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199 修行の必要性

あと1話で、節目の200話を迎えます。

 中華大陸連合、北京の中南海にある、政府主席公邸では……



「劉主席…… いや、この場は別の呼び方に変えましょうか」


 主席公邸の応接室では、この館の主に対して、恭しい態度で一人の男が直立したままで報告をもたらしている。実は書類を持参したその男自体、無意識に体から発する魔力が桁外れであり、見る目がある人間からしたら、疑いようもなく帰還者であると断定できるであろう。それも、相当な力を秘めているに違いないと、一目で判断が可能なレベルで……



「構わぬ」


 対する劉主席は、そのような強大な力を持った帰還者に傅かれるのを、当然として受け止める態度で接している。果たして、両者の間にどのような関係があるのだろうか?



「それでは、我ら四聖の正当なる支配者、世の理を統べる聖帝たる劉建耀様、此度日本に送り出した雷帝が、日本軍の帰還者に討ち果たされた件を、謹んでご報告いたします」


「雷帝たる者が、手も足も出なかったか」


 劉主席は、その凶報に眉一つ動かさぬままに、事務的な返答をしながら思案に浸っている態度を見せている。七竜よりも格上の帰還者を送りながら目的を果たせなかった事態を、まるであらかじめ予期していたかのような、ある意味では泰然とした態度ともいえよう。



「報告によりますと、泉州に姿を見せた獣神とは互角に戦ったようでございますが、その後に姿を現した破壊神と大魔王に赤子の手を捻られるが如くに……」


 中華大陸連合政府の中枢部が、日本で起きた帰還者同士の戦闘に関する情報を、どのように収集しているのかは不明であるが、未だに息がかかったスパイ組織が、日本国内の水面下で活動している可能性が大きいと考えるのが妥当ではないだろうか。それほどまでに、日中国交正常化以来数十年間にわたって、中華人民共和国と中華大陸連合が、日本国内に張り巡らせてきた地下ネットワークは、建固なものであった。



「そう気にせずともよい、炎帝よ。あの者は四聖の中でも最弱の存在ゆえに、さほどの期待は掛けておらなかった」


 劉主席は、手元にあるワインを一口含んで、不敵な笑みを浮かべながら炎帝へ諭すかのように語り掛ける。日米英連合軍にこれまで散々苦杯を喫しているにも拘らず、その表情や態度には余裕すら窺える。果たしてその心の内には、どのような打開策が秘められているのか、それは主席自身にしか窺い知れぬものであった。



「ですが、何ら成果を得られなかったのは、我ら四聖の名を辱める不名誉でございます」


「よいのだ。当面日本政府が、警戒を強めて慎重になれば、こちらの思惑通りである」


「と、申しますと?」


「日本政府は、細菌兵器に対する警戒を今後とも継続する必要がある。その分、外側に向けられる力が減少すれば、雷帝の働きも無駄ではなかったということだ」


 劉主席からすれば、日本に送り込んだ延海南は、単なる捨て駒であった。日本の帰還者の行動を制約して、当面自由に海外で活動できないようにしておけば、その分中華大陸連合のフリーハンドが広がる。その意味では、今回雷帝を送り込んで細菌兵器を散布するという軍事行動は、警戒心を振り撒くという意味において、ある程度の戦果があったともいえるのだ。



「左様なお考えを…… 聖帝様、延の名誉を認めていただき、感謝しております」


「死者に大きな名誉を与えても一向に構わぬ。雷帝は、もはや現世には関われなくなった哀れな者である。栄誉ある戦死者として弔ってやるのだ」


 非情なる絶対君主が、劉建耀であった。彼にとっては、最も身近に侍る四聖すらも、単なる戦争の手駒として用いる考えだ。当然、国民などはそれ以下の扱いしか受けない、最初からどうでもよい存在であろう。


 だが、炎帝はそんな劉建耀の態度に一向に不平を鳴らさない。骨の髄まで従う忠誠を誓っているかのようだ。



「それでは、当面日本を釘付けにしておいて、いよいよ沿海州を手に入れるおつもりでしょうか?」


「そうだ。本格的に軍を動かす。すでに派遣している3名の帰還者に加えて、氷帝を送り込め」


「彼の地は、いまだに凍るような気温が続いております。氷帝の活躍の場としては、誠に相応しく存じます」


「陸海空軍に関しては、参謀本部に一任しておけばよい。炎帝、そなたは氷帝と連絡を密にしながら、時折状況を報告せよ」


「畏まりました」


 こうして中華大陸連合は、雪解けのこの時期を狙っていたかのように、本格的な軍事行動を開始するのだった。


 


 





 劉主席の指令が下った1週間後、中露国境に接する東北部では……


 黒竜江省牡丹江市郊外にある中華大陸連合空軍基地には、対空ミサイルを搭載した制空戦闘機と、対地ミサイルを搭載した攻撃機がその雄姿を競っている。とはいっても、中華大陸連合が保有する機体は、大半がマルチロール機で、装備するミサイルの種類で制空戦闘を主任務とする部隊と、敵地を爆撃する攻撃部隊とに区分されている。ただし、その機体は最新鋭のステルス機J-20といえども、改修予定が大幅に遅た結果として、戦力としてはやや型落ちとなっている感が否めない。


 日本のように広大な海域を守る制空戦闘専用の機体を保有している国家が珍しいのであって、中華大陸連合やロシアのような陸生国家は、このような多目的に使用できる航空機を、空軍で多数保有しているのが通常の姿といえる。


 居並ぶ戦闘機と攻撃機は、発進の合図を受けて次々と滑走路を離陸していく。目標は国境の先にあるロシア軍航空基地とミサイル基地であった。翼下に複数のミサイルを抱えたJ-20、Su-35が甲高い金属音を響かせて離陸する。機体の最後部からはアフターバーナーが炎の尾を引いていく様子は、部外者が見れば、中々勇敢な姿に映る。


 だが海南島防衛の目的で、当該基地の航空戦力の半分を引き抜いた挙句に、その大半を失ってしまった現実は、中華大陸連合参謀本部にとっては相当な痛手であった。敵基地を叩く航空戦力の数的優位を失ってしまい、迎え撃つロシア航空軍と数の上ではほぼ互角となってしまっている。その結果として何が起きるかというと、航空機が最後の一機になるまでミサイルを撃ち合う、泥沼の消耗戦に引き込まれる可能性が、非常に高かった。


 しかも、ロシアの対空ミサイルはかなり性能が高く、昨秋の航空戦でも中華大陸連合は相当数の被害を出していた。その穴埋めがなされるアテもなく、こうして今回もまた、損耗覚悟で出撃していくパイロットの身にすれば、勘弁してくれ! という泣き言の一つも口にしたい心境であろう。だが、そのような軍上層部に対する批判や苦情を一言でも述べようものなら、貴重なパイロットといえども容赦なく収容所に連行されるので、誰しもが危険と知りつつも上層部の判断に従うしかなかった。






 一方、ロシア軍アルセーニコフ陸軍基地では……



「中華大陸連合牡丹江基地から航空機発進多数! 国境沿いに布陣している陸軍勢力からは、多数の短距離ミサイル発射の模様!」


「迎撃態勢を整えよ! 対空ミサイル発射準備にかかれ!」


 レーダーで中華大陸連合の動きを察知したロシア軍の動きが、慌ただしくなる。地対空ミサイルを満載した発射車両が横並びに整列して、発射の担当者は食い入るようにレーダー画面を見つめる。


 

「敵航空機、対空ミサイル射程に接近! ロックオン完了!」


「発射!」


 炎の帯を引きながら加速する地対空ミサイルは、数秒で音速を超えて甲高い金属音を奏でながら彼方へ飛翔していく。マッハ3を超える死をもたらす衝動が、中華大陸連合航空機に向かって大空を切り裂くのだった。



「敵の短距離ミサイル接近!」


「対空機関砲、迎撃開始!」


 オレンジ色に輝く曳光弾に隠れて、分速750発の12ミリ弾が猛烈な勢いで機関砲から吐き出される。見渡す空には、次々に炎の花が咲き乱れて、急接近する短距離ミサイルが撃ち落されていくが、中にはその弾丸の雨を掻い潜ったミサイルが、基地の内部に着弾し始める。



 ズドドーン! ズズーーン!



「第3倉庫被弾!」


「消火に努めよ! 負傷者の救援急げ!」


「保管している弾薬に誘爆の危険があります!」


「やむを得ないな。付近の兵士は退避しろ!」


 こうして、長い冬の間中断していた沿海州を巡る血で血を洗う戦いが、中露の間で再開するのだった。  







 その頃、東富士演習場では……



「司令官ちゃん! 早く必殺技を教えてよ!」


「司令! 妹の頼みなのに、なぜ俺まで巻き込まれるんですか?」


 俺と妹は、朝一番に司令からの呼び出しで、ワゴン車に乗せられて東富士までやってきている。一体俺まで連れ出して、何をさせるつもりなんだろうか?



