仲良し
「こいつぁ・・・」
「うーわ、すっげえー」
庭師と孫マイクは驚いた
どうせやらずに去るだろうと無理難題を任せた雑草抜きが相当量捗っていたのだ。
侯爵家の庭園は広く、1人で終わらせる作業量では決して無い
その為に複数の庭師と雑用も雇われている
そんな庭園の雑草抜きをマロンは黙々と行った
体力に優れるマロンは素直な気質も相まって、地道な作業を苦もなく続けていた。
「むっしむっし、みっみず、だんごむし~」
調子の外れた歌を呟きながら、庭師とマイクに気付くことも無くぷちぷちと雑草を抜くマロン
今朝見た真っ白な手は土で汚れ、それを気にした様子もない。
「マロンさん!」
「ん?」
「何してんのさ!」
「何って、草むしり?」
声を掛けられたマロンはそこで初めて気付いた。
「いやいや!確かにじっちゃんが言ったけどさ、ここまでしなくて良いんだよ」
「そうなの?」
「そうなの!こういうのは適当にやって、それっぽく見えたら誰も何も言わないのに!」
「でも、白ひげのおじいちゃんに言われたし」
「いや言ったけどさ・・・、って、ほらじっちゃん!ボケっとしてないでマロンさんになんか言うことあるだろ!」
マイクは責めるように言った
それはそうだ、見掛けで判断して無茶を言った
仕事をさせないのならば最初から「任せるものは何も無い」と言って追い返せば良かったのだ。
手落ちは完全に庭師であった・・・
「・・・・・・・・・・・・」
「じ っ ち ゃ ん !!」
「あー、そのマロン?」
「?」
「悪かっ・・・、いや、良くやった、助かる・・・」
ばつが悪そうに謝る庭師、が・・・
「悪い事したと思ったらごめんなさいだろ! ばあちゃんに言うからな!」
「うっ、・・・すまない」
「ごめんなさい!」
「・・・ごめんなさい」
「?、うん」
孫(10歳)に怒られる庭師、なんか分からないけど頷くマロンであった。
庭師も反省して午後からはしっかり仕事を教えるつもりだったがそれは叶わなかった
手を洗って使用人用の食堂へ行くと
マロンを見付けたとある侍女が一緒に食べましょうと誘いに来たのだが
日に焼けて赤くなったマロンを見てギャー!と叫び
その叫びに釣られて他の侍女も集まった。
更には洗ったものの、荒れた手と爪の中に残った土を見て複数の侍女がギャー!と発狂
午後からの庭仕事は侍女らの怒りによって中止になったのだ。
姫様の美しい肌になんて事をという主張の元、庭師はこってり絞られた
今朝もそもそもマロン様に土いじりなんてと渋々送り出した侍女らは、せいぜい花の切り方を教えて屋敷に飾らせるくらいだろうと思っていたらしい。
「あーあ、だからいいのかなぁって言ったのに」
俺しーらね、と食事を確保したマイクは隅で小さくなって昼食を食べていた。
最初の「ギャー!」で、やべえっ!と祖父を生け贄に離脱していたのだった。
マロンに関する事は全て夫人の耳に届いていたが
「あらあら、みんな楽しそうね」
と笑っていたとか・・・




