デート 7
「あーん」
「・・・」もくもく
露天の多い通りは、道の端にベンチも沢山設置されていた
から揚げとサイコロステーキ、近くに果実水を売りにしているカフェもあったのでそこから果実水を買ってベンチに腰を落ちつけた。
竹串でから揚げをアランに食べさせる、ボクもパクっと食べた、うん美味しい。
「美味しいね」
「そう、だな、なあマロン」
「んー? はい」
「んむ」もくもく
サイコロステーキをアランに食べさせてあげる
なんかちょっと楽しい。
「・・・マロン」
「はーい、あーん」
「いや、肉を要求してる訳じゃなくて・・・」
「え?」
「何故、・・・・・・・・・あーんをする?」
「だってデートだとそうするんでしょ? タチアナが言ってたし、エリーとレオンもよくやってたよね」
昨日の夜、タチアナに呼ばれてデートの作法について色々と教えて貰った。
服の支払いはアランに任せていい
その代わり食事は隣り合わせに座って食べさせてあげる
歩く時は必ず寄り添って歩くとか。
「・・・アレは、婚約者で恋人同士だから俺達は違うだろう?」
「? 恋人って好きな男の人と女の人のこと言うんでしょ? ボクはアランのこと好きだけど、アランは嫌い?」
「いや、嫌いでは、決してない」
「じゃあ好き?」
「そ、そうだな、好き、になるな」
「ボクも好きだよアラン」
アランの言いたいことはそういうことではない
仲のいい男女が出掛ける=デート、好き=恋人
と断じるには、人との距離感は複雑すぎて説明し難かった。
言い聞かせるにしても今の精神年齢ではイマイチ理解されるとも思えない、とアランは棚上げしてマロンにされるがまま食事をとった、真っ直ぐで純粋なマロンの瞳に照れながら。
「さて、何処か行きたい所はあるか?」
「んとね、アッチの広場のさあかすって言うの見てみたい」
レナと外に来た時、火を吹いたり、棒を何本もクルクルと放り投げてたりしていた集団が居たのを見た。
周りには沢山の人が集まって拍手したり、驚いたりしていて気になっていた。
「サーカスか、確かにこの時期は毎年来るな」
「毎年?」
「ああ彼らは芸を披露して収入を得る集団なんだ、国中を旅していて今の時期は此処に来るんだよ」
「へえー」
アランにギュッと掴まって広場まで来るとやっぱり前みたいに人がいっぱい居て、歓声と拍手が起こっていた。
ボウッ!と口から火を吹く人
「アラン、アレってどうやってるの!?」
「多分、油かアルコール度数の高い酒を口に含んで吐き出しているんだ、手元に種火が有るだろう?」
「おおー!お酒飲まないで吐き出すの勿体なくない?」
ボクはお酒は飲んだ事ないけど、好きな人は毎日飲むほど美味しいらしいからね
「ふ、そうだな、勿体ないな」
「おいおい、ひょっとこさんよー!このお嬢ちゃんがお酒勿体ないって言ってるぜ」
隣に居たおじさんが大きな声で言うと、周りの人も続いた
「ワハハ!確かに勿体ねえよなあ、俺なら飲んでるわ!」
するとひょっとこさんが無言で指をチッチッチッと動かしてニヤリと笑い、液体を口に含み
ゴクリ・・・
飲んだ?
「いやいや飲んでどうすんだよ、火を吹け!仕事中に飲酒かぁ?」
「俺にも飲ませろー!」
「やだフラフラしてるー、酔っ払ったの?」
ドっと笑いが起こって盛り上がる
「ははは、こうして芸を見せたりおどけて見せたりして笑顔を売るんだ」
「楽しそうだね」
「ああ、そうだな」
見世物を見て回るマロンとアラン
外に殆ど出た事の無いマロンは初見
アランも意外とゆっくり過ごしてこういった催し物等を眺めることはなかったので新鮮な気持ちで手を繋いで歩いた。
そんな2人を見つめる、男性2人組が近付いていた・・・