「さくら軍曹長、そう焦るんじゃない! 物事には順番というものがあるんだ。それから、楢崎中尉、これから私が見せる技は、お前にも関係があると睨んでいる。文句を言うのは、全て終わってからにしろ!」


 俺と関係があるって? 何をするのか見当がつかないな。


 それにしても、司令は演習着姿で表情が生き生きしているぞ。普段は制服姿で事務仕事をしている時間が長くてしかめっ面なんだけど、演習着に着替えて外に立っていると、心の底から楽しそうにしているな。きっと今頃仕事を押し付けられた副官が、涙目になって文書の束と格闘しているんだろう。副官、こんなブラックな上司を持ったあなたに同情するとともに、そのご苦労に対して心から敬服いたします!



「さて、さくら軍曹長…… 面倒だから軍曹でいいな」


「なんでもいいから、早く教えてよ!」


 これ、妹よ! そんなに目をキラキラさせてねだるんじゃない! おやつを目の前にした子犬みたいじゃないか! 元から己が強くなることに対して貪欲な性格なのはわかっているが、確かお前は昨日の今頃『スランプ』と口にしていなかったか? あの出来事は、もうすっかり過去のものになっているんだな。



「さて、まずは500メートル先に、戦車砲の的があるな。的に向かって、各自が拳で何でもいいから撃ち込んでみるんだ!」


「司令官ちゃん! さくらちゃんの衝撃波の射程は、精々50メートルだから、あんな先まで届かないよ!」


「いいからやってみろ!」


 妹は、わけがわからない表情で右の拳を突き出す。


 キーーン…… 


 もちろん、的には何の変化も無かった。妹の拳から勢いよく飛び出した衝撃波は、空気の壁の抵抗によって、数十メートル先で消え去っていく。



「次は、楢崎中尉の番だぞ!」


「いいんですか? 地形が変わるかもしれないですよ?」


「そのためにわざわざ東富士まで来たんだろうが! 遠慮なくやってみろ!」


「はあ……」


 俺が拳を振るうと、手の周辺に纏わり付いていた魔力が、千切れるようにして一緒に飛んでいく。魔力は重力の影響も空気抵抗の干渉も受けないから、目標に真っ直ぐ飛んだ後にぶつかった場所で圧縮されて、甚大な破壊を引き起こす。俺の軽い拳の一撃でさえも、飛び出していく魔力の量は二百万から三百万、これはうちの部隊の勇者が保有している全魔力に匹敵する。これだけの魔力が圧縮されてから爆発するんだから、鉄筋コンクリートのビルが、簡単に吹き飛んでしまうんだ。


 これをもっと機械的に精密に再現しているのが、魔力砲や魔力バズーカに当たる。その原理は、適量の魔力を砲内で暴走寸前まで圧縮して、対象にぶつかった圧力で暴走を引き起こす、恐ろしいばかりの鬼畜性能となっている。だが、本当に恐ろしいのは、このような鬼畜性能の術式を組み上げた大魔王と大賢者の二人であろう。だからこそ、あれほどの極限の威力が出せるんだよな。


 俺自身が拳から撃ち出しただけでは魔力の暴走までは至らないから、この場で富士山が消えてなくなる心配はないだろうけど…… さて、やれと言われたからには、1発デモンストレーションでやってみようか。


 右の拳を構えて前方に放つ!


 ドドドドドーーーーン!


 敢えて音速を超えないように飛ばしたから、無色透明な魔力の塊が音も立てずに飛んでいって、土を固めた的を盛大に破壊している。土煙は、30メートルの高さまで上がっているな。



「楢崎中尉、相変わらず馬鹿げた威力だな」


「はあ、これしか取り柄がないものですから」


「確かにその通りだな。もう少し魔力の制御を身に着けたら、別の使い途があるだろうに」


 うん、俺もそう思うぞ! 司令の言うとおりだ。でもなぁ…… 生身でタンカーでも入りきれないくらいの魔力を抱えていれば、制御が覚束なくなるのは当然だって! 普通の人間がこれだけの魔力に曝されたら、それだけで命を落としかねないんだぞ。



「さて、さくら軍曹! 今行った両者の違いが分かるか?」


「兄ちゃんは魔力を飛ばしていたんだね!」


「そうだ。そして、さくら軍曹は、拳で空気を押しているだけで、何も飛ばしてはいなかった」


「その点はさくらちゃんもわかってはいるんだよ! 何度も練習したんだけど、魔力を飛ばすのが、できなかったんだよ!」


 そうなんだよなぁ…… 妹は、体内の魔力を意識的に外に出すことができないんだ。むしろ、溜め込んでいる体内の魔力を攻撃力に変換して、小柄な体からは信じられないほどの拳の威力を発揮しているんだ。



