第三十五話 日輪の陰り
「今更、どうやって顔を合わせたら良いンだよ……」
消え入りそうな言葉は、誰にも届くことはなかった。
公園のベンチに座るツムギは、夏の夜風に吹かる。仲間達の元へは戻れず、かと言って家に籠ってる気にもなれない。
誰に話せない出来ない胸の内を、星の下で吐き捨てるだけだった。
「過去にばっか捕らわれて、挙句にこんなウジウジしてるヤツ……そりゃあ、アスハとリリィに比べたらカスも同然だな」
特別彼が未熟な訳ではない。
異世界で正義と信念を貫いたその魂は気高い。異世界から帰還しても損なわないその生き方が矮小などあり得ない。
だが彼が受け入れるには、比較する友があまりにも高潔であった。高潔過ぎた。
共に過ごす度、アスハとリリの気高く実直な精神性が彼を焦がした。ツムギの炎を霞めるほど、二人もまた眩しかったのだ。
「あいつらはきっと、オレを許す。謝罪もすんなりと受け入れて、また三人でやり直そうって言ってくれる」
だからこそツムギは、彼らの心を理解できてしまう。
自分が目指した英雄として在り方と、友の背中が全く同じものだから。
そして一層、己の未熟さを痛感すると分かっている。
「――そうさせちまう。あの二人はそういう人間だ。こんなクズでも、認めて救おうとしてくれる人間なんだ」
理解が深まるほど、ツムギは劣等感に苛まれる。
「そうなっちまったらもう、オレは友達に戻れない。この思いを抱えたまま、みみっちい想いをずっと繰り返して……」
ツムギの理解者は彼らしかいない。
だからこそ二人に追いつけなくなるという恐怖は、少年を孤独の底に突き落とすのだ。
揺れる瞳から涙が溢れ、地面を濡らす。
「友達に戻りてェなァ……あいつらと一緒に居て、胸張ってダチって言える自分で、いたかった」
その嘆きを聞く者はまだいない。夜の静けさは彼のすすり泣く声も無情に包み込んでしまう。
辺りに散らばった無数の武器も、どこか歪んでいるものばかり。使いどころのないナマクラが散乱している。
その夜が明けるまでには、まだ時間があった。




