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1章 28話『テアとの王都散策』

 少し寝てしまったから、眠気が覚めたので暗い部屋で椅子に座ってぼんやり過ごす。1階のベッドではニルスが寝ており、視界に納めないよう努めた。

 そうして睡魔が訪れるのを待っていると、次第にまぶたが重くなる。再び梯子を登ってベッドに入る頃には、疲れていたのかテアは隣で熟睡していた。


 ていうかよく考えてみたら、ニルスと僕が寝る位置って逆じゃないのか。自称姉とはいえ何で当然のように、少女が自分の横で普通に寝ているんだよ。

 まあ別に僕は女として見てないから良いが、コイツら親子の貞操観念はどうなってるんだ。そう思いながら横になった体はまどろみの中に落ちていく。



「遠征に行ってる最中、ずっと考えてた『グングニル』って名前が格好良くてがいいと思うんだけど」


「いや絶対に『紅蓮』の方がいい。『グングニル』は名前が長いし、技名を唱えてる途中で舌を噛む」


「『紅蓮』と2文字しか変わらないじゃん。あとお父さん、リースの技に炎要素はなんて無いんだよ」


「男の子なら誰だって炎に憧れるからいいんだよ」


 アホ親子の下から響く声がうるさくて、まだ寝ていたいのに意識が覚醒してしまった。眠い目をこすりながら、起床すると日は既に高くに登っていた。

 もう昼を過ぎているじゃないか、時間を無駄にしてしまった。そう思って急いで1階に降りると、2人は謎の議論を中断して自分に視線を向けてきた。


「『グングニル』の方がいいよね?」


「『紅蓮』の方がいいよな?」


 奇しくもその声は重なっていたが、全く持って訳が分からなかった。話の内容が分からないので答えにきゅうしていると、ニルスがこちらの心情を察した。


「今、お前が習得した魔剣の名前を考えてたんだ」


「そういえば、そんなのもあったな」


 魔剣は普通の剣術から大きく外れた異常な技で、僕の『切り下ろし』がそれに近いと聞いた。様々な要素が重なりあって、偶然身に付けられた産物だ。


「名前とか要らないし『切り下ろし』でいいだろ」


「それじゃ普通の切り下ろしと区別がつかないからダメ。だから『グングニル』って名前を付けよう」


「いやテア、炎要素が入った『紅蓮』の方がいい」


「なんなんだお前ら。どっちも普通に嫌だからな」


 そう言ってやるとアホ親子は頭を抱えて、「それじゃあ」と次の名前を考え始める。こんな無意味な事に時間を使うなんて、本当に馬鹿らしい連中だ。


「おい下らない事は止めてさっさと練習に行くぞ」


「王都の街に行くから、練習は明日からにしよう」


「はぁ!? どういうつもりだ、このクソ女が!」


 数週間も人の事を待たせておいて、何を言ってるんだコイツは。もう1日足りとも時間を無駄にしたくないのに、明日からにするなんて舐めてるのか。


「ふざけるなよ、練習するのは絶対に今日からだ」


「もう遠征も行かないし、これからはリースの指導だけに集中するから。だから1日だけ時間を頂戴」


「テア、ギルドのパーティーを抜けてきたのか?」


 ニルスが少し驚いた顔でそう尋ねて、テアは「うん」と首肯く。僕は暴言を吐こうとしたけれど、昨日の事を思い出すと気が引けて何も言えなかった。


 頭を冷やして考えると、自分の主張は相手の都合を無視していた。それに彼女にとっての遠征とは、もしかしたら大切な物だったのではないだろうか。

 真偽は不明だが冒険者ギルドのパーティーには、友達が居ると言っていたのも覚えている。それを復讐に付き合わせる為に、僕が辞めさせてしまった。


「前言撤回する。僕の事は気にせず街に行けよ」


「リースも一緒に来て。食べ物買ってあげるから」