「さくら軍曹、魔力の扱い方は、人それぞれに特徴があるから、できないものは無理する必要はない。それでは、私も一つやってみようか。一度しかやらないから、よく見ておくんだぞ!」


「おお! 司令官ちゃんの技が楽しみだよ!」


 またまた妹が、期待に満ちた子犬のような目になっているよ。それにしても、司令がどのような技術を見せてくれるか、俺としても楽しみだな。



「いくぞ!」


 司令は、ほんの短い時間精神を集中する素振りを見せて、斜に構えた姿勢から手の平を前方に突き出していく。



 ドッパーーーン!


 司令が狙ったのは、俺が破壊した隣にある的だった。威力は俺と同等か、やや上回っている。さすがは、負けず嫌いの性格だな。



「司令官ちゃん! これは、かめ〇め波だね!」


「漫画と一緒にするんじゃない! 私が撃ち出したのは体内の気ではなくて、闘気だ!」


「闘気? なんだそりゃ?」


 妹は頭の上に???を浮かべているが、俺はベルガーから聞いているぞ。以前、司令は身勝手にドイツに赴いて、行きがかり上ベルガーたちをバンパイアから救った際に、闘気を撃ち出して敵を輪切りにしたそうだ。


 それにしても、見事な技だな。闘気を飛ばして、あれほどの威力で的を破壊するとは、破壊神も脱帽せざるを得ない。でも、一口に『闘気』と言っても、その実態が掴みにくいな。



「司令! 闘気と言われても、漠然としすぎて、よくわかりません」


「司令官ちゃん! 気とは違うのかな? さくらちゃんは、気なら扱えるんだよ!」


 俺と妹が同時に質問をぶつけた。それにしても妹は、『気を扱える』と言っているが、いつの間にそんな技を習得していたんだ?



「お前たちは実戦ばかりが先行して、自らの技を高める機会がなかなか与えられていないんだな。もっとも現在は戦時下にあるから、悠長に修行などやってる暇はないのが実情か。その点に関しては、部隊の責任者として申し訳なく思っている」


「司令、俺の場合は訓練する時間ではなくて、場所がないんです。異世界とは違って日本には、俺が気兼ねなく魔力をぶっ放せる荒野とか草原が、存在しませんから」


「司令官ちゃん! さくらちゃんは、修行が大好きなんだよ! でもこのところ、親衛隊や新入りの訓練に時間を取られていたのは、反省材料だね!」


 確かに部隊の任務で忙しかったのもあるが、俺の場合は迂闊に能力を発揮できない点が、最大の悩みどころなんだ。この東富士演習場でも手狭で、そうそう全開で力は出せない。こうなったら、1か月くらい誰もいない砂漠とかに行くしかないかな。



「まあ、そうだろうな。帰還者などというものは、現代社会ではかなり大きな制約を受けざるを得ないからな。さて、話は逸れたが、闘気の件だったな。二人とも、魔力がどのようなものか、当然理解しているな」


「俺の体に、有り余るほど存在していますから」


「さくらちゃんも、しっかりわかっているんだよ!」


 日頃から戦闘時において、最もお世話になっているのが魔力だからな。この点に関しては、おバカな妹も、間違いなく理解しているだろう。



「それでは、気とは何かわかるか? さくら軍曹」


「うーん、体をグルグル回っているのは感じるんだけど、正体は何だろうね?」


 妹には、気の正確な実態がわかっていないようだな。もちろん、俺にもわからん!



「よく覚えておくんだ! 気というのは生命力そのものだ。生命活動を源として体内で生み出される力こそが、気と呼ばれている」


「生命力なんですか!」


「そうだったんだね! さくらちゃんも何となくは感じていたんだよ! 何しろご飯をいっぱい食べると、気が上昇するからね!」


「それは単に血液の循環が早くなっているだけだろうが!」


 毎食毎食、あれだけドカ食いしていれば、消化のために血液もマックスで循環するだろう! 心臓は大忙しのてんてこ舞いなはずだ。



「兄ちゃんは、本当にはわかっていないなぁ! お腹が減っていると、気も弱くなるんだよ!」


「腹減って、スタミナと集中力がなくなっているだけだ!」


 妹の感性が独特すぎて、理解が追い付かない。どれだけ食事に依存している生活を送っているんだ! 3食しっかり摂るのは大事だが、お前の場合は食事のためだけに人生が成り立っているんだぞ!



