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詮索と捜索

マーゴットの視線を受けてマロンについた店員サリー


現在メイベル侯爵家で行儀見習いとして奉公しているキュレオス男爵令嬢がお連れになった新人という話ですが、聞き覚えのない名前に私は疑問を覚えた。


名門メイベル侯爵家

行儀見習いも相応の身分が求められるので、恐らく貴族だと思われるのだけど彼女は家名を名乗らなかった。


そしてメイベル家の使用人制服を身に付けているものの、頭には規定外のヘッドドレス、スカート裾にはレースが施されている、つまり特別扱いをされているのは明白。


なんともチグハグな印象を受けるのだけど

挨拶をした時の所作はとても美しかった

だからこそキュレオス男爵令嬢を引き離し、どのような人物なのか探るべく私が接客するようマーゴット様は視線を寄越したのでしょう。


さて、見定めさせていただきますよマロン様?


一挙手一投足を見逃さないとサリーはマロンを観察し始めた。



「サリー?」

「はい、どうなさいました?」

「このお店って、化粧品を売っているの?」

「はい、化粧品や宝飾品、ドレスといった女性の身の回りのものを取り揃えております、店頭に来るのは初めてですか?」

「うん、初めて」


ほうほう、初めて・・・

つまり基本は屋敷に商人を呼んでいたと?

いえ、早合点でしたね、慎重に判断を下さねば・・・








商会でマロンの誤解が進み始めた時と同時刻、外には2人の男性が居た。

片手に姿絵を持ち、通行人を捕まえては確認を行って人を探している。


「・・・そうですか、ありがとうございます」


この広い王都で1人の人間を探すのは骨が折れる

探している対象が公爵家に侵入した賊ならば、身を隠して行動しているだろうし、既に王都から逃げている可能性もあるのだ。

アンドレアスとエイブラハム、マスティーゼ公爵家の警備であの日の夜マロンと対峙した2人が捜索していた。


「なあ、公爵家に侵入した人間が呑気に王都に居ると思うか?」

「言うな、旦那様が探せと言った以上、我らは探すしかないんだよ」

「いやー、その物言いだとアンドレアスこそ分かってるじゃんよ」

「・・・良いから続けるぞエイブラハム」

「へいへい、丁度すぐそこにあるワーナード商会なら何か知ってるんじゃねえ?」

「そうだな、ワーナード程の規模ならもしかしたら・・・」

「おし!行こうぜ、公爵家の私兵だけで王都内の捜索は無理だぜ」

「言うな・・・、ある程度時間が経てば奥様が取り成してくれるさ」

「旦那様もエリザベス様に関しては視野がえらい狭くなるもんな」

「言うなって・・・」


げんなりしながらも真面目に仕事をしようと心掛けるアンドレアス、対してエイブラハムは最初から諦め気味である。

潜伏する人間を探し出すなど、騎士団のように大規模に逃げ道を潰しながらやるべき事だ

私兵数十人程度ではマークし終わった場所の維持をしながら他の場所を探すのも無理があった、見つかる気がしない・・・


「じゃ、俺行くわ、ほい」

「ああ、頼むぞ」


腰に携えていた剣をアンドレアスに渡すエイブラハム

流石に貴族が商う商会に剣を持ち込むことは出来ない

やる気がほぼないエイブラハムは聞き込みついでに彼女に贈るプレゼントでも買おうと、賊の姿絵を手にワーナード商会へと入店した。






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