 マルタが出ていった時みたいにどこかモヤモヤとする。何でまた羽虫に振り回されないといけないんだと思ったが、これが最後だと割り切る事にした。


「分かった、僕も着いていって行ってやるよ。あと貧乏人の癖して、食べ物を買おうとしなくていい」


「じゃあ外で待ってるから支度してきてね! お父さん、話は途中になっちゃったけど行ってきます」


「おう、行ってらっしゃい。続きは後でしような」


 その声色は何故か嬉しそうで、テアはそのまま小屋から出ていった。にしてもアイツは普段より、身なりを整えていたけど何をしに行くつもりなんだ。


「多分これはデートだ。楽しんでこいよリース!」


「どこの世界に姉とデートする奴がいるんだ……」


「でもテアの方はなにやら朝早くから準備をしていて、お前が起きてくるのもずっと待っていたぞ?」


「だから、どうしたんだよ」


 アイツは僕の事を弟として見ているし、こっちも女としては見ていない。そんな頭の悪い話を続けるよりも、ニルスには1つだけ言いたい事があった。


「――彼女の事はお前がどうにかしろよ、ニルス」


「分かってる。お前がマルタの気持ちを自分なりに一生懸命、汲み取ったのもな。本当は仲直りをして欲しいんだが、リースにそのつもりはないのか?」


「出来る訳がない。僕は何も悪くないから謝らないし、お前に任せるのも後味が悪いからってだけだ」


 それに僕はもう羽虫の事なんか2度と気に止めてやらない。今日はテアに付き合ってやるが、明日からは憎たらしいエーリカ達への復讐だけを考える。


「そうか。でもリースは人の気持ちを考えられるよう成長しているし、望めばマルタとだって簡――」


「じゃあ、その無意味な成長は今日で打ち止めだ」


「すまん。今のは余計なお世話だったな」


「よく分かってるな。そのままずっと黙っていろ」


 いつも押し付けがましいニルスが、素直に引き下がるなんて珍しいな。そう考えながら支度を始めると、彼は僕が見てないと思ったのか顔を曇らせた。


「俺はお前になにができるんだろうな……」


 ニルスは何か呟いたが、僕にはよく聞こえなかった。テーブルの上に置いてあった比較的汚れてない服に着替えて、攻撃力20のダガーを懐に仕舞う。


「髪でも整えてやろうか」


「なんでテアとちょっと街に行くだけなのに、着飾らないといけないんだよ! ふざけてるのかお前」


「同じ屋根の下で暮らしていて有り難みを忘れてるのかも知れないが、美少女とのデートなんだぞ!」


「あっそ、ムカつくからお前はもう一言も喋るな」


 本来の見た目ならともかく、入れ替わったこの容姿じゃ髪型を整えても滑稽なだけだ。この精神を病んだような暗い少年の姿は、普通に気持ちが悪い。

 まあ顔は整っているが、自分がそんな姿だと思うと憂鬱になるので考えるのを止めた。そうして色々と支度を終えて、外に出ようとすると声がかかる。


「リース。それじゃあ、気をつけて行ってこい!」


 いつも通りに無視して出ていくと、テアは小屋の外壁に寄りかかっていた。彼女はこっちを見るとクスリと笑って、そのまま軽い足取りで歩き出した。


「お前に付き合うのは今日だけで次はないからな」


「分かってるって。行こう、リース」


 誰かに前を歩かれるのは不愉快なので、僕は彼女の背中を追い越してやった。どこに行くのかは知らないが、街に続くまでの道だったら記憶している。


「後ろを歩きたがらないのは相変わらずなんだね」


「羽虫の後に続くなんて屈辱、受け入れられるか」


 後ろでクスクスと笑ってるのはムカつくけど、暴言を吐くのは勘弁してやろう。この時間はテアが、1日だけでいいからと言って望んだ物なのだから。


「なんか楽しそうだな、この自称姉……」


 ていうか別に1日なんて縛りを設けなくても、コイツの時間なんだから勝手にすればいい。僕の為とか思って、自分を犠牲にしてるなら有り難迷惑だ。

 

