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対面 2

「先生、優しい・・・」

「え?」

「ははは、家庭教師のイリアは怖かったのかな?」

「ちょっとあなた!」


先生のイメージが今と昔で一致しない、聞きたくてつい言ってしまう

ホランドさんが笑いながら言ったことにボクは頷いた。


「ふふ、公爵家の家庭教師ともなると流石に緊張していましたからね、でもエリザベスさんにも教えていたのを覚えていますか? メリハリや切り替えをしっかりするなら、と」

「あ、えと、じゃあ」

「ええ、あの時の私は『家庭教師』、今日の私はマロンさんの『家族』として来ています、家族が優しいのは当然でしょう?」


家族・・・


「ボクの家族?」

「ええ」

「そうだね、みんな家族だ」


2人とも優しい顔をしてた

ボクは正直家族というものが分からない、唯一エリーは胸を張って家族と言える。

公爵(パパさん)は微妙、公爵夫人(ママさん)はエリーのママさんだし、クロスケとタチアナは友達、アランは好きだけど家族と言われると分からない。



マロンの怪訝そうな様子を見た伯爵夫妻は互いに目を合わせ頷いた。

2人はマロンの前にしゃがむとそれぞれ手を取った。


「マロンさん今すぐとは言わないわ」

「書類上は伯爵家の家族になるけど、それだけだ、これから一緒に暮らして本当の家族になれたら私達は嬉しいよ」

「本当の家族・・・」

「そうよ仲良くなりたいの、ダメかしら?」


家族になる、っていうのはイマイチ想像出来なかったけど

仲良くなりたいのはボクもそう思う。

先生のことを全然知らなかったし、最近だとアランがボクと会わないようにしてるみたいだけど何でなのか分からない、知ってるつもりじゃダメなんだ。


「うん、ボクも仲良くなりたい」


そう言うと先生はホッとした顔になってボクを優しく抱きしめた。

柔らかい胸に抱き込まれたのは久しぶりだ、エリーと一緒に寝て抱き締められた以来、そんな事を思い出して少し泣きそうになった・・・




その後、侯爵夫人が部屋に来て養子縁組の書類にサインと血判を押した。

使い捨ての清潔な針で指先を刺し、名前の横にギュッと押し付ける。

今日からボクの名前は()()()()()()()()()()()、愛称にマロンを残してあげようと、先生とホランドさんが一緒に考えてくれた名前だ。

「エリザベスさんのくれた名前だものね」

と、やっぱり先生はとても優しかった。





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