたうち回らせる。だが、分解作用に曝されながらも、その前進は一向に止む気配がない。


 押し留めようとするスタンドの両腕と、スライムの巨大な体とのせめぎ合いが開始される。だが、徐々に俺が押し負けてくる気配が伝わってくる。もちろんスライムの体を暴走魔力が次々に分解しているのだが、巨大スライムは一向に臆することなく、原始的な本能で膨大な魔力に惹かれて突き進もうとするのだ。


 俺はさらに魔力を込めて、より大量の魔力を暴走させながら、スライムに送り込んでいく。だが、それでも徐々に巨体が前進を続ける。相手には知能がないから、ただただ魔力につられて進んでいるだけだ。


 だが、その巨体で前進する力が大きすぎるのだった。まるで、山脈を相手に戦っているような気分だ。圧力が半端ないぞ!


 すでに暴走した魔力を百億以上注ぎ込んでいるにも拘わらず、スライムの圧力はまったく減じない。


 いいだろう! それならば、2百億でも3百億でも欲しいだけくれてやる! 


 体中から汗が吹き出るくらいに、体内に湧き上がる魔力を次々に解放していく。まるで終わりのない果てしない戦いを続けているような、精神的に追い詰められた気分がしてくるぞ!


 だが、その時……



 俺の頭上高くを、真黒な翼を広げて飛び越えていく小さな影を捉えた。その影は、スライムの巨体をはるか上から見下ろす位置に静止すると、両手で暗黒を凝縮したような塊を投げ下ろす。



「暴蝕無葬惨!」


 遠くから、そんな声が聞こえた。


 これはありがたい! ルシファー様が、俺が苦戦する様子を見かねて、援軍に駆け付けてくれたようだ。上空から究極分解魔法を食らったスライムの圧力が、明らかに小さくなる手応えを感じるぞ!


 よし、お膳立ては整ったな! ここから一気に行くぞ!



「最終ロック解除ぉぉぉ!」


 スルトを倒した時でも、ここまではしなかった奥の手だ! 一気に数倍の魔力が俺の体から溢れ出る。魔力を全解放して叩き付けてやる!



 ズズーーン! 


 地鳴りのような重低音が地面を伝わる。


 急激な分解によって生じた熱がスライムの体内で行き場を失って、大規模な爆発を引き起こしているようだ。爆発によって飛び散ったスライムの破片は、上空からルシファーが魔法で片付けてくれるだろう。


 俺は、ひたすら本体を滅するのみ!


 こうして、さらに30分間、俺は前進するスライムを受け止めて、ルシファーは上空から分解魔法を放つ。目で見た感じでは、谷間を埋めていたスライムの体が半分ほどの高さになっている。だが、その奥行きがどこまであるのかは、未だに定かではないな。


 その時、上空に静止していたルシファーが、突然動き出す様子を俺の目は捉えた。いや、動くというよりも、一直線にスライム目掛けて頭から突っ込んでいく。しかも、右手には剣を握っているぞ! 


 一体何をするつもりなんだ?


 しばらくルシファーの姿が消えていたが、再び翼をはばたかせて上空に現れる。その左手には、紫色のバスケットボール大の何かを握っている。



「スサノオ殿! スライムのコアを取り出したぞ! コアがなければ、もうただの毒ゼリーだ! このまま毒を放置するのは不味いゆえ、すべて分解するぞ!」


 頼もしいルシファー様は、スライムの体内に飛び込んで、コアを抉り出してくれたのか! そのために剣を手にしていたんだな。


 コアを失ったスライムは、弾力を保てなくなって、ドロリとした形状に変化している。もうこれ以上動かないし、分裂や再生も不可能だが、ルシファーが言う通り、毒の成分がこの場に大量に横たわっている。こいつを排除しておかないと、そのまま川に流れ込んでしまうだろう。


 ということで、俺とルシファーは引き続きスライムの残骸の分解を続けていく。こうなったら、もうただの作業だな。ひたすら暴走魔力を込めながら、片付けていくだけだった。


 約1時間後には、俺の目で見える範囲にはスライムの残骸は残ってはいなかった。スタンドの視覚を通して眺めてみても、近辺には見当たらない。


 さらに遠くの場所は、ルシファーが上空から魔法で処理を済ませてくれたようだ。どうやら長い戦いも、ようやく終止符を打ったな。無事に終わって良かった!


 しばらく待っていると、ルシファーが俺の目の前に降り立ってくる。



「スサノオ殿! ずいぶんと手を煩わせたな」


「数は暴力だと聞いたことはあるが、量も暴力だな!」


「ふむ、それは言いえて妙なり! まさに、体積の怪物であった! 上空から見渡した範囲では、ざっと琵琶湖に相当する面積に広がっておった」


「び、琵琶湖かよ! いくら分解しても、中々減らないわけだな」


「ふむ、その通りであろう。おそらくは、あれは元を正せば極々普通のスライムであったのだろう。それが、たまたま魔力が噴き出す穴に取り付いて、その魔力を吸収しながら、あのような巨大な姿に成長していったのであろう。穴はすでに塞いだゆえ、二度とあのような怪物は出現しないと思う」


「そうあって欲しいな。さすがに二度とゴメンだ!」


「破壊神には非ざる気弱な意見であるな!」


「この世界に来て、触手だのスライムだのと、碌な目に遭っていないからな」


「然り、我もご免蒙りたいのが、本音である」


 こうして、川に流れ込む毒の根源は除去した。残るは、あの湖に溜まっているスライムの毒の処理だな。




 湖の毒の処理は、意外と簡単だったぞ。


 美鈴が空を飛んで、スライムのコアを放り込んでだけで完了した。ポイズンスライムのコアは、毒を強力に吸収する性質があるから、溜まっている水を浄化してくれる効果があるのだとか。


 あとは、時間が経過するのを待つしかないな。徐々に水はきれいになってくれるだろう。


 こうして俺たちは、川を汚染する原因を解決して、この国の中心である魔王城がある街へと向かうのだった。 

 



               【お知らせ】



 この小説の後書きで3話まで紹介しました、聡史とさくらの、現代日本ダンジョン探索版の小説を、本日の夕方にリリースします。どうか、よろしくお願いいたします!


 この小説で紹介した内容とは、キャラの設定や能力を大幅に変更しておりますので、全く別の小説として読んでいただければ幸いです。


 殊に、さくらのキャラがガラリと変わっておりますので、この小説のさくらファンの方は、どうかショックを受けないでください。



 タイトル等は、以下の通りです。



 タイトル…… 〔異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンに入りたい! えっ、18歳未満は禁止だって? だったらひとまずは、魔法学院に通おうか〕


 URL ……  https://book1.adouzi.eu.org/n4463gk/


 Nコード…… N4463GK


 このページの一番下の、〔作者マイページ〕をクリックしていただくと、すぐに出てきます!


ヘブロン王国の魔王城へと向かう一向、待っているのは…… この続きは、週末にお届けする予定です。どうぞお楽しみに!


評価とブックマークをいただきまして、ありがとうございました。感想をお寄せいただいた方、心から感謝しております。


皆様の応援をお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] スピンアウトばかり進んでこちら放置されてますが、このままエタるのでしょうか?
[一言] 続きが読みたいです。更新をよろしくお願い致します。
[一言] 追い付いた~
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