「なあ、遠征を辞めたのって撤回は出来ないのか? 僕の事は後回しでも許すから時間は自由に使えよ」


「もしかして私に気を使ってくれてるの?」


「違う。さっきの発言を無かった事にする最後のチャンスを、可哀想だから恵んでやっているだけだ」


「さっきの発言って、リースの指導だけに集中するって言った事だよね? それは好きでやろうとしてるから、別に時間とか気にしなくてもいいんだよ」


「遠征はいいのか?」


「いいの。私だって色々考えた上で決めてるから」


 前を歩いているせいでテアの表情は見えなかったが、その声からはマイナスな感情は伝わってこなかった。なら別にいい、遠慮なく使い潰してやろう。


「後悔したって、僕は知らないからな」


「大丈夫だよ。にしてもあのリースが私に気を使えるようになるなんて、少し成長したんじゃない?」


「ニルスにも同じ事を言われたけど、僕は何も変わっていない。あと何度でも言うが気も使ってない」


「そういえばリース、お父さんを名前で呼んでるよね。もしかして私が居ない間に仲良くなれたの?」


「おい、話を勝手に変えるな!」


 そうして下らない話をしている内に、スラムを抜けて王都の街にたどり着いた。だがここで出来る事なんて、前に大失敗した残飯探しくらいしかない。


「テア、聞いて無かったが何をするつもりなんだ」


「ウィンドウショッピング。それならお金も使わなくていいし、2人で回ったら結構楽しいと思うよ」


「は? 用事がある訳とかじゃないのかよ。しかもするのが店を冷やかして回るって惨め過ぎるだろ」


「冷やかじゃなくてウィンドウショッピングね?」


 こんな事をする為に怒りを向けても、時間が欲しいと言って折れなかったのか。そう考えていると、テアに手首を掴まれてまた馬みたいに歩かされる。


「それじゃあ、最初は防具屋とか行ってみようか」


「おい、僕の腕は手綱じゃないんだぞ!」


 そうは言ったけれど、腕力のステータスが負けているので振り払えない。それに何故か鼓動が速くなって、抵抗しようという気は自然と薄れていった。


「ねぇ、リース! 先にここの靴屋の商品を見ていきたくなった! 別にこっちが先でもいいよね?」


 何が楽しいのか知らないが、テアは笑顔を向けてきた。その姿を見ていると更に強い負荷が心臓にかかって、原因不明の痛みに困惑するばかりだった。


「もう、お前の好きにしろよ」


 それから靴屋に始まり道具屋や、防御力220の鎧が飾ってある防具屋に入った。彼女は買わないのに色々物色し、たまにこちらに意見を求めてくる。

 吊るし売りの服屋に入った時は、僕に似合う服ばかり探していた。そうして今度は武器屋に入ると、1番最初にダガーが壁に掛かった一角を見に行く。


「リース、この攻撃力90もあるダガーなんて良くない? 値段は金貨10枚もしてかなり高いけど」


「お前、さっきから僕の奴ばかり選んでないか?」


「私のを選ぶなら1人でも出来るし。それよりこの中でリースが自分で使うとしたら、どれがいい?」


 確かにそうだと納得すると、僕はテアに言われた通りにダガーに目を通す。貧乏くさい遊びだけど、彼女を見ている内に楽しみ方が少し分かってきた。


「そうだな……」


 要するに陳列された商品を持っている自分を想像して、違和感がないかを考えればいい。欲しいのは当然、攻撃力が1番高いのだがこれは妄想の話だ。

 性能は抜きにして細かい造形や刃渡りから、僕にしっくりくる物を見定める。だがどれを見ても、自分が使うには貧相な物ばかりで興味が消え失せた。


「冒険者ギルドから借りたゴミみたいなダガーよりマシだが、この店には僕に見合う物は置いてない」


「じゃあ、これとかはどうかな?」


 そう言うとテアは数あるダガーの中から1つを指差した。確かに貧相ではあるが、よく見れば僕が気に入りそうなポイントをしっかりと押さえている。


「お前、僕の好みを把握しているとか気色悪いぞ」


「え、好みなんだ。いやリースがどんなのが好きかも考えてたけど、半分は私の趣味で選んだんだよ」


 じゃあそれはコイツと趣味が合うって事で、余計気色が悪いじゃないか。そう考えると遊びに集中している間、何ともなかった心臓の鼓動が早くなる。


「へー、リースもこういうが好きなんだ。攻撃力は40で、値段は金貨1枚と銀貨6枚。結構高いね」


「ああ、それだけの金があれば3ヶ月はマトモな食事が出来る。で、次はお前の片手剣でも見るのか」


「それは別にいいや。リースはまだ何か見たい?」


「いや。それなら疲れてきたから、少し休ませろ」


「うん、分かった。それじゃあ広場で休憩しよう」


 外に出ると、意識してなかったがずっと手首を掴まれていた事に気付く。いい加減離させようと腕を振ろうとするが、それより先に彼女は歩き出した。


「見て! あそこにミートパイの屋台があるよ!」


「疲れてきたって言ったばかりだろ。それに食べ物の冷やかしなんかしても、腹が減るだけだろうが」


「それはちゃんと買うし、休憩しながら食べよう」


 僕は屋台まで引きずられて行くと、香ばしい匂いが食欲を刺激する。店主は厳ついおっさんで、台の上には手の平くらいの大きさのパイが並んでいる。

 彼は訝しげな表情でこちらを見るが、テアが革の巾着袋を出すと顔色を変えた。その変わり身の早さはいっそ清々しく、怒鳴り付けてやる気も失せた。


「いらっしゃい、お嬢ちゃん。そこのボーイフレンドの分も合わせて、2つくらい買っていくかい?」