「まあ、気の定義など人それぞれに解釈があるから、この際どうでもいい。さて、ここまで話をして、闘気とは何か気が付いたか?」


「戦いに関係がありそうな気がします」


「そうだね! 兄ちゃんがいいことを言うんだよ!」


 コラッ! 司令の前で、その上から目線はやめるんだ!



「二人とも、なんとなくは掴んでいるようだな。よく聞くんだぞ! 闘気とは……」


「「闘気とは……」」


 司令があまりに真剣な表情なので、俺と妹は同時にゴクリとつばを飲み込んだ。



「闘気とは…… 戦う意志だ! 意志の力は、大きくも小さくもできる! 強大な意思は、物理的な力に変換可能だ!」


「意思の力……」


 そうか、俺の心の中に、司令の言葉がすんなりと入ってきた。自らの意思は、その思いによって自在に変動が可能だ。戦って勝利するという意思そのものが、ある種の武器にもなるし、負ける不安を抱けば、それは弱点にもなる。


 そして、その意思を磨き抜けば、司令のように闘気として外部に放出することも、可能となってくるんだな。



「ここまで話をして、楢崎中尉をこの場に呼んだ理由を明かそうか。お前は無意識に、魔力と闘気を同時に放っている!」


「ええぇぇぇ! 俺が闘気を放っているんですか?!」


「そうでなければ、魔力バズーカの威力が、設計時に想定された3倍になっている説明がつかない」


「確かに、そうでした……」


 自分で全く気が付いていなかったな。俺が無意識に闘気と魔力を同時に放っているか…… もしかしたら、破壊神の隠れスキルとか、そんな類のものかもしれない。



「したがって、楢崎中尉が、闘気のコントロールを身に着ければ、その異常に威力が高い攻撃が、ある程度加減できるかもしれない」


「おっしゃる通りで、ぐうの音も出ません」


 これこそが、司令が俺まで呼び出した理由に他ならないだろう。自分でも持て余している攻撃の威力が、少しでも調整できれば俺としては万々歳だ! やはり年長者の意見には、素直に耳を傾けるべきだろう。それにしても、司令って何歳なんだ?



「楢崎中尉! 今、私に関して、何か失礼な考えを抱かなかったか?」


「滅相もありません! 司令は大変お若いであります!」


「ほほう、この場で死にたいようだな」


 しまったぁぁぁぁぁ! 完全に墓穴を掘りまくったぁぁぁ! 人の心の中まで見通すとは、この人はなんて勘が鋭いんだ!



「司令官ちゃん! 兄ちゃんなんてどうでもいいんだよ! それよりも、早く私に闘気の使い方を教えてよ! 戦う意思なら、このさくらちゃんには、無限にあるからね!」


「そうか、無限か…… まあ、いいだろう。では本格的に修行を開始するとしよう」


 こうして、全く予想もできない流れから、俺と妹は、司令から闘気の使い方について、具体的な指導を受ける羽目になった。この件が、まさかあのような悲劇を招くとは、この時点では思いもよらなかった……



司令官との修行の行方は…… この続きは、週末に投稿します。どうぞお楽しみに!


さて、世間では武漢肺炎による自粛が解除されるかに注目が集まっておりますが、今週、作者を震撼させる事件が発生しました。


イスラエルで、新たに赴任した中国の大使が、自宅で急死したというニュースです。この大使がイスラエルに赴任したのは、3月という話ですから、まだ就任したばかりですね。


死因は正確な発表がなされていないので現時点では不明ですが、病死という内容だけが伝わってきています。


本当に病死でいいんですよね。イスラエルさん、大丈夫ですよね。病死だったことにしておくんですよね! モサドがちょいと、自宅に侵入して…… そんなことはしてないですよね。きっと! うん、病死でいいんじゃないかな。


何らかのメッセージがあるとかないとか、この際横に置いておきましょうか。病死にしておけば、各方面丸く収まるし……


それにしても、凄い国です、イスラエル! 小説よりも怖いわ!

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― 新着の感想 ―
[一言] どこも暗部は怖い。 でもロシアが一番ひどい
[良い点] 司令官の登場。ただなかなかデレないのが不満ですね。破壊神のお兄ちゃんにデレている姿を見たいものです。ギャップで一番のヒロイン役を掻っ攫ってくれる筈。 [一言] ロシアのKGBとイスラエルの…
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