庭師と
「じっちゃん!今日は俺らのとこだってさ」
マロンは行儀見習いという立場に置かれた
侯爵夫人の采配により週毎に色々な仕事をやらせる
初週はマロンをなんだかんだと世話を焼く侍女に任せて屋敷に慣れさせる。
今週は庭師、次は料理人、護衛、とあらゆる経験をさせ
人との、人としての関わり合いを学ばせる目的だ。
「ふん、手を汚すのも嫌う様な娘っ子を寄越して何をしろと言うんじゃ」
「マロン、です、宜しく、お願いです」
「娘、余計な事はせずにそこらの雑草でも抜いてろ、これとこれが雑草じゃ、他には触るなよ」
「はーい」
今日は庭師の人の元で働く
ボクと同じくらいの歳のマイクくんの案内で庭園に来ると
白髪で真っ白な髭がもじゃもじゃのお爺さんが指示をして居なくなった。
「じっちゃん良いのかよ雑草抜きなんてさせて、あの子お客じゃないの?」
「客に何をやらせろと言うのか、どうせ草の1本も抜かずに他所へ行くに決まってる!マイクも手を動かせ」
「はーい! いいのかなぁ・・・、俺知らないよ・・・?」
庭師は苦い顔をして自分の仕事を始めた
奥様からの指示で色々と体験させてやって欲しいと聞いていたが、日焼けも知らない肌を持った娘を寄越されても何も出来ない。
土を弄らせてもミミズが虫がと騒ぎ立てるだけだし、脚立の上に立たせる訳にもいかない
雑草抜きを任せたがあんな綺麗な手では土も草も触れたことない箱入りだろう、とっとと他所へ行くさ。
庭師はそう決めつけて仕事に没頭した
「・・・っちゃん!じっちゃん!」
「あ?」
「あ?じゃないよ、もう昼だからメシにしようぜ」
「おお、もうそんな時間か」
孫に呼ばれて顔をあげる庭師
言われてみると陽がてっぺんを差していた
「うおー、イテテ」
トントンと腰を叩いて立ち上がる、意識すると腹の具合も空腹を訴えていた。
「そう言えばあの子はどうしてるかな」
「あー? とっくに居ないだろ」
「一応確認しておかないと、各部署はマロンさんを責任をもって預かるようにって言われてるじゃん」
「チッ、奥様も奥様だ、使えねえ娘っ子をそれぞれの領域に置くなんて、侍女共に任せりゃいいのによ」
愚痴愚痴渋々と庭師はマロンを放置した区画の方へと向かった
客なのか行儀見習いなのかは知らないが
あっちこっちにチョロチョロと動かされて自分の仕事を邪魔されては堪らないと思っていた。
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置いてかれちゃった。
そう言えば公爵家の庭師ガッドも最初似た態度だったなー
「庭を荒らすなよ・・・」って睨まれたのを憶えている
モグラをいっぱい捕まえたら、よくやったってグリグリとボクを撫でてくれたっけ
あ、でも泥で汚れたボクを見たエリーがギャーってなって、泥だらけのボクを抱えたエリーを見たエマリーもギャーってなってた、懐かしいなぁ・・・
えと、草むしりって確か根も抜かないと意味無いんだよね
ガッドが言ってた。
土を払って、まとめて置いておこうかな。
スカートの裾を地面に着かないように気を付けてしゃがみ、マロンは素直に草むしりを始めた。
普通の行儀見習いや侍女であれば
令嬢なので「こんなのやってられませんわ」と最初から手を付ける事も無かったが、マロンは働く気満々なので言われた通りに仕事を始めた。