「おい、僕は――」


「彼氏とかじゃなくて弟ですよ。あ、ミートパイの方はそうだな……えっと、2個でお願いします」


 その言葉を聞いて、ただでさえ調子のおかしい心臓に刺されるような痛みを覚えた。もしかしてリースの体は、何か病気を抱えているのかも知れない。


「というかテア、僕の分は買わないでいいからな」


「弟くん、うちのパイは美味しいと大好評で――」


「お前には喋っていないから、黙っていろ下郎!」


 店主は小さな声で「薄汚いガキが」と呟き、不機嫌そうな顔をして押し黙る。その顔面を殴り付けてやりたかったが、衛兵が巡回してるので我慢した。


「リース、本当に要らないの?」


「要らない。僕はあのゴミ共のせいでここまで落ちぶれたけど、貧乏人に金を払って貰う程じゃない」


「そうなの? じゃあ1つに変更でお願いします」


 テアは20枚で銅貨1枚の価値を持つ鉄貨を7枚払うと、黙ったままミートパイを手渡された。それから、また彼女に手を引かれ広場までの道を歩く。


「恥ずかしいから、知らない人にイキらないでよ」


「おい、僕はイキってないからな。あといい加減に手を離せよ。手首をいつまで掴んでいるつもりだ」


「あっ、本当だ。ごめん、全然気付いてなかった」


 やっと手首を解放されたので、僕はテア追い越して前に進んだ。彼女から距離を取ると動悸は少し落ち着いて、この病が何なのか益々訳が分からなる。


「取り敢えず、あそこに座ろう」


 彼女は僕の一歩前に出ると、円形の広場の中央にある噴水の縁を指差した。そうして人の往来をかき分けて、目的地に座るとテアも隣に腰を下ろした。


 本当はリースが過去に、この病気について何か喋ってないか聞こうと思った。だがテアの視点から見れば、僕は自分の話を第三者に尋ねてる事になる。

 面倒になりそうだし、よく考えると彼女らに病気を知ってる様子はない。という事はリースは何も喋ってないか、発病したのが入れ替わった後なのだ。


「どうしたの急に難しい顔なんてして。考え事?」


「ああ、僕はお前なんかと違って思慮深いんだよ」


 まあ心臓の痛みで今のところ行動に支障は出てないので、放って置いても問題ないだろう。そう考えていると、テアがパイを持ってるせいで腹が鳴る。


「なんだ、リースが難しい顔で考えてるのって食べ物の事じゃん。ふふ、私と違って思慮深いんだね」


「おい違う、腹が鳴ったのは偶然だ!」


「パイ食べたいんでしょ。いいよ別にあげるから」


 テアは手の平サイズのパイを半分に割って、片方を差し出してきた。だがさっき言った通り、貧乏人に金を払わせた上に物を恵んで貰うなんて御免ごめんだ。


「要らないって言っただろ。話、聞いてたのかよ」


「意地なんか張らなくてもいいのに。じゃあ私1人だと半分しか食べれないから、もう半分は捨てる」


「嘘吐くな。お前最初は2つ買おうとしてただろ」


「あの時はリースが1個と半分を食べる予定だったの。はい、これはもう捨てたから好きしていいよ」


 そう詭弁を弄すると、テアはパイの片方を不意に押し付けてきた。そうなると勿体ないので投げ捨てる訳にもいかず、手に持っていると食べたくなる。


「リース、お父さんに貰った食料は食べるよね?」


「それは残飯だからいいんだよ!」


「そのパイも私が捨てたんだから残飯と同じだよ」


 何故かは不明だが、僕に食べさせる為の詭弁を弄してるのは分かってる。だが美味しそうなパイが手の中にあるので、テアの言葉に納得しそうだった。

 というか彼女の言ってる事は正しい、それ以上は何も考えずにパイを食べる。彼女はその姿を見て、ニヤニヤしながら自分のパイに初めて口をつけた。


「勘違いするなよ! 残飯だから食べてるんだ!」


「チョロいな」


「何か言ったか?」


「ふふ、別になんでもない。それより色々店を見て回ったけど、リースは何か欲しい物とかあった?」


 テアと並んでミートパイをモグモグ食べながら、今日見た物を思い浮かべてみる。その中でも印象に残っているのは、やはり最後に見たダガーだった。


「あれ、テアさんじゃないか!」


 それを伝えようとすると、容姿の整った男がテアの名前を呼んでいた。彼女はパッと笑顔を浮かべ、食べかけのパイを僕に渡すと向こうに歩いていく。


「トビアスくん、こんにちは」


「あれ、もしかしてデートの邪魔をしちゃった?」


「デートとかじゃないから! あの子はただの弟で、今日はたまたま街に買い物しに来ただけだよ」


 2人で会話したいのか、テアはトビアスと話ながら噴水から離れていく。その様子を遠くから見ていると、彼女は僕の見たことのない表情をしていた。

 あの男は容姿が良くて、対する僕はリースの見た目と入れ替わったままだ。何故か彼との比較が頭に浮かび、心臓は押し潰されそうな程に痛みを増す。


「なんなんだコレ、本当に訳が分からない……」


「ごめん! 知り合いと合った」


 テアは直ぐに戻ってきたが、気分が悪いのでスラム街の小屋に帰りたくなった。それに既に何時間も歩き回ったのだから、彼女も十分満足しただろう。


「テア、もう帰るぞ。」


「え、急にどうしたの?」


 渡されていたパイを返すと、テアの返事を待たずに僕はスラム街の方角へと歩き出す。それでもまだ心臓は痛くて、激しい動悸が収まる事はなかった。

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