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狩り

「だから、マロンちゃんは明日からウチで働くことになったから」

「・・・え?」

「日中も色々と話したけど、マロンちゃんは頭も良いし能力も十分に持ってる、足りないのは全面的に経験のみよ、特に人間関係に関してね」


働けば屋敷の使用人とも沢山接することになる

基本好意的な侍女が多いが、気難しい者も居るし、人によっては合わない者も居るだろう

良い事も悪い事も、何でも経験する事はマロンにとって糧になる、そんな夫人の提案であった。


アランもその考えには納得した

そうしてマロンが人して侍女としての経験を積む事で、公爵家に戻ってもやって行けると


「成程、そうする事でマロンが公爵家に、ひいてはエリザベス様の傍に居られる理由にも面目が立つ」


アランの答えに満足したように夫人はニコリと笑顔で応えた。


「アランはさり気なくフォローしてあげて、丁度休みだし気心知れた人が傍に居るだけでも安心する筈、環境も変わって不安だろうしね」

「分かりました」


元々マロンを放置するつもりは無い、アランは頷いた。



——————————————————————————



「上手くいくでしょうか」


アランも出ていった部屋で、侍女メイリースは口を開いた


「ふふ、大丈夫、きっと上手くいくわ」

「勝算がおありで?」

「勿論よ」


夫人はマロンを侍女にするつもりはない、そんな勿体ない事は出来ない。

学はある、性格も良い、足りないのは経験そして地位だ

経験はこれから積ませる、地位もどうにかするべく根回しを既に始めている。

王家に「神獣」としての記述があったというのは朗報だ

動物が人になり王族に嫁いだという前例がある以上、貴族にする事はなんら問題はない。



「アラン様の伴侶になれますでしょうか」

「私としてはマロンちゃんよりはアランの方が心配だったけどね、まあ大丈夫でしょう」

「マロン様よりアラン様ですか?」


普通は逆ではないのだろうか

生粋の貴族アランと現状は平民のマロン

どちらが見劣りするかと聞かれれば誰でも平民のマロンを挙げるだろう、メイリースは思った。

しかし夫人はそう思わないようで、


「あの子何でも出来るでしょう? 器用に剣も筆も扱える」

「はい」

「しっかり者だから令嬢も似たタイプをと思っていたの」

「そうですね」

「今、あの子に婚約者を決めるとしたら誰か分かる?」

「?」


話の着地点が見えない

流れからして現状婚約者の居ない令嬢でしっかり者

歳頃という条件で絞ると


「サークス侯爵家のフィーリア嬢辺りでしょうか?」

「ええ当たり、実際サークス侯爵家からも縁談の申し入れは来ているわ」

「奥様はフィーリア嬢よりマロン様の方に価値を見出していると」

「別に政略結婚を否定する訳じゃないのよ? サークス家と縁を結ぶのも互いにそれなりの利益はあるのだし」

「・・・先程のやり取りですとマロン様を侍女として公爵家に戻すと思われるのでは」

「あら? 私はウチで働くとしか言ってないわよ、アランが勝手に納得しただけで私は「はい」とも「いいえ」とも言ってないのだし」


確かに夫人は笑顔で応えたのであって、マロンを侍女にする、侍女にして公爵家に送り出す、とは言っていなかった。

夫人はシレッと言うが、当然わざとである。


メイリースは呆れた


「あまりやり過ぎるとアラン様に嫌われますよ・・・」

「ふふ、いいじゃない、それより見た? 避けようとしたのに掴まった時のアランの表情! 昨日マロンちゃんを連れて来てから気取った態度が崩れてるの気付いているのかしらねアラン」

「心底驚いていましたね」

「アランの懐に入るなんて凄いわ!」

「物理的にも、精神的にも既に懐へ入っているのでは?」

「メイリースも分かっているじゃない、別に二人を不幸にしてやろうって訳じゃないのだから、ついでに少しくらい楽しんでもバチは当たらないと思うわ」


ウキウキしている夫人を止める役目は恐らく自分だとメイリースは予感していた・・・





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