02 囲めば取れるって言うけどさー
川-ω-)p『なあ蛍、陣取りうんぬんの理屈はわかったけど、大切なことを教えてもらってないぞ。
ξ・з・)ξ『なによ?
川-ω-)p『石の取り方。囲めば取れるんだろ?
ξ・з・)ξ『囲めば取れるけど、囲もうとしても取れないから、止めた方がいいわ。
川-ω-)p『またわけわからんことを。
ξ・з・)ξ『でしょ? 初心者が最初にふるい落とされるのは、ここだと思うわ。
川-ω-)p『振り落とされないように、その豊かな胸にしがみついておくっ!(後ろからがしっと抱き着き―
ξ〃д〃)ξ『――ちょっ!!
ξ・з・)ξ『囲碁のルールで一番最初に覚えることって、「囲った石は取れるよ」ってことだと思うんだけどさー。
川-ω-)p『うん、私もそうだった。
ξ・з・)ξ『実際に囲碁を打ってる時に、「石を囲もう(取ろう)」とすることはほとんどないわ。
川-ω-)p『え?
ξ・з・)ξ『最初に石を囲むことを教えられるから、皆さんとりあえず囲もうとするんだけどー、
川-ω-)p『そうだね。
ξ・з・)ξ『実際には、普通にやってたら相手の石は囲めないわ。将棋で駒を取るのとは全然違うの。初心者の挫折ポイントそのいちね。
川-ω-)p『よくわかんないな。石を取ると有利になるんじゃないの? なら、取りに行った方がいいじゃん。
ξ・з・)ξ『よく聞きなさい。相手の石を取りに行こうとした瞬間、自分の石に防御力-100のデバフがかかるシステムになってるの。しかもそれは裏データで、初心者には一切知らされない情報よ。
川・д・)p『はあ? なにそれ!?
ξ・з・)ξ『だから初心者同士の対局だと、たいてい先に攻撃を仕掛けたほうがつぶれていくわね。しかも本人たちは、つぶれる原因に気付くことがない。囲碁の恐ろしい罠よ。
川-ω-)p『”星を見る人”並のゲームバランスじゃん。速攻クソゲー認定されるな。
ξ・з・)ξ『まず覚えておいて欲しいのが、「石は取れない」ってことね。はい、復唱!
川-ω-)p『いしはとれない!
ξ・з・)ξ『次に、”取る”と”殺す”は違うわ。どっちも最終的には”取る”なんだけどね。将棋で言うと、飛車を取るのと王様を詰ませるのくらい違うわ。
川-ω-)p『もう少しわかりやすく。
ξ・з・)ξ『焼き芋とスイートポテトくらい違う。
川-з-)p『どっちもうまいじゃん。
ξ・з・)ξ『図で説明しましょーか。まずは普通に”取る”。本当に基本ルールだけど、回りをすべて囲まれて閉じ込められた石は、盤の上から取り除かれるわ。他のゲームで言うとハサミ将棋が一番近いかしら。
ξ・з・)ξ『これ↑、黒が打って白が取られた場面の図よ。ああ、囲むのはタテとヨコだけだからね。ナナメは関係ないわ。
川-ω-)p『つまり、十字の線が伸びてる方向をつぶすんだな。ここまではわかるぞ。
ξ・з・)ξ『次に、殺すって場面ね。↓の図、白はすべて取られてるわ。死んでるとも言うの。
川-ω-)p『……取られてないじゃん。この白って、盤の上に残ったままなの?
ξ・з・)ξ『そうね、対局終了までこのまま放置よ。場合にもよるけど、普通はわざわざ囲って取ることはしないわ。死体が残されているわけね。
川-ω-)p『なにそれ怖い。
ξ・з・)ξ『たまにゾンビみたいに生き返ったりするわ。
川゜д゜)p『怖っ!! なんでちゃんと取らないのさ?
ξ・з・)ξ『うーん、あんた、ゲームしてたわよね。石化した敵にわざわざとどめ刺すの?
川-ω-)p『――あ。
ξ・з・)ξ『取るにしたって、何ターンもかかるからね。石化した敵を殴るひまがあれば、まだ動いている敵から対応するのが普通でしょ。
川-ω-)p『なるほど、そんなもんか。
川-ω-)p『でも肝心の、石が死んでるとか生きてるとかって、どうやって見分けてるんだ?
ξ・з・)ξ『オセロって、角の石は無敵でしょ? 囲碁も同じ。ある条件を満たした石は、取られることはないの。”生きる”とも言うわ。その条件が満たされているかどうかで見分けているのよ。
川-ω-)p『じゃあ”殺す”っていうのは?
ξ・з・)ξ『言葉のイメージとは少し違うかもしれないけど、「相手が生きるための条件を邪魔すること」ね。生きていないってことは、死んでるってことなのよ。
川-ω-)p『石が殺せないだって? 逆に考えるんだ。生きなければいいさって考えるんだ。
ξ・з・)ξ『あら、良いこと言うじゃない。それは囲碁の真理のひとつよ。
川-ω-)p『マジで? 私、プロになれるかな。
ξ・з・)ξ『がんばりなさい。あんた寿命ないんだから、100年やればどのプロにだって勝てるわよ。……不戦勝で。
川-ω-)p『プロと言えばさ、あいつらなんかあちこちバラバラに打ってるじゃん。さっきの説明みたいに石を取ったりとか生きる邪魔したりとかには見えなかったけど、何を考えながら打ってるの?
ξ・з・)ξ『そんなもんよ。あんただって宇宙人とかモンスターと戦ってたとき、隠れて魔法唱えたりとか、ムダにステップ踏んだりしてたじゃん。
川-ω-)p『えー、ムダじゃないしー。バフだしー。
ξ・з・)ξ『横で見てて、早く切りかかれやボケって感じなんですけどー。
川-ω-)p『だって、準備せずに攻撃しても反撃されるだけだからさ。溜めたり相手の呼吸を外したりとかしてるんだよう。
ξ・з・)ξ『うん、囲碁もそれと一緒よ。間合いを測りながら、隙を探してるの。今かかったら反撃されるから、こっちに打って準備しておこう。相手も相手で、こう返してくるだろうから前もってここに置いておいて、さらにそれを読まれたときのためにこっちにも打ってー、とかね。
川-ω-)p『……めんどくさいんだな、囲碁って。
ξ・з・)ξ『別にすぐに切りかかってもかまわないのよ。打ち方は自由だから。ただ、そこまで考えて打てるような人を、初心者とは言わないわ。
川-ω-)p『そりゃそーだ。
ξ・з・)ξ『強い人のマネをするのは良いことだと思うけど、考え過ぎないでね。そのうち自然と理由も感じられるようになってくるわ。
川-ω-)p『うん、そうする。ありがとー、蛍。
ξ・з・)ξ『どーいたしまして。




