柴犬さまなのにお父さん
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「父倒れる」
つい先日の事だ。
父が倒れたらしい。
「父が倒れたってっ!?」
「そうなのよ何時もの奴で」
「ああ~~いつもの」
「そ」
向かい側の母の声に僕はため息をつく。
溜息をつきながら僕は母の作ったご飯を食べる。
自宅で。
「う……」
油がギトギト。
不味い。
本当に不味い。
今日のご飯は天ぷらだ。
玉葱と人参のかき揚げ。
魚のフライ。
全てが生焼け。
しかも油でギトギト。
天ぷらだけではない。
母の料理は全体的に不味い。
塩辛く生臭みが酷く不味い。
うま味すらない。
だけど腹が減るので我慢して食べてる。
そのうち病気になりそうだな。
「尿管結石ね」
「いつものやつね」
それで倒れただけだ。
いつもの奴だ。
いつもの。
開腹手術すれば治る。
だが問題は開腹すると退院するまで時間がかかる。
だから投薬で治していた。
いつもの様に。
「でもね」
「うん?」
母の不穏な言い方に眉をひそめた。
「いつもの薬が効きにくいみたいなの」
「え?」
「なんででしようね~~」
この時の僕の脳裏に奇妙な警告音が響いた。
というより定期的に起きる尿道結石に疑問を抱いた。
確か開腹手術でないと治らないと言ってなかったか?
なのに何で投薬で治ってるんだ?
おかしい。
「ねえお母さん」
「何?」
「今の病院は個人病院? それとも国立か市立?」
「個人だけど」
「お父さんを今すぐ国立か市立に連れて行って」
「え?」
「良いから早くっ!」
「うん」
この後の事だ。
国立病院に連れて行かれた父は検査の結果大変な事が分かった。
尿管結石の結石は長い間放置されて尿管に癒着していた。
今まで尿管結石が投薬で治ったと思ってたのは違ってたらしい。
痛み止めで一時的に痛みが引いてただけだったとの事。
個人病院が痛み止めの薬で尿管結石が治ったと嘘をついてたとの事。
理由は父を定期的な収入源とみなし嘘をついてたとか。
個人病院が。
その結果父は腎臓の片方が機能を停止したらしい。
片方の腎臓を失った父は以前の健康な体を維持出来なくなり仕事を辞めた。
「まあ~~個人病院から慰謝料貰えたのは不幸中の幸いだね」
「そうね」
「そして父が専業主夫になったのも不幸中の幸いだね」
母よ滅を逸らすね。
「一年で母より御飯が美味しく出来るようになった父に何かいう事は?」
だから目を逸らすな。
尿管結石が出来た元凶が目を逸らすな。
【しいなここみの告知】
実話を元にされてらっしゃるそうです。
柴犬さま、誤字報告くだされば適用しますよ(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